誰もあなたの文章なんて読みたくない…Webメディアの“アテンション・ハッカー”が語る「衝動読みが支配する現代」コンビニ客の7割の驚くべき行動

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 スマホを持っていると日々接するウェブメディアだが、そのウェブメディアの裏で「バズる記事」を設計している人間がいることをご存じだろうか。「アテンション・ハッカー」。編集者の鈴木俊之氏はまさしくそれを生業としている。鈴木氏は現代を「衝動読みが支配する時代」と指摘する。その上で、誰もがクリエイターになる時代において、ネットに溢れるほとんどのテキストコンテンツがゴミと化しているとも話す。衝動読みとはなんなのか、なぜあなたの文章など誰も読みたくないのか。鈴木氏がウェブメディアの裏側や、バズを生み出す仕組みをぶっちゃける――。

*本稿は鈴木俊之著『タイトルから考えよう』(星海社新書)の一部を抜粋し、再構成したものです。

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目次

「衝動読み」が支配する現代

 質問です。あなたは朝起きて「今日はネットニュースを10本読もう!」と計画することはありますか? おそらく、ほとんどの人が「ない」と答えるのではないでしょうか。しかし、夕方には気づけば10本以上のネットニュースを読んでいた、という経験はありませんか? これはまさに、「衝動買い」ならぬ「衝動読み」と呼ばれる現象です。私の仕事は、この「衝動読み」を促すことと言っても過言ではありません。あなたは、特に意識することなく、〝脳死状態〟で次々とコンテンツをクリックし、時間を費やしているのです。

 この「衝動読み」は、現代社会の情報消費行動を象徴しています。まるでコンビニでの買い物のように、店に入る前は何も決めていなかったのに、気づけばカゴいっぱいに商品が入っている。この現象を裏付けるデータがあります。東京大学とローソン、SBクリエイティブが行った共同調査では、コンビニエンスストアの売上全体のおよそ70%が非計画購買(衝動的購買)によって占められているというのです。多くの人は、特定の目的を持ってコンビニに来店するのではなく、店内で商品を一巡してから購買を決める、つまり「衝動買い」が非常に高い割合を占めているのです。たしかに、昼時にコンビニに入る前に、「よし、シーチキンおにぎりと飲むヨーグルトと、唐揚げを買おう」なんて考えたことはありません。人間の行動は思った以上に衝動に左右されているのです。

 その点で、コンビニは「メディア」であると定義することができるでしょう。

コンビニはなぜメディアなのか

 文字メディアが、読者や視聴者の注意を引き、情報を伝え、行動を促す場であるならば、コンビニエンスストアもまた、棚に並んだ商品やPOP、店内の音楽、匂いといった五感に訴えかけるあらゆる要素を通じて、消費者の購買意欲を刺激し、何を買うか具体的に決めていなかった消費者を最終的な購買行動へと導く「メディア」として機能している、と言えるのです。

 来店客は、意識的に情報を摂取しようとしているわけではないのに、店舗という「メディア」が発信する情報に無意識に影響され、購買という行動を起こしてしまう。これは、私たちがネットニュースやSNSのタイムラインでコンテンツを消費するのと非常に似た構造と言えます。

 さて皆さんは雑誌『裏モノJAPAN』をご存じでしょうか。新卒でこの雑誌の編集部に入った私にとって、『裏モノJAPAN』はキャリアの原点です。

『裏モノJAPAN』は売春を取材したり、怪しい噂話を実際に試してみるなど、一見すると過激なテーマを扱う俗悪なアダルト雑誌に見えるかもしれませんが、単なる好奇心を満たす雑誌ではありません。その真骨頂は、人間の深奥に潜む本質を鋭く抉り出すジャーナリズムにあります。社会のタブーや暗部に光を当て、見過ごされがちな事象に真摯に向き合う姿勢は、読者に単なる刺激以上の深い洞察を与えていると私は信じています。

脳はできるだけ思考エネルギーを使いたくない

 性や欲望といった根源的なテーマを恐れず探求するその姿勢は、既存の枠組みを超えた知的な冒険であり、読むたびに読者の価値観を揺さぶる力を持っています。それを裏付けるように、読者の熱量は凄まじく、刑務所から本の注文が入るほどです。

 その中でも人気な企画の一つがナンパ企画です。この企画では当初「予定がある」と言っていた女性が、その後結局何時間も付き合ってくれることもありました。当時20代半ばの私も、何度もナンパに挑戦しました。そんなナンパ企画で培ってきた経験から言えるのは、人間は思った以上に計画的に行動していない、ということです。前述したように、意思決定のほとんどは、衝動によって行われています。これはコンテンツ消