株価11万円でも売らなかったキオクシアホルダーが警戒する“最大の懸念”…AIバブルはまだ終わらない理由
9800円前後からキオクシアを買い、その後はキオクシアをはじめとした半導体関連銘柄への投資で、運用資産を一時年初比20倍まで増やした個人投資家のキオ君氏。
キオクシアの株価が一時11万円前後まで上昇しても、ほとんど売却しなかった。その後、キオクシアは高値から一時3分の1近い水準まで下落し、ほかの半導体関連株も大きく売られたことで、それまで積み上がっていた含み益も大幅に減った。
それでもキオ君氏は、AIそのものについては「まだ初動」と見る。
キオクシアはなぜここまで上昇したのか。株価11万円でも売らなかった理由は何だったのか。そして、今後のキオクシアで最も警戒していることは何なのか。第2回では、AI・半導体相場とメモリ市場の今後について聞いた。
みんかぶプレミアム特集「AIバブル この狂乱の勝者は誰だ」
AIバブルはまだ終わっていない
私はAIそのものをバブルだとは見ていません。株価だけを見れば、AIや半導体関連というだけで大きく上昇した銘柄もありますし、その反動でかなり下落した銘柄もあります。ただ、それは株価の話であって、AIという産業の成長とは分けて見ています。
今のAIは、ChatGPTのようなサービスで文章を作ったり、質問に答えてもらったりする使い方が中心です。企業でも、一部ではかなり導入が進んでいますが、AIを事業のあらゆるところで本格的に使っている会社はまだ多くありません。
これからAIが企業活動の中にもっと入っていけば、必要になる計算量もデータ量も現在とは比べものにならないほど増えます。さらに、ロボットや機械をAIで動かすフィジカルAIが普及すれば、半導体の需要はもう一段大きくなります。
10年という期間で見れば、AIはまだ始まったばかりです。現在の半導体株の下落も、数年後に振り返れば一時的な調整だったという結果になってもおかしくありません。
なぜキオクシアは急騰したのか
キオクシアがここまで上がった理由として大きかったのは、上場当初の評価がかなり低かったことと、AIにおけるNAND型フラッシュメモリの重要性を市場が評価するようになったことです。
AI向けメモリでは当初、DRAMやHBMが圧倒的に注目されていました。AIの計算処理を高速化するために必要なので、まずはこちらに資金と注目が集まりました。
ただ、AIは計算して終わりではありません。AIを使えば膨大なデータが生まれ、そのデータを保存し続ける必要があります。生成するデータ量が増えれば増えるほど、ストレージも必要になります。
そこでNANDの重要性が一気に認識されるようになりました。
AIサーバーやデータセンターが増えれば、NANDの搭載量も増えます。企業がAIを本格的に使い始めれば保存するデータもさらに増えるので、今ある需要が増えるだけではなく、これまで存在しなかった用途から新しい需要が出てきます。
当初はAI関連メモリとして十分に評価されていなかったNANDが、実はAIの普及に欠かせないことに市場が気づき、需要の見通しも大きく引き上がりました。その結果、NAND大手であるキオクシアの評価も一気に切り上がりました。
キオクシア株価11万円でも売らなかった理由
キオクシアがどんどん上がって、株価が11万円くらいまでいった時も、私は一切売りませんでした。その時点では20万円を利確ラインとして見ていたからです。
9800円前後で買った当初は、4万円を利確ラインにしていました。4倍になれば十分だと考えていたんです。
ただ、その後もキオクシアやメモリについて詳しく発信している人たちの情報を追い、そのたびに自分でも決算資料や業界資料を調べていくと、4万円で利確する理由がなくなっていきました。
AIの普及によって今後どれだけメモリが必要になるのか、NANDの需給がどう変化するのか、キオクシアの利益がどこまで伸びるのかを調べるほど、当初考えていた4万円という利確ラインでは低すぎると判断しました。そこで利確ラインを引き上げ、株価が11万円になってもほとんど売りませんでした。
銘柄を見つけるきっかけは、他人の発信でいい
