参政党大躍進で日本どうなる!設立メンバーが暴露、神谷氏”本当の姿”「部下や仲間の意見を基本聞かない」 …「支持者に高学歴者いない」失礼な意見も

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 7月20日投開票の参議院議員選挙で自民党は大敗した。既成政党が厳しい戦いを強いられる中、注目度を高めたのが、今回大躍進した参政党だ。マスコミ各社の調査では結党5年の「新興勢力」とは思えない勢いがあると当初から見られ、不気味とも言える伸長ぶりを見せた。最近まで政党支持率が高いとは言えなかった参政党は、なぜ急伸したのか。一方でSNSでは東京都港区議会議員の新藤加菜氏が「参政党支持者で高学歴の方って、いらっしゃるのでしょうか?少なくとも私の見ている範囲では見かけたことがありません」などという失礼な意見もあった。精緻な選挙分析で知られる経済アナリストの佐藤健太氏が参政党の「正体」を探るーー。

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「朝日の記者からも撤回しないのか?と詰められましたが」

「今、朝日の記者からも撤回しないのか?と詰められましたが、女性には適齢期があるから歳を重ねていけば出産ができなくなるのは生物として当然のこと。だから適齢期に出産できる社会環境を政治の力でつくろうと言ったことを叩く意味がわかりません。『日本人ファースト』や憲法に対する批判も批判のための批判であり、建設的な問題提起にはなっていない。こうやって印象操作をして政治家を貶めてきたんですね。さてそのやり方がいつまで通用するか」。参院選が告示された7月3日、参政党の神谷宗幣代表は「X」(旧ツイッター)にこのように記した。

 神谷代表はこの日、都内での演説で「高齢の女性は子どもが産めない」などと述べ、すぐに毎日新聞やその他のメディアが発言を疑問視する形で報じた。実際、この発言に対しては各地で抗議デモが行われている。神谷代表が投稿したように、この種の発言がメディアで滝のように報じられれば、通常ならば同党の勢いは急激に失われる。発言者が閣僚や党幹部ならば大炎上し、辞任が不可避となることも珍しくない。

 加えて、参政党や神谷代表の憲法観に対する批判や参院選で掲げる「日本人ファースト」なども分断や排除を招くといった声も向けられている。だが、7月3日の日本テレビ「news zero」に出演した神谷代表は「もちろん、外国人の人権はある。我々はそれを無視して良いとか追い出そうとかという主義ではない。ただ、他党があまりにも外国人の人権とかに配慮しすぎて、取り締まりが甘くなっていたり、財布の紐が緩んでいるのではないかというところに国民が不満を持っているのではないかと思った。だから、不満の受け皿として参政党が働きますよと訴えるために批判を恐れずに『日本人ファースト』」と存在意義を語る。

支持率が急上昇を始めたターニングポイント

 興味深いのは、参政党の支持率が「ある時期」を境に上昇した点だ。7月12日に日経新聞電子版が配信した分析記事を見れば、参政党の支持率は昨年10月から徐々に上向いてきたことがわかる。それは国民民主党も同様の傾向があり、両党は昨年10月1日に発足した石破茂内閣に対する批判票や若年層、そして行き場のない無党派層の「受け皿」になってきた。それが「改革中道」路線の国民民主、保守層を中心に吸収する参政党に分かれてきたと言える。

 ただ、所属議員や公認問題を巡るゴタゴタが生じた国民民主党が今年4月以降に支持率を下降させてきたのに対し、それを「吸収」するかのように参政党は上昇してきた。5月には日経新聞の調査で支持率が前月比4ポイント増の7%に伸長している。40代に限れば15%と国民民主党を抜いて自民党に次ぐ「第2党」になった。そして、6月の都議選では3人が当選している。

 共同通信社が7月5、6日実施した世論調査を見ると、比例代表の投票先はトップが自民党の18.2%であるものの、参政党は6月末の前回調査から2.3ポイント上昇し、8.1%と2位になった。国民民主党は6.8%、立憲民主党は6.6%で、少数政党に過ぎない参政党の勢いに各党は警戒した。

 では、参政党は一体いかなる政党なのか。そして、神谷代表とはどのような人物なのか。その「正体」を探っていきたい。

29歳の神谷氏が語った野望

 神谷代表は1977年に福井県の生まれ。県立高校を卒業後は関西大学文学部、そして関西大学法科大学院に進んだ。公式サイトのプロフィールを見ると、「20代は高校で『英語と世界史』を教え、実家の食品スーパーの倒産を経験することで、教育の課題と地方経済の疲弊を実感する」と記されている。そして、「政治からのアプローチで『日本の若者の意識を変える』ことを目指し、2007年に29歳で吹田市議会議員に初当選」とある。


 市議としては2期6年、吹田市議会副議長も経た後、2012年の衆院選では自民党公認候補として立候補したが、落選した。ネット上には当時の自民党総裁である安倍晋三元首相や石破茂幹事長(現首相)との画像があふれる。2015年には無所属で大阪府議会議員選挙にも立候補しているが、これも落選という結果だった。そこから2020年の参政党結党(神谷氏は事務局長就任)につながる。

