伊集院光vsダウ90000蓮見翔の「その後」ーー ネタとして昇華する若手と“手打ち後の擦り”にヘソを曲げるベテランの心理
ダウ90000・蓮見翔氏とのバトルをラジオ上で手打ちにしたものの、その後のネタとしての「擦り」に不満を覗かせる伊集院光氏。電波越しに綺麗にお笑いへ昇華する蓮見氏に対し、ヘソを曲げてしまう伊集院氏の複雑な心理とは何なのか。『オールスター感謝祭』での島崎和歌子氏への引っかかり、ラジオの「笑い屋」が生む違和感とスタッフ問題、そしてKOCで見せた「言い返してくるラーメンズ」としての蓮見氏の凄みまで――。自身も伊集院氏から「取材拒否」され続けているプロインタビュアーの吉田豪氏が、双方の背景と複雑な構造をフラットに解き明かす。
みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」
手打ち後の“場外戦”にヘソを曲げる伊集院光と、お笑いに昇華する蓮見翔
好評だったので先月に続いて伊集院光さんとダウ90000の蓮見翔さんの話をしてみたいんですけど、ボクみたいに「今回の騒動では2人ともキャラが発揮されて、どっちも良かった」って言ってる人は少数派みたいですね。ネットを観る限り「蓮見を見直した。伊集院は老害」的な感想の人がほとんどで、一部に「蓮見は不愉快」派がいるみたいなんですけど、それは騒動後の対応の違いが影響してる部分もあるんじゃないかと思います。
やっぱりラジオでの直接的な反論も含めて、平場の強さや地頭の良さを見せた蓮見さんが評価を上げたわけじゃないですか。ボク自身、あの件があってから蓮見さんのコンテンツをかなり摂取するようになったし、ラジオも聞くようになって実感しました。もちろん伊集院さんが蓮見さんに引っ掛かった部分もよくわかるし、紗倉まなさんと「俺たちなんで付き合ってると思われないんだろうねー」とキャッキャしてるラジオとか、こういうのを伊集院さんが偶然聞いたらルサンチマンが爆発するだろうなって。でも、その上で対応力が見事すぎる。テレビとかラジオで今回の件についていじられているのは大体チェックしましたけど、全部ちゃんと受け身を取って笑いに変えてました。蓮見さん、「平場は簡単」と公言しているだけのことはありますよね。
だから、どっちかというと気になるのは伊集院さん側なんですよ。蓮見さんがラジオで綺麗にアンサーを返して「これでこの話はおしまいにしましょう」って綺麗に着地させた時、伊集院さんとしては「わかった、お互いラジオでやり合うのはやめよう。そっちが呼んでくれるならラジオのゲストにも行くし、蓮見君は俺のリスナーだったみたいだから余計なことはもう言わない」って理解だったと思うんです。
ところが、その後も蓮見さんがいろんな場所で「腰が抜けるほどつまらない」ってフレーズをネタとして擦り続けていることに対して、伊集院さんがちょっとヘソを曲げちゃっているっぽいんですよね。「せっかく手打ちにしたのに、あいつはまだ擦り続けている。じゃあ俺も擦るよ」みたいに反発しているんですけど、そこは「そりゃあ蓮見さんは擦るでしょ」という話なんですよ。格好のネタができたんだし、周囲から振られたら乗っかるに決まっている。要は、蓮見さんとしては「不毛な言い争いはもうやめて、今回の件はちゃんと笑いに転がしましょう」って解釈だったはずが、お互いの認識にズレが出てきちゃってるんですよね。
『オールスター感謝祭』島崎和歌子への“指摘”に違和感
最近の伊集院さんのラジオを聴いていてちょっとびっくりしたのが、『オールスター感謝祭』での「名探偵津田」の演出に対する発言だったんです。
生放送のスタジオで銃声が響いてアシスタントの女性が倒れ、そこからゲストの一人だったダイアン津田さんが巻き込まれて『水曜日のダウンタウン』の「名探偵津田」のストーリーに突入していくという大掛かりな仕掛けがあったんですよね。その最中、今田耕司さんがアシスタントの女性を確認して「……死んでる」とか言う度に、MCの島崎和歌子さんが「死んでないですから!」「大丈夫ですから!」ってずっとフォローを入れていたんです。ゴールデンタイムの生放送番組ですから、テレビ的な茶番だと分かっていても「本当に事件が起きたのか」と本気で心配する視聴者が確実に存在するわけで、あの島崎さんの対応はプロとして番組を成立させる立ち回りだったんですよ。
ところが伊集院さんはラジオで、「島崎さんは名探偵津田を知らないから、野暮で空気の読めない割り込みをしてきた」ようなニュアンスの言い方をしていたんです。プロレスのアングルを真面目に信じ込んじゃうファンみたいな解釈で、それに驚いたんですよね。「名探偵津田」の文脈を知っている側からすれば邪魔に見えるのかもしれないけれど、ゴールデンの生放送で誰が観ているか分からない以上、あのフォローは絶対に言わなきゃいけない。伊集院さん自身、普段はテレビのコメンテーターとしてそういう構造を熟知しているはずなのに、大好きなコンテンツになると客観視できずなくなってしまう。今回の件で蓮見さんのプロレス的な受け身の巧さに感心したのと同時に、プロレス巧者だと思っていた伊集院さんが意外と“ガチな側”の人だったんじゃないかと思えてきたりして。