内紛の旧N党・絶望局面「立候補82人で当選わずか4人の大惨敗」立花孝志氏”終焉”の足音か…「ひるむことはない」

当選したのはわずか4人だけ「まさかの大惨敗」

 「政治家女子48党」と「NHK党」の創始者である立花孝志氏(55歳)は、4月24日に自身の公式YouTubeチャンネルを更新し、統一地方選の後半戦で惨敗したことについて総括した。

 悲しみ、悔しさにあふれた面持ちで、「大津さんと私が争いをしていて、お金に非常に不信感が出ている。最前線に立候補している皆さまには本当に申し訳ございませんでした」と謝罪をした。

 立花氏は、「政治家女子48党」と「NHK党」などから82人の候補者を統一地方選に出馬させたものの、当選したのはわずか4人だけだった。まさかの大惨敗に、大きなショックを受けたことだろう。

 立花氏はこれまで、みんかぶマガジンの取材(2022年11月18日、19日公開の2記事)に対して、次のようなことを語っていた。

「4月の統一地方選挙では、NHK党から一気に1000人規模の候補者擁立をする可能性もあると思っています」

当選したら武道館デビューを約束されていた候補者たち

「今の女の子たちって、お金がほしいわけではない。ワーキャー言われたいというのが一番でしょ。市議会議員に当選すれば、年収1000万円が4年間で4000万円もらえるのですけど、お金がほしいという動機だけでは立候補しませんよ」

「実は、さらにサプライズがあります。そのようにして統一地方選にて各地で当選したNHK党議員を、秋元康さんのAKB方式で総選挙を行い、来年の6月にメジャーデビューさせ、最終的には武道館でライブさせようと考えています。

 NHK党から立候補して当選した人には、武道館デビューが約束されています。そのデビューのために、統一地方選挙を勝ち抜いてきてください、ということです。政治家は本来、人々からワーキャーいわれる、憧れの存在であるべきだと私は考えています。そもそも、政治家という職業が子どもたちの『将来なりたい職業ランキング』の上位に入っていないこと自体がおかしいでしょう。そこに現在の政治低迷の元凶があるのではないでしょうか。それを打破するために、NHK党はこれからも戦っていきます」

党勢を拡大するために前代未聞の戦略

 以上の発言からは、立花氏の意欲的な戦略を読み取ることができよう。たくさんの若い女性の立候補者を選挙に立てることで話題を集め、お祭り騒ぎにして、さらに注目を集め続けて党勢を拡大しようという前代未聞の戦略だ。政治家をアイドル化するだけで、そこに政策が語られていないのが気になるところではあるものの、シルバー民主主義が叫ばれれる中、また高齢の政治家が自身の議員任期を利権の差配だけに集中しているような状況であれば、一定の意味はあったのかもしれない。

 報道キャスターでありながら不倫をし、首相が暗殺未遂に遭った報告のさなかに高級うなぎ丼を食べ終えるという、いかにも俗人的な人たちが、立法や行政を取り仕切るのが民主主義というものである。それによって政治が劣化するというようなことはなかった可能性は多分にある。

 果たして、立花氏は統一地方選挙で1000人の候補者を擁立することができなかった。

 この戦略的失敗には、前兆のようなものがあった。昨年12月25日投開票された西東京市議会議員選挙だ。

「西東京市のキャバクラに行って候補者をスカウトしてもいいでしょう(笑)。できれば50人、最低でも30人程度は西東京市議会議員選挙に擁立したいのです。西東京市議会議員の定数(当選者のこと)は28人で、いつもだと35人程度が立候補しているのですが、そこに50人、少なくとも35人以上がNHK党から出馬するとなると、(市内の各所で選挙期間中に立てられる)選挙掲示板の半分以上が、NHK党のポスターで埋まることになります。若い女性だらけの華やかな掲示板になるはずです」(2022年11月18日「みんかぶマガジン」)

 と、西東京市議会議員選挙で、最低でも30人の立候補を目指したが、政治家女子48党からは実際には3人しか立候補させることができなかった。また、得票数も最下位と、最下位から3番目、最下位から4番目と、下位を独占し、全員落選の憂き目にあった。この選挙に対する誠実な総括があれば、この統一地方選挙の失敗は起きなかったかもしれない。

政治家女子48党だけでなく、若い女性が統一地方選挙に立候補した

 つまり、大多数の擁立は困難であること。もう一つは、これは立花氏が例にだした秋元康氏のAKB48のやり方を冷静に考えればわかることだ。それは、AKB48は、ファンをある程度獲得してから総選挙というイベントを開始したのであって、いきなりファンの前に写真だけを並べて選挙をしたわけではない、ということだ。「ファンが増えた→総選挙→ファンがより熱心に応援→さらにイベントの盛り上がりによって知名度が増す」という順序なのである。立花氏は最後の「イベントの盛り上がりによって知名度が増す」ということだけで、いけるのではないかと仮説を立てたのであろうが、西東京市議会選挙の結果を見る限り、そうではなかった。やはり、地道な活動でファンをある程度育てる必要があったのではないかと思われる。

 また今回、政治家女子48党だけでなく、若い女性が統一地方選挙に立候補したというのは逆風であっただろう。たしかに、これまでの地方選挙の結果、もしくは、国政選挙の結果であっても、「若い」「女性」というだけで、無党派からの票が増えるという傾向はあった。実際に、若い候補、女性の候補だからという理由で、特に政策など関係なく投票する有権者は多いのだろう。

立花氏の思惑とは違っているのかどうかはわからない

 しかし、そういった「若い女性」候補が、政治家女子48党以外にもたくさん出馬したことで、「若い女性」に投票する有権者にとって選択肢が生まれた。その結果、ずっと何か揉(も)めているような政治家女子48を避ける傾向が出たり、または若い女性の中でも、多少なりとも共感できる政策を掲げた候補に投票した可能性はあるだろう。

 今回の統一地方選挙の政治家女子48党の候補者の中には、立花氏の思惑とは違っているのかどうかはわからないが、ぜひ当選してほしいなと思われるような候補者も複数いたのは事実だろう。ある程度の「ファン」を獲得する時間を経て選挙に臨むか、もしくは、政治家女子48党以外(無所属を含む)の組織から立候補をすれば、当選ラインまで行った可能性はあったと思うと、残念な結果だった。

政治家女子48党公認候補であることがマイナスの可能性

 立花氏にとっての痛手は、立候補者にとって政治家女子48党公認候補であることが、票のプラスになるどころか、マイナスになっている可能性があることである。どうせ立候補するなら、他党や他組織のほうが当選可能性が高いと思われてしまうと、これまでも苦戦してきた候補者擁立がますます困難なものになってしまうだろう。

 さて、立花氏はこれから、この追い詰められたともいえる局面をどう打開するのだろうか。

 大津綾香氏との代表権争いに関しては、ゴールデンウィーク明けに判決が出ると述べている。立花氏は「次の選挙はしばらくありません。再来年の参院選は新しいアイデアで、NHKをぶっ壊す方法についてしっかりとご説明したい。逆風の中、頑張っていただいた立候補者の皆さま、ボランティア、投票していただいた方、ありがとうございました。このような形でひるむことはありません。こうご期待ください」といつもの “NHK破壊ポーズ” で締めくくった。大津氏との泥沼の争いに一刻も早く終止符を打ち、体制の立て直しを図りたいところだろう。

この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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