「勝つ人は『買う前』に降り方を決める」著名トレーダーが語る個人投資家に必要な“諦める技術”
「株価は下がった。でも配当は出るし、もう少し持っておこう」ーー含み損を抱えると、ついそんなふうに考えてしまう人もいるかもしれない。
ただ、投資家・トレーダーの窪田剛氏は、「配当があるから」「長期投資だから」と後付けの理由で持ち続けるのは危険だと話す。
もともと短期の値上がりを期待して買った株なら、下がったあとに都合よく目的を変えてしまうと、売るタイミングを見失いやすい。
SNSを開けば、AI・半導体株や高配当株で大きく儲けたという投稿も目につく。では、そんな盛り上がる相場の中で、どこまで乗り、どこで見切りをつければよいのか。
今回は窪田氏に、株を買う前に決めておきたい「売る条件」と、個人投資家に必要な“諦める技術”について話を伺った。インタビュー連載全3回の第1回。
なぜ、個人投資家はプロに勝てると思うのか
ーーAI関連など流行のテーマ株は個人投資家も利益を出しやすいと聞きます。やはり積極的に波に乗るべきでしょうか。
お祭り騒ぎになっている相場へ参加をすること自体は、決して悪いわけではありません。うまく立ち回れば、短期間で大きな利益を出せる可能性も十分にあります。
ただ、一番やってはいけないのは、何も考えずに出口戦略を持たないまま、行き先不明のバスに乗り込んでしまう行為です。ブームの渦中にある銘柄はボラティリティが高く、一歩間違えれば大きな痛手を負ってしまいます。
ーーSNSの利益報告を見ると誰でも簡単に勝てる気がしてしまいますが、それは一握りの成功例に過ぎないのですね。
世の中に成功者があふれているように見えるのは、うまくいった人だけが大きな声で発信をしているからです。
タイムラインには景気のよい数字が並びますが、その裏には資金を溶かして退場し、発信すらできなくなった無数の敗者が沈んでいます。勝った人間の声だけを聞いていると、誰でも簡単に儲かる錯覚に陥ってしまうのですよね。
ーーたしかに、大きな損失を出したことをわざわざ公開する人は少ないです。生存バイアスがかかっているわけですね。
ええ。医学部に合格をした友人が何人かいたとして、「教科書を読めば受かるよ」と言われても、「自分にもできそう」とは思わないはずです。
それなのに、投資の世界だと「あの人が儲かっているなら自分もやれるはずだ」と根拠のない自信を持ってしまうのです。
ーー本業での努力と同等の熱量を注いでいないのに、未経験の分野でトップ層と同じ成果が出せると錯覚してしまうと。
相場は、世界中の機関投資家や専業トレーダーがお金を奪い合う非常に厳しい戦場です。それなのに、プロが本業で費やしている熱量の何分の一も勉強をせず、ネットの情報を少し眺めただけで勝てるほど甘い世界ではありません。
何十年もキャリアを積んで、ようやく月50万とか稼げるようになったあなたのところに、未経験者の新卒社員が飛び込んできて「知識も経験もありませんが、同じくらいの給料がすぐ欲しいです」と言ったら、どう思うでしょうか。客観的に見れば異常な発想だと気づくはずです。