テスラの完全自動運転を制限し、安売り中国製EVに補助金――オワコン化する国土交通省はなぜ日本人の足を引っ張るのか
テスラの購入に国から127万円もの補助金が出る一方で、同社の目玉機能である「FSD(運転支援機能)」は日本の市街地で使えない。税金を投入して車を買わせながら、海外で提供されている便利な機能は封印されるという「ちぐはぐさ」が浮き彫りになっている。「国際基準」を楯に規制を続ける国土交通省の姿勢を、元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が鋭く批判する。
みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」
127万円の税金を出して「使えない車」を買わせる日本の歪み
テスラの日本向けサイトには、モデル3などを買う人に、国が127万円の補助金を出すと書いてある。ところが、テスラ社の売り物である「FSD」の市街地での運転支援機能は、日本では提供されていない。車を買うためには税金を使うのに、その車の便利な機能は使えない。このちぐはぐさに、日本の自動車行政の問題が表れている。
FSDは「Full Self-Driving」の略で、日本語にすれば「完全自動運転」だ。ただし、現在の「FSD(監視付き)」は、運転者が周囲を見て、必要ならすぐ操作を引き継ぐことを前提にしている。車がハンドル操作や加減速などを助ける仕組みであり、人が運転から解放される機能ではない。
テスラは、このソフトウェアを車とは別の商品として売っている。購入者は、運転の負担を減らす便利さに代金を払う。メーカーは車を売った後も収入を得て、そのお金を次の開発に回せる。車体を何台売るかだけでなく、買った後にどんな機能を提供するかが商売になる。
ところが、日本向けには使える機能が限られる。テスラも、機能の利用可否は開発状況と規制当局の承認に左右されると説明している。海外で動くことと、日本の道路で安全に使えることは同じではない。それでも、何を満たせば日本で売れるのかという条件は、企業が投資を決めるうえで欠かせない。
スマホで車を呼べるのに「6m先」まで歩く本末転倒 日本で骨抜きにされる便利機能
制限の意味がわかりやすいのは、駐車場でスマホを使って車を呼ぶ「スマートサモン」だ。モデルSの日本向け取扱説明書では、スマホと車の距離は約6m以内とされている。車を呼びたい人が、先に車の近くまで歩かなければならない。狭い駐車場所から車を出す用途には役立つが、離れた場所で買い物袋を抱えて待ち、車に迎えに来てもらう使い方はできない。
この距離制限には国際基準が関わっている。日本の役所だけが勝手に決めた数字ではない。しかし、国土交通省は、その国際基準をつくる側でもある。同省は2026年6月、レベル4を含む自動運転システムの新たな国際基準について、日本が共同議長として議論を主導したと発表している。「国際基準だから」と、見直しの責任まで国外へ押し出すことはできない。
国土交通省が問われるのは、安全性を高めた技術を、どんな条件なら実際に使えるようにするかだ。たとえば、歩行者が飛び出したときや通信が切れたときに停止できるかを試験し、利用できる場所や速度を限定する。そうした条件を積み上げて、使える範囲を広げるのが行政の仕事だ。制限を守っていることだけを確認しても、便利さは増えない。