公称550万部!朝日新聞より売れる「聖教新聞」…創価学会の驚異的な商材ビジネスモデル

 新宗教は自身の成長・拡大のため、効率的に多額の金銭を集められるシステムの構築に力を入れてきた。その特殊性から企業のビジネスモデルはなかなか適用しづらく、昔からある既成宗教とも一線を画す中で、宗教学者の島田裕巳さんは「新宗教のビジネスモデルは4つの型に分類できる」と指摘する。

 「商材ビジネス型」の創価学会の機関紙『聖教新聞』の発行部数は公称で550万部に上る。これは朝日新聞の最新発行部数である399万部をゆうに上回る。新宗教ならではのビジネスモデルとはどのようなものなのか――。全4回中の2回目。 

※本稿は島田裕巳著『新宗教 驚異の集金力』(ビジネス社)を抜粋、編集したものです。 

第1回:統一教会「韓国・財閥としての顔」日韓トンネル利権の仕組み…なぜ女性入信者は「統一原理」に惹かれるか
第3回:新宗教信者が「つい献金したくなる」キラーフレーズ…なぜ金を支払うことが快楽につながるのか

商材ビジネス型――創価学会、生長の家 

 新宗教のビジネスモデルとしては、商材ビジネス型、献金型、スーパー・コンビニ型、家元制度型の4つのタイプが存在することになる。 

 創価学会の特徴は「商材ビジネス型」であることだ。その核になっていくのが、教団の機関紙である『聖教新聞』である。『聖教新聞』は、まだ創価学会が急拡大をはじめる前の1951年4月20日に創刊されている。現在(2022年)の『聖教新聞』は、朝刊のみの発行で、夕刊はない。購読料は税込みで1934円である。発行部数は公称で550万部とされている。 

 聖教新聞社では、こうした新聞や雑誌のほかに、書籍も刊行している。主なものは、池田大作の著作で、『人間革命』や『新・人間革命』などは、かなりのベストセラーにもなっている。また同社からは、150巻の『池田大作全集』も刊行されている。創価学会の会員たちは、『聖教新聞』を購読するだけではなく、こうした機関紙(誌)や書籍を購入する。熱心な会員であれば、1カ月にかかる新聞、雑誌、書籍代は相当な額にのぼる。 

 ただ、実は「商材ビジネス」は創価学会が最初に作り上げたものではない。戦前の時代において、雑誌や書籍の販売によって、独自のビジネスモデルを開拓したのが「生長の家」であった。 

 生長の家では、雑誌と書籍の販売が核だった。もしここに、新聞という媒体が加わったとしたら、創価学会とまったく同じ体制が作られたことになる。 

 他の新宗教においても、教団の規模が拡大していけば、機関紙(誌)を刊行するようになるし、教祖の著作などが売られるようになっていく。教祖の著作がベストセラーになることもあり、それで教団の社会的な認知が進む。さらに、機関紙(誌)や教祖の著作は、信者が信仰を広めていく上において、布教拡大の道具として機能していく。 

 しかし、商材ビジネス型のビジネスモデルを作り上げ、その上に活動を展開していくような新宗教は、それほど多くはない。 

献金型――立正佼成会、天理教、金光教、大本 

 多くの新宗教で、金を集める手段として用いられているのが「献金」である。多くの新宗教では、会費のない創価学会とは異なり、会費を徴収するところが多い。ただし会費の額は、月に100円とか200円など、一般に低額である。妙智会などは50円である。高いのは真光系教団の場合だが、崇教真光ではそれでも月500円である(ただし入会費用として1万5000円がかかる)。 

 安い会費では、いくら新宗教の教団の信者の数が多くても、教団を運営するための経費を捻出することはできない。会費が月100円の教団の信者が10万人いて、全員が納めたとしても、総額は年間で1億円を超えるくらいにしかならない。 

 そこで重要になってくるのが、献金である。立正佼成会では、額が多いのが、「喜捨金」と呼ばれる献金である。立正佼成会では、各地域で行われる法座に参加したり、東京・杉並区和田にある本部に団体で参拝することが活動の中心となっており、そうした機会に布施として喜捨金が献じられる。ほかに、道場などの施設を建設する際には、特別に寄付金が集められる。 

 これは、かなり昔の時期の数字で、現在とはかなり異なっていると思われるが、立正佼成会がもっとも急速に拡大を続けていた1956年において、全体の収入に占める喜捨金の割合は46.2パーセントで、寄付金は24.3パーセントだった。翌1957年では、前者が61.5パーセントで、後者が25.6パーセントだった。 

 こうした献金型のビジネスモデルを採用した場合、教団が急速に発展しているときには、多額の金が入ってくる。信者たちは、競って献金を行う。献金の額を信仰の強さの証として考えるからである。なかには、財産のほとんどを献金に費やしてしまうような人間さえ出てくる。その点で、このビジネスモデルは、さまざまな点で問題を抱えている。 

