東大留学生の66%が中国人という現実。文京区の物件価格を押し上げる猛烈な教育熱、大手塾の席巻…激変する「街とキャンパス」の現場
東京屈指の文教地区である文京区に、IT起業家やビジネスパーソンをはじめとする中国人ファミリーが集結している。目的は名門校が集まる恵まれた教育環境であり、人気公立小の学区を狙う物件探しが中古マンション価格を押し上げる要因にもなっている。中学受験から東大キャンパスまでに及ぶこの変化の裏で何が起きているのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏が実態を解説する。
みんかぶプレミアム連載「牧野知弘 不動産を斬る!」
文京区の外国人住民は過半数が中国人 街の光景を変えたデータの実態
私は東京の文京区に在住して8年ほどになりますが、年を追うごとに街中を歩く人に中国語で会話している人が増えていると感じています。中華レストランやコンビニで店舗オーナーや従業員として働く姿ではなく、地下鉄のホーム上、スーパーの店内やレストランの客として見かけることがごく普通の光景となっているのです。しかも小さな子供連れの親が目立ちます。
データは雄弁です。20年前の区内在留外国人数は6506人。区人口の3.7%に相当していました。このうち中国人は2316人。外国人全体の35.6%です。2025年になるとどうでしょうか。在留外国人数は1万5923人と2.4倍に増加。外国人比率は6.7%に。そのうち中国人は8666人に急増。外国人の54.4%と、なんと文京区に在住する外国人の半数以上が中国人になっています。
文京区に居を構える中国人の多くは、日本の企業で働く、あるいはITや情報通信系などで起業しているなど、これまでの在留中国人とはイメージがかなり異なる人たちです。彼らはなぜ文京区に集まってきているのでしょうか。
人気公立小学校「3S1K」 学区狙いで過熱するマンション争奪戦
文京区は東京都内でも屈指の文教地区といわれます。区内には東京大学をはじめとしてお茶の水女子大学、東京科学大学(旧東京医科歯科大学)、順天堂大学、中央大学、東洋大学、拓殖大学など数多くの大学があります。また筑波大学附属中学高校、東京学芸大学附属竹早中学校などの国立の中学高校、小石川中等教育学校、桜蔭中学高校など東大進学率の高い進学校が多数存在しています。
こうした教育環境に目を付けた中国人エリート家庭が文京区に居住したがる傾向が近年強まっているのです。彼らはSNSなどを通じて教育関連の情報を頻繁に交換していて、特に小学校については学校の頭文字をとって「3S1K」と称される4つの公立小学校に子供を入学させたいという意向が強くあるといわれます。3Sとは誠之(せいし)、昭和、千駄木の3つの小学校。1Kは窪町小学校のことです。この小学校に子供を入学させたい親は中国人だけでなく、日本人にも大人気です。ただ、そうはいっても普通の公立小学校なので何か特別なカリキュラムで教育が行われているわけではありませんし、子供の成績が極端に良いわけでもありません。
また文京区立の小学校は学区が非常に狭く、学区内に在住しないと当該小学校への進学が許されないために、彼らは血眼になって学区内のマンションに住みたがります。その結果3S1K学区内の中古マンション価格はうなぎ上りの状況にあるのです。
これらの小学校では日本語が不自由な子にむけて日本語教育や中国語への翻訳などが必要になるため、教員の負担が増しているとの話もあり、最近ではこうした傾向を敬遠する日本人も出てきているそうです。しかし、ここにやってくる中国人エリートたちは大変教育熱心な人たちでもあり、潤沢に教育資金を費やし、瞬く間に日本語を習得していき、学校の成績でも上位を占めていくといわれます。
SAPIX都心部校舎で15%超 中学受験で存在感を増す中国人子弟
日本に家族でやってきて教育環境の良い文京区内などに居住する中国人がいることをご紹介しましたが、最近では中国人同士、あるいは日本人を配偶者として国内で結婚し、日本生まれの子供を持つ家庭も増えています。日本生まれの子供たちは日本語も堪能で、文化や風習にも慣れ親しんでいます。私たちの目から見ても、日本人の子供とほとんど変わらないようにみえます。そして彼らは日本の子どもたちに交じって小学校のころから塾通いをスタートさせます。
2023年12月23日の東洋経済オンラインで中国・東南アジアジャーナリストの舛友雄大氏がとりあげた『中学受験で躍進する中国人「裏SAPIX」の驚愕実態』が大きな話題となりました。
この記事によると中学受験塾の名門SAPIXの生徒6000名中、300名から400名が中国人子弟であり、都心部の校舎ではその割合は15%から20%に達するところもあるという実態が報告されました。SAPIXの入塾には厳しいテスト(当然日本語)が施され、各小学校でも上位の子しか入塾が叶いません。
そして中国人子弟たちは塾の中でも成績上位を占め、特に男子は筑波大附属駒場、開成、麻布へ、女子は桜蔭、女子学院、豊島岡などに進学するのだといいます。学究社が運営する小中学生向け学習塾enaも中国人子弟を多く迎え入れている塾です。enaは公立校への進学で成績が良い塾で、一部の校舎では中国人学生の数が4割にも達しているといいます。