トランプ大統領ICC制裁への正しい対処とは…国際政治アナリスト「トランプ政権やイスラエル側にも国際法上の一定の正当性がある」
米国のトランプ政権は18日、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長らを制裁対象にすると発表した。この対応について国内メディアや識者たちが一斉に非難しているが、国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「トランプ政権やイスラエル側にも国際法上の一定の正当性があるために物事はそれほど単純な話ではない」という。どういうことか。
みんかぶプレミアム連載「渡瀬裕哉の常識革命」
トランプ政権やイスラエル側にも国際法上の一定の正当性がある「ICCは国家の上に立って何でも犯罪を裁ける組織ではない」
トランプ政権がICC赤根智子所長らに対して制裁を実施したことがメディアなどで批判されている。日本人の所長が制裁対象になったことで心情的に同情することや国際的組織への制裁に対する道義上の疑問があることも理解できる。
しかし、トランプ政権やイスラエル側にも国際法上の一定の正当性があるために物事はそれほど単純な話ではない。
国際法の正統性は、突き詰めれば国家の同意に由来する。つまるところ、ICCが逮捕状を発行することについて、米国やイスラエルが事前に同意していることが必要だ。しかし、米国もイスラエルもICCの非加盟国であり、そのような同意は行われていない。そのため、米国から見ると、その権限を持たない超国家的な組織が同盟国の首相に逮捕状を発行したということになる。当然であるが、同盟国として敵対組織の個人に対して制裁措置を発動することは道義上も法律上も可能である。
ICCがイスラエルのネタニヤフ首相を罰することは、パレスチナ情勢に関しては国家性そのものが未確定であり、オスロ合意の下でイスラエル国民への刑事管轄権がパレスチナ側に委譲された事実もない以上、無理筋の判決だと言える。
ICCは国家の上に立って何でも犯罪を裁ける組織ではない。したがって、ICCの行為が国家主権を越権するなら、主権を侵害された国家やその同盟国から反撃を受けることは妥当だ。
ICCはもともと、どんな役割を果たしてきた組織だったのか
また、ICCには米国・中国・ロシア・インド・イスラエルなど世界人口の過半と軍事力の大半を占める国々が加盟していない。そのため、普遍的な訴追権限を持つというよりは、欧州諸国などの一部の国々やNGOなどの影響を強く受けた組織が主にアフリカ諸国での違法行為を裁いてきただけのものだった。
なぜなら、アフリカ諸国は自国の法制度が未熟であり、ICCがその代わりを果たしてきたからだ。ICCが取り扱う犯罪行為に関する国内法整備及び執行が行われている国の事件は原則として受理できないはずだ。一方、制裁そのものの合法性については、米国に相当の分がある。ICC特権免除協定の非締約国である米国は、裁判所職員に特権や免除を与える条約上の義務を負わない。さらに、資産凍結や入国拒否は、国際法上禁止された強制ではなく、非友好的だが合法な対抗措置に分類されている。