 まず、信者たちが熱心で、競って献金するようになると、際限がなくなり、生活を破壊するまでに至ってしまう危険性がある。もう一つの問題は、献金の額が信者の熱意に比例するため、発展期には多額の献金があるが、活動が停滞するようになると、途端に額が減ることにある。活動が停滞すれば、儀礼の場にも集まることが少なくなる。来る信者の数が減れば、献金の額に影響する。その点で、献金型のビジネスモデルは、安定性を欠いている。 

スーパー・コンビニ型――阿含宗 

 阿含宗の創始者である桐山靖雄は、最初、観音信仰を軸に宗教活動を展開していたが、釈迦の実際の教えを含むとされる「阿含経」に関心を向けるようになり、それと密教とを融合させた「阿含密教」を独自に開拓する。 

 この阿含宗では、実にさまざまな形で信者が金を支払うような仕組みが整えられている。まず、入信するための費用として3万5000円がかかる。会費は月々2500円である。これ自体、他の新宗教にくらべてかなり高いが、そのなかには法具一式と会費3カ月分(6000円)が含まれる。 

 供養の関係としては、護摩木による先祖供養が1本100円からで、卒塔婆供養が1体500円、冥徳供養が1家系500円で、どちらも1カ月に一度とされている。7、8月のみの万燈供養が1燈3500円からで、解脱永代供養になると10万円である。永代のものは高額だが、一度限りであることを考えれば、それほど高いとは言えない。日常的な供養はむしろ低額に抑えられている。 

 祈願は、独鈷加持は無料で、護摩木もやはり1本100円である。願いごとを1カ月にわたって祈禱してもらう御手配願いは1件3000円で、とくに緊急を要する特別御祈禱は1件3万円になる。かなり高額なのは永代祈禱の10万円だけである。 

 このように、阿含宗では、さまざまな回路を通して、信者の金が教団に入っていく仕組みが作られている。一つひとつの額はそれほど高くはない。少なくとも、法外な価格ではない。むしろ、額を抑えることで、信者が容易に金を支払えるようになっているとも言える。 

 これが献金と違うのは、献金の場合には、特定の用途はなく、信者は教団の維持運営のために金を提供する。ところが、阿含宗の場合には、それぞれに名目が違い、具体的な目的や目標が定められている。教団では、それぞれのものに金を出せば、かなりの効果があると宣伝しており、信者の側の期待感を高めるようになっている。 

 これは、商売で言えば、「薄利多売」の販売形式に近い。現代において、薄利多売に徹しているのが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアである。その点で、このモデルを「スーパー・コンビニ型」のビジネスモデルと呼ぶことができる。 

 もちろん、教団が提供するさまざまなサービスや機会に応じて、すべてに金を出せば、相当な額にのぼる。しかし、信者の側は、それぞれのニーズに応じて、金を支払うものを選別できるわけで、額を減らそうとすれば、それは十分に可能である。その点で、スーパー・コンビニ型のビジネスモデルは、教団にとって安定性が高い。 

家元制度型――真如苑 

 霊的なカウンセリングの一種である「接心」を中心とした真如苑の新しいビジネスモデルは、茶道や華道、日本舞踊などの家元制度に似ている。家元制度では、弟子たちは稽古を重ね、次第に免状や資格を得て、上の位に昇格していく。その際に、弟子は、一定の金額を家元に支払わなければならない。そして、免状や資格を得ることで、教える立場に立つことができる。 

 真如苑の場合にも、信者は接心を受ける側であるとともに、修行を重ねることで、接心を施す側に変わっていく。その修行を行う際にも金を支払う必要があるわけで、そこが家元制度に似ている。真如苑は「家元制度型」という新しいビジネスモデルを確立しようとしている。 

 献金では、阿含宗のように、一口何円などと決まっている場合もあるが、多くの場合は額は決まっていない。建て前として、寺に対する布施と同様に、布施をする側の自発的な意思に任されている。けれども、額が決まっていない分、額が多ければ多いほど好ましいという意識が生まれる。 

 それに対して、接心の場合には、額が決まっていて、しかもその額は低額である。たとえ、毎月応現院を訪れ、接心を受けても、年間で1万円を少し超える額にしかならない。もちろん、遠方に住んでいれば、交通費がかかるが、近ければ、それもほとんどかからない。 

 信者の側にとっても、額が決まっていることで安心できるばかりか、額が信仰と直結することがないため、無理して多額の費用をかける必要が生まれない。 

 それでも、真如苑が並外れた集金能力を示すのは、何より多くの信者を抱えているからである。現在では、公称で93万人弱の信者がいるとされているが、それは誇張されたものではなく、実数に近いものと考えられる。 

 1回1000円という額は少額だが、93万人が最低1年に2度それを支払っているのなら、それで19億円近くになる。そのなかには、500円しか支払わない学生も含まれているものの、ほかにも信者が教団に金を支払う機会はいくらでもあり、おそらくは19億円をかなり超える額が集まっているはずである。30億円から50億円程度は集まっているのではないだろうか。

島田裕巳著『新宗教 驚異の集金力』(ビジネス社)
この記事の著者
島田裕巳

1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師。

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