「陰謀論、オーガニック、反ワクなどのコアな支持者を取り込んでいく」

 神谷氏は参政党を元日本共産党国会議員秘書やYouTuberらと立ち上げたというのだから興味深い。設立に関与した1人である早稲田大学招聘研究員にして国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は7月12日配信された「みんかぶマガジン」の寄稿記事で、参政党の組織運営を踏まえた上で政策の特徴について以下のように説明している。

「神谷氏自身も党員の空気から逃れることは難しい。というか、むしろ組織拡大を目指す神谷氏は集まった党員の空気を代弁する必要がある。そのため、十分に現実的な精査がされることなく、政策がアウトプットされているのが実態ではないかと推測される」

「その政党構造の宿命として、新たに組織拡大のマーケティング対象として集めた党員層にウケる政策を言い続ける必要がある。参政党が陰謀論、オーガニック、反ワクなどのコアな支持者を取り込んでいく際に、その新規党員層の声を反映した主張を繰り返してきた。しかし、時が経って、党員の主流が変われば過去の発言は不問かor無かったことになる。なぜなら、同党にとって説明責任を負う相手は、世間ではなく党員、なのでそれで問題になることはほぼない」

「政策は党員の願望を並べたものに過ぎない」

「結党当初は『一円の増税も許さない』というスローガンがあったが、2022年の参議院議員選挙前にその政策的な歯止めが外れた。その時点で同党の政策は財政支出のタガが外れて、財政制約を考えることなく、党員が望むどのような政策でも同時に並べられるようになった。その結果として、およそ非現実な財政支出、国有化、その他の政策が並べられることに抵抗が無くなったと思う。しかし、これは党員の願望を並べたものに過ぎないので、本に実装可能な政策論争の対象として扱うことは困難だろう」

 渡瀬氏は「党運営と党体制、資金集めは褒めて、政策面は褒めないというスタンス」であるという。党設立後、神谷氏と政策の折り合いがつかず、渡瀬氏を含む創設メンバーは相次いで離党している。結党時は世の中の仕組みやあり方を伝えながら、国民の政治参加を促したいとスタートしたものの、ネット上には参政党に関して「神谷氏の独裁」「政治ビジネス」といった批判もつきまとう。

8万人弱に上るという党員は「30~50代が中心」(神谷氏)

 参政党は6月、日本維新の会を離党した梅村みずほ氏が加入したことで所属議員が5人となり、日本記者クラブやテレビ番組の党首討論に神谷代表が出演する資格が得られた。梅村氏は6月30日の記者会見で入党に関し「(参政党は)『カルト』『マルチ』『陰謀政党』などと言われており、その点が気にならなかったわけではない」「神谷さんが独裁などと言われている」とも語っている。 

 だが、神谷氏は「独裁」批判について、先に触れた日本テレビ番組で「私もいつまでも独参、独裁といわれるのも気持ちが良いものではない」と説明。8万人弱に上るという党員は「30~50代が中心」(神谷氏)といい、SNSで参政党を知った人も多い。神谷代表は番組で党員との関係性に触れつつ、「参政党の党員はネットでなれて、ネットで辞められるので私の発言や運営が気に食わなかったら、みんなが辞めていく。辞められると運営費がなくなるので党の経営がままならなくなる」「かなり民主的にガラス張りにしている」という。

 これまでの参政党については「3年前の選挙が終わった後に全国に289の選挙区があるから、そこに支部をつくり、役員を決めてねと。そうなると問題を起こす人というのは組織の中で外れていく。中で宗教の勧誘したり、あまりにも思想が右に寄りすぎたり左に寄りすぎたりするとか。ネットの中の情報だけで根拠のない陰謀論とかを声高に叫ぶ人とか、そういう人たちもいた」と明かしている。

神谷氏が結党に向けて転機となった「龍馬プロジェクト」

 筆者は、政党を立ち上げた中心人物が「独裁」批判にさらされるのはある意味で当然のように思える。実際、組織を立ち上げる時は最も速く、最も行動した人物が中核となり、時に「手弁当」「無私」で運営していかざるを得ないからだ。それは政党であれ、企業であれ同じであろう。投票したい政党がないから、自分たちでゼロから創ろうという党員参加型の「手作り政党」ならば、なおさらと言える。

 神谷氏が結党に向けて転機となったのは、2010年6月に設立された政治団体「龍馬プロジェクト」だろう。結成当初は地方議員が中心で、神谷氏は全国会の会長に就任した(現在は国会議員参与)。

神谷氏が「師」とする人物がいる。それは…

 龍馬プロジェクトが掲げる日本再興のためのビジョン「国是十則」には、「先人が守り続けてきた皇室を中心に、国民は家族を軸に結束して、大きな祈りの力をおって世界の発展に寄与する」「日本の歴史・伝統・文化に根付いた新しい憲法を、独立した国家として制定する」といった今に通じる言葉が並ぶ。

