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「2027年侵攻説」はウソでも…習近平が台湾と日本にかける“平時以上、有事未満”の圧力

「2027年侵攻説」はウソでも…習近平が台湾と日本にかける“平時以上、有事未満”の圧力
(c) AdobeStock

「2027年に中国が台湾に侵攻する」——そんな言説が飛び交うが、実態はどうか。中国事情に詳しい紀実作家・安田峰俊氏は、真のリスクは露骨な武力行使ではなく、平時と有事の境界を溶かす「じわじわ型」の圧力にあると指摘する。

 みんかぶプレミアム特集「中国崩壊か 習近平の黄昏」

目次

中国にとって台湾が”別格”である理由

 いわゆる「台湾有事」をめぐる議論は、どうしても話が大きくなりがちだ。

「中国はいつ台湾に攻め込むのか」「2027年に人民解放軍が上陸するのか」「日本は巻き込まれるのか」――。この手の切り口は常に見出しになるらしく、私自身もここ3年ほどで人から50回くらいは尋ねられている。ただ、それを尋ねる人たちが本気でその答えを知りたいのか、正直首を傾げることも多い。大抵、現状への認識が粗いままで尋ねているからだ。

 まず、中国にとっての台湾は、「神聖なる領土の一部分」と(その実態や台湾の住民感情とは無関係に)位置付けられている。いわゆる核心的利益。日本人にわかりやすい表現でいえば“国体”である。もちろん、南シナ海や新疆、チベットなども同じ文脈で語られるのだが、台湾はそのなかでも別格だ。なぜなら台湾は、中国共産党が1949年の建国以来、いまだ「回収」できていない最大の政治的未完了案件だからである。

 習近平政権が、台湾の回収を自分たちのレガシーとする意志を持っていることも、もはや明らかだ。習近平が台湾統一を諦める可能性はほとんどない。加えて中国は習近平政権第1期の2015年末から軍の大幅改革に着手し、中央の指示を末端まで貫徹できる「戦える軍隊」の建設に躍起になっている。2022年8月以降、人民解放軍は年に1〜2回のペースで台湾近海で大規模な軍事演習をおこなっており、有事の際に台湾を制圧できるだけの軍事能力を獲得しつつある。

 もっとも、動機とそれを実行できる軍事的実力が(おそらく)あるからといって、ただちに「だから中国は近いうちに台湾を攻める」と考えるのは早計だ。

米情報機関の「2027年侵攻計画はない」が意味すること

 米情報機関の2026年版の年次脅威評価は、中国指導部が2027年に台湾侵攻を実行する計画を現在持っているとは見ていない。また、統一達成の固定されたタイムラインもないと評価している。これは、数年前から流行している「2027年侵攻説」を、かなり明確にクールダウンさせる内容だ。

 もちろん、これは有事の可能性がゼロだと言っているわけでもない。同じ報告書は、人民解放軍が台湾を奪取し、米軍の介入を抑止または撃破するための能力を、着実ながら不均衡に高めているとも指摘している。人体で例えれば、「2027年侵攻説」は医師の余命宣告レベルの話であり、考えにくい。ただ、恒常的に健康診断の数値が悪くて近年さらに気になる兆候が増えているので、日常生活に支障はないが要注意……。このくらいが現時点における「台湾有事」の正確なリスク感覚である。

 実際、北京としても、できれば戦わずに勝つことが望ましい。習近平がたびたび、台湾関連の発言の枕に「平和的統一」という単語を持ち出すのもそういう理由からだ。

 いかに中国が軍事的に強大化しても、台湾海峡を渡る大規模な着上陸作戦は現実的には簡単ではない。天候、海象、台湾側の反撃、米軍や日本の動きに大きく左右される。仮に成功しても、都市戦や占領統治が待っている。世界の半導体供給網は混乱し、中国経済も深刻な打撃を受ける。習近平政権にとって、失敗すれば政権の命取りになる決断はなかなか下せない。

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この記事の著者
安田峰俊

紀実作家。1982年生まれ。滋賀県出身。立命館大学文学部卒業、広島大学大学院文学研究科修士課程修了。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞、第50回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。他に『現代中国の秘密結社』(中公新書ラクレ)、『恐竜大陸 中国』 (角川新書) など著書多数。

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