あまりに言葉が軽すぎる石破首相「短期間で主張が変節」でも開き直る姿に国民絶望…物価高対策や社会保障改革も不透明

石破茂首相(自民党総裁)は年頭記者会見で「令和の日本列島改造」に取り組むと表明した。新たに創設させる防災庁を含め、政府機関の地方移転などを強力に推進するという。石破氏と言えば、「経済音痴」との評がある一方で地方創生や安全保障政策に通じることで知られる。国民が物価高に困窮し、人口減少社会の到来が日本経済に打撃を与えていく中、石破首相が提唱する「列島改造」は救国の一手となるのか。経済アナリストの佐藤健太氏は「政治家にとって言葉は『命』のはず。だが、残念ながら年頭記者会見を見ても石破氏の言葉はあまりに軽く、怒りを禁じ得ない」と指弾する。
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地方創生2.0で「今日より明日は良くなる」
「楽しい日本、これを国民の皆様方と共につくり上げていきたい。『今日より明日は良くなる』と実感し、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける。そういう活力ある国家であると考えています。第1の柱として、私は令和の日本列島改造と位置づけ、『地方創生2.0』を強力に推し進めていきます」
1月6日、三重県伊勢市の伊勢神宮を参拝した石破氏は首相就任後初めての年頭記者会見でこのように決意を語った。昨年10月の総選挙で大敗し、少数与党ゆえの安全運転を強いられてきた石破首相だが、さすがに新年を迎えた最初の会見では自らの国家観や理念に基づく「石破カラー」を発揮するだろうと期待した。だが、正直に言って拍子抜けというよりも、「やはり、何もない人なのか・・・」と哀れみに似た感覚を抱いてしまった。
会見冒頭こそ髪型が変わった、肌質も良くなった、などと年末年始の“イメチェン”に感心していたのだが、内容自体は突っ込みどころが満載なのだ。まず、「今日より明日は良くなる」というフレーズはどこかで覚えがあると思って調べてみたら、2023年9月に岸田文雄前首相が第2次再改造内閣を発足した際に強調した言葉だった。
もちろん、前首相と目指すべき国家像が同じであれば多用しても構わない。実際、石破氏は昨年9月の自民党総裁時から岸田路線の継承を掲げ、「デジタル田園都市構想」や脱炭素社会を目指す「GX」(グリーントランスフォーメーション)の実現、AIや半導体産業を下支えする10兆円超の公的支援など前政権下の枠組みと変わらない政策を進める。ただ、その先に「楽しい日本」があるとは到底感じられないのだ。
「新しい資本主義」の中身は曖昧のまま終わった
2年前の2023年1月、岸田首相(当時)は年頭記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。同年6月に決定した「こども未来戦略方針」では子育て世帯への給付策を並べたが、若者世代の所得を伸ばすことに全力を傾注していくと言った割には所得環境に変化はほとんど見られず、少子化から反転する兆しもない。あれだけ繰り返した「新しい資本主義」の中身は曖昧のまま終わったのは誰もが知るところだ。
政治家にとって言葉は「命」のはずだ。ただ、最近の宰相はスローガンで国民を翻弄しているようにさえ映る。岸田氏は自らが率いた自民党派閥「宏池会」の先輩である池田勇人元首相の「所得倍増計画」や大平正芳元首相の「田園都市構想」にならい、「令和版所得倍増」「デジタル田園都市国家構想」などを打ち出した。
デジ田構想が目指すのは、「都市と同じ又は違った利便性と魅力を備えた、魅力溢れる新たな地域づくり」(デジタル庁)で、デジタル技術の活用によって新たなサービスやビジネスモデルを生み出しながら地方活性化を加速させるものだ。これは自治体の自主性を尊重し、大都市も含めて全体として発展させる「田園都市構想」と共通点が多い。ただ、最近は「デジ田関係」と言えば予算が容易に獲得できるケースも見られ、それがデジタルの恩恵を地域にもたらすものなのか疑わしい例もある。
「令和版所得倍増」が日の目を見ることなく終幕
「令和版所得倍増」が日の目を見ることなく終幕したのは知っての通りである。
石破氏が目指すという「楽しい日本」とは、「『今日より明日は良くなる』と実感し、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける。そういう活力ある国家」であるそうだが、その1本目の矢として「令和の日本列島改造」を位置づける意味がわからない。高度経済成長期の長期経済政策と同じことができないように、田中角栄元首相の「日本列島改造」はインフラ整備が進んでいなかった時代のものだ。