キオクシアを最初に調べるきっかけになったのもcisさんの発信でしたし、その後もキオクシアや半導体に詳しい人たちの発信をかなり参考にしています。
私は、自分一人ですべての銘柄をゼロから探す必要はないと考えています。むしろ、詳しい人が何に注目しているのかを見て、そこから自分で調べる方が圧倒的に効率がいいです。
株式投資でかなり労力がかかるのが、そもそも調べる価値のある銘柄を見つけるところです。上場企業は何千社もあるので、その全部を自分で一社ずつ調べることはできません。
だったら、自分よりその分野に詳しい人や情報収集に優れている人が注目している銘柄を入口にして、そこから自分で資料を読む方がいい。調べるきっかけまで自力で見つける必要はありません。
もちろん、他人の発信をそのまま鵜呑みにして買うのは違います。「この人が買っているから自分も買う」で終わったら、その人が売った時に自分では判断できなくなります。
人の発信から銘柄を知り、自分で徹底的に調べ、自分の判断に変える。私はこのやり方が最も効率的ですし、実際にキオクシアでもかなり役立ちました。銘柄を見つけるところまで全部自力でやろうとする人は多いですが、そこに時間を使いすぎる必要はないと思います。
キオクシア急落で含み益はピーク時の半分まで下がった
その後のキオクシアの下落はかなり大きいものでした。
私はキオクシアだけではなく、JX金属など半導体周辺の銘柄もかなり持っていました。信用取引も大きく使っているので、半導体関連株がまとめて下がれば、損益の振れ幅もかなり大きくなります。
キオクシアは高値から一時3分の1近い株価まで下落し、ほかの半導体関連株も同時に下がりました。その影響で、それまで積み上がっていた含み益もピーク時の半分くらいまで減りました。
持っていた銘柄の中には下落の途中で売ったものもあります。その後は相場が持ち直し、現在は年初から10倍程度まで戻しています。
私は信用フルレバに近い投資を長く続けているので、株価が上がった時に利益が増えるスピードも速い一方で、相場全体が下がった時には含み益も大きく減ります。これも含めて自分が取っているリスクです。
上がれば上がるほど「信用買い」が増える怖さ
短期の株価は業績だけで決まるものではありません。信用買い残や大口の売買を含めた需給によって、本来の企業価値では説明しにくいところまで売られることがあります。
私は17年近く信用フルレバで投資して、リーマンショックをはじめ、何度も「○○ショック」と呼ばれる暴落を経験してきました。その中で嫌というほど見てきたのが、パニックになった個人投資家が一斉に損切りし、株価が企業価値とは関係ないところまで売られていく場面です。
信用取引では、株価が下がれば追証が発生したり、耐えられなくなって損切りしたりする人が増えます。それによってさらに売りが出て、株価が下がり、また別の人が投げる。こうなると業績の話だけでは説明できない値段まで売られます。
そこに機関投資家をはじめとする大口の売買が重なると、信用で買っている個人はかなり厳しくなります。大口は大量に売買できますが、個人は資金量でも情報量でも不利です。相場では個人は基本的に搾取される側に回りやすいということを、私は実際にお金を失いながら覚えてきました。
短期売買で利益を取るということは、誰かが高く買った株を売り、誰かが耐えられず安く手放した株を買うことでもあります。みんなが強気になって信用買いを増やしている時に一緒になって買い、暴落してみんなが悲鳴を上げている時に一緒になって損切りしていたら、大衆とまったく同じ行動になります。
企業の将来性に対する前提が変わっていないのであれば、みんなが悲鳴を上げて損切りしている時に売るのは愚の骨頂です。むしろ、そういう人たちが耐えられずに投げているところで買う。私はこれを投資判断で最も重視しています。
キオクシアがストップ安になった9800円前後で大きく買えたのも同じです。目先の決算が悪く、みんなが売っている中でも、自分が見ていた1年後、2年後のメモリ市場は変わっていませんでした。市場全体の悲観によって自分が評価していた価格より大幅に安くなったので買いました。