初めての売買仲介がいきなり麻布の2億円物件。未経験から不動産業に参入した女性社長が語る、先に動いて後から追いつくキャリアの作り方
「準備が整ってから動く」——多くの起業家がそう考える中、真逆の順番で事業を作り上げた女性社長がいる。不動産業の経験も知識もないまま会社を設立し、賃貸仲介を積み重ねた先に舞い込んだ初めての売買案件は、いきなり麻布の2億円物件だった。
株式会社MIKIA代表・髙山亜希美氏の起業哲学は、「とりあえずやってみれば、やるべきことが自然に見えてくる」というシンプルな一言に集約される。しかしその裏には、夢に敗れた悔しさを原動力に変えた過去と、資金繰りの逆境をくぐり抜けてたどり着いたお金の鉄則があった。本稿では、行動が先・知識は後という異色のキャリア戦略と、事業を続けるための現実的なお金の考え方を明かす。全4回の第1回。
みんかぶマガジン連載「バリキャリ女性社長のワークライフ・ルール」
目次
原動力は「夢に敗れた悔しさ」。未経験からの起業を選んだワケ
九州出身の髙山氏が上京したのは18歳のとき。短大進学と同時に、芸能の道を目指した。演技の仕事に就くため、事務所に入り、動き始めた。しかし業界の構造や人間関係の中で、「自分の気持ちや努力だけではどうにもならないことがある」と感じ続けた。頑張ることと結果が出ることのあいだに、自分の力ではどうにもできない要素が介在する——その構造への違和感と悔しさが、次の動きへの原動力になった。
「そこで諦めた悔しさが、自分の力になって起業という形になったと思います。もう自分の思いだけで頑張ろうと」
父が経営者だったことから、独立することへの心理的なハードルはさほど高くなかった。加えて、「将来のパートナーとビジネスの話を対等にできる自分でいたい」という、当時から持っていた感覚もあった。経営者になりたいというイメージは、幼い頃から漠然と存在していたという。小学校では学級委員長、中学校では副生徒会長を務めるなど、場を動かすことにも積極的だった。
不動産を選んだのは、「住まい」が人の生活の根底を支えるものだという信念からだ。「1日が終わって帰る家が充実していれば、人は安心できる。その土台を作るお手伝いをしたいと思っていました」。
「とりあえず会社を立てた」——行動が先で、知識は後からついてくる
髙山氏の行動順序は、普通とは逆だ。準備が整ってから動くのではなく、動いてから必要なものを揃えていく。不動産会社の設立もそうだった。「まず会社を立ち上げて、そこから勉強を始めました」。何という行動力だろう。
「思い立った時に今やるか後でやるかが最初の分岐点だと思っています。後回しにすると気持ちが薄れる。物事の優先順位を考えて順序立てることは大事ですが、考えすぎはよくない。とりあえずやってみれば、やるべきことが自然に見えてくる」
知識もゼロからのスタートだった。「不動産の勉強のためのテキストを買って、スクールにも通いました」。さらに、女性経営者が集まる食事会にも積極的に顔を出した。業界の先輩や同世代の経営者たちから、現場でしか得られない知識や人脈を少しずつ積み上げていった。資金もコネも薄い状態からスタートした事業を、こうした地道な積み重ねが支えた。