認知症になってからでは遅い…相続争いを未然に防ぐ「3つの最強ツール」の始め方
遺産5000万円以下。マイホームと預貯金しかない「普通の家族」が法廷で争っている——。これは、弁護士法人Authenseが公表した「遺言書年報2025」が明らかにした事実だ。「うちはたいした資産もないから関係ない」という思い込みが、もっとも危ないという。
本稿では、Authenseで相続案件を数多く手がける堅田勇気弁護士の実務経験をもとに、相続争いが起きやすい家族パターンから、金額より「感情」が引き金になる紛争の本質、そして今すぐ取れる予防策まで、4回にわたって紐解いていく。全4回の第4回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
目次
「まだ元気だから大丈夫」が、最も危険な思い込みだ
これまでの3回で見てきたように、相続の泥沼は多くの場合「遺言書がない」という一点に集約されます。知らなかった相続人の問題も、不動産の行き詰まりも、使途不明金の疑惑も、親が元気なうちに「誰に何を渡すか」を明示しておけば、大部分は防ぐことができます。でも現実には、遺言書を作成している人の割合は極めて低いのです。
なぜ遺言書を作らないのか。私がよく聞く理由は「まだ元気だから大丈夫」「財産が少ないから必要ない」という2つです。でもこの2つこそ、もっとも危険な思い込みです。認知症が発症した後に書かれた遺言書は、判断能力の欠如を理由に無効とされるリスクが高い。財産が少ないほど争いになりやすいことは第1回でお伝えした通りです。「元気なうちに、早ければ早いほどいい」。それが相続案件を長年扱ってきた私の一貫した答えです。
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は全文を手書きすれば作れる手軽さがある一方、書き方に不備があると無効になるリスクがあります。公正証書遺言は公証人が関与するため費用はかかりますが、法的有効性が高く、紛争リスクを最小化できます。特に家族関係が複雑なケースには、公正証書遺言を強くお勧めしています。