 神谷氏が「師」とする人物がいる。それは、東洋日本思想家の林英臣氏だ。パナソニックの創業者・松下幸之助氏が未来のリーダー育成を目指して設立した公益財団法人「松下政経塾」の1期生で、同期には立憲民主党の野田佳彦代表や静岡県の鈴木康友知事らがいる。国会議員の中でも知る人は少なくない。この林氏が塾長を務める一般社団法人「林英臣政経塾」には、神谷代表も参加していた。

 2012年4月13日の神谷氏のブログには、京都・本能寺ホテルで開催された際の状況が記されている。政経塾3期生の神谷氏は「そこらの政治家養成塾は、一過性のブームであり、お勉強にはなっても本当の政治家はそう簡単には育ちません」とした上で、「林先生は、いつもおっしゃります。寝食を共にし、信頼関係を築きあげ、団結して政治を行いなさい、と。」「龍馬プロジェクトをやるのもそうして共に学び、共に働く 思いある政治家を集めるためです。それをやらないと今のどうしようもない日本の政治をなんともできないとわかったからです」とつなげている。

「本気で政治をやろうと、心が決まりました!」

 また、2012年8月9日のブログでは「五年前、林英臣先生に出会って本気で政治をやろうと、心が決まりました!」とも記している。何を言いたいのか分かった方は聡明だろう。そう、2010年に設立した龍馬プロジェクトは、林氏の政治塾メンバーの5人で始めたものなのだ。林氏の政経塾メンバーが龍馬プロジェクトをつくり、そして参政党が結党される。龍馬プロジェクトのメンバーの一部は参政党のスタッフにも就いている。

 今年4月のYouTube番組で神谷代表は林氏と対談し「『参政党が神谷に乗っ取られた』と書いているものがあって、いやいや参政党をつくろうと言い出したのは私だから、乗っ取るも何も『最初から私がやっていますよ』という話」と説明した。

「基本的に部下や仲間からの意見に耳を貸さない」

 その上で「参政党をつくったのは2020年だが、その10年前に龍馬プロジェクトつくって、そのきっかけが林先生の塾」と述べている。参政党の「源流」は、神谷代表と林氏の出逢いにあるということなのだ。

 参政党から距離を置いた設立メンバーの中には「本来であれば1人で立ち上げたいところだが、当時は知名度が低かったためYouTuberらと一旗あげようと考えたのが実情だろう」と当時の神谷氏を振り返る。そして、神谷氏がつくりあげる舞台の「演者」は彼らパートナーであるものの、「主演・脚本・監督はすべて神谷氏」が担っていたという。

 神谷氏からすれば「『最初から私がやっていますよ』という話」なのだろうが、行動力にあふれて熱量も異なる神谷氏の言動は時にハレーションを生んだに違いない。「基本的に部下や仲間からの意見に耳を貸さない」と設立メンバーの1人は明かす。政策の方向性に加えて、勢力拡大に向けた熱量や行動力の違いが離脱者を招いたのだという。事務局長としての強大な権限が「独裁的」と映り、“排除”されたと思うメンバーもいる。そうした面々からすれば、「神谷ファースト」「神谷商法」にはついて行けないと感じたのだろう。

参政党の検索数は5月中旬から徐々に増え始め…

 だが、神谷代表は日本テレビ番組のインタビューで「国政政党になったわけだから、マネジメントとルール決めをしないといけないからルールを徹底し、ガイドラインで通達を出していった。事務局長の指示ですと通達していった。辞めさせられた人からすると神谷が俺を辞めさせたんだと。そういう人たちからすると私は独裁者」と説明している。先に触れたように、それは組織を始める、あるいは拡大していく際に生じることが多い摩擦であるように見えるが、これまでの参政党と今後を見ていく上では大変興味深いところだ。

 産経新聞WEB版が7月12日に配信した分析記事によれば、4月11~7月11日までの13週間にYouTubeで検索数が最も多かったのは参政党であることがわかる。米Googleの分析ツール「Googleトレンド」を用いた分析で、「参政党の検索数は5月中旬から徐々に増え始め、6月12日以降は、ネット上で支持が厚いとされる国民民主党や日本保守党を抑えて首位に立った」という。それも全ての都道府県で検索数が最も多かったというのだから驚くほかない。

参政党はキャスティングボードを握れるか

 これは「一過性のブーム」なのか、それとも―。神谷代表が「師」とする林氏は参院選が告示された7月3日、自身のブログに「天下が大きく揺れるとき、変革は外部から起こります。既成勢力と関わりの薄い、新興勢力が台頭して、世の中が変わるのです。そして、古い時代が終わります。まさに現下の日本がそれですが、とはいえ、既成勢力の中にいる大事な政治家には、しっかり生き残ってもらいたい!7月20日(日)投開票の参院選で、日本政界は大きく動くでしょう」と記している。

 あらためて触れると、松下政経塾1期生だった林氏の同期には立憲民主党の野田代表、自民党の逢沢一郎衆院議員らがいる。はたして、参政党はキャスティングボードを握るところまで躍進することができるのか。そして、神谷氏との対談動画で「(参政党の)黒黒幕」と笑顔を浮かべた林氏のネットワークや思想などが活きる可能性はあるのか。いよいよ、20年あまりの神谷氏の行動に「答え」が出る。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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