「これくらい普通」の我慢が一番損。月3万円の生活費から見抜くモラハラ・経済DVの境界線
「これくらい普通だから」と我慢を重ねてしまう——その思い込みが、自分の人生を大きく損なわせることがある。生活費をもらっていても、相手の機嫌に怯え、心が萎縮している状態は決して当たり前ではない。気づかぬうちに「支配」を受け入れ、限界まで精神的に追い詰められてしまうケースは少なくないという。
数多くの離婚相談を受けて岡野あつこ氏は、「養われていることと、支配されていることは全く別のこと」と警鐘を鳴らす。では、どこからがモラハラや経済DVにあたるのか。そして、行動を起こす際、なぜ「いきなり弁護士」は損をするのか。
今回は岡野氏に、見えにくい支配の実態と急増する熟年離婚の背景、そして損をしないための「正しい相談先の選び方」について話を伺った。全4回の第2回。
みんかぶマガジン連載「絶対に損はしたくない!泥沼離婚のマネー戦略」第2回
目次
殴られていなくても、心が萎縮していたらアウト
——モラハラという言葉はよく聞くようになりましたが、実際にはどんな言動がそれにあたるのでしょうか。
「『誰のおかげで生活できてると思ってるんだ』とか、無視、ため息、機嫌で支配する、妻の行動や交友関係を細かく制限する。これは全部モラハラです。殴られていなくても、心が萎縮している時点でアウトなんですよ。実家に帰るのにも文句を言う方もいますし、友人と外出しようとすると『帰ってくるな』まで言われたというケースもある。口汚い言葉を浴びせ続けることも、精神的な支配と同じです」
——「これくらい普通」と思っている方も多そうですね。
「本当に多いです。ずっと嫌だとは思っていたけれど、これくらいは我慢しなければと思ってきた方が多い。モラハラは気づきにくいんです。じわじわと積み上がっていくものだから。身体的な暴力がなくても、精神的に追い詰められていた、という状態はそれ自体がすでに問題です。首を絞められたというケースもあるのですが、そこまで至る前の段階でも、心はしっかりと傷ついています」
モラハラが厄介なのは、加害者本人も「これくらい大丈夫」と思っていることが多い点だ。岡野さんによれば、モラハラをする男性には、外では威張れないぶん家でコントロールしたいという心理が働いているケースが多いという。
「美容室に行くな」経済的DVと専業主婦の違い
——経済DVという言葉も最近よく聞くようになりました。専業主婦との違いはどこにあるのでしょうか?
「ポイントは、自由に使えるお金があるかどうかです。生活費を渡されていても、金額が極端に少ない、用途を細かくチェックされる、自分のために使えない場合は経済DVにあたります。月に3万円しか渡されないというケースもあれば、美容室に行くなと言われる、誰が稼いだお金だと思っているんだと用途を問いただされる、そういった状況もあります。自分のパートの収入で賄えと言われる方もいる」
——金額の目安はありますか?
「例えば1日3食、1日1000円としても、1ヶ月で3万円はかかります。それが到底足りないような金額しか渡されない場合、これはどう見ても経済DVです。養われていることと、支配されていることは全く別のことです。生活費をもらっていても、それが人間として最低限の生活もできないような金額であれば、それはもう支配の域に入っています」
経済DVは、外から見えにくい。周囲から「ご主人が働いてくれているんだから」と言われれば、自分でも「そうかもしれない」と思い込んでしまう。しかし岡野さんは言う。自分のためにお金を使えない、使うことに罪悪感を覚えさせられている状態は、すでに支配の中にいることを意味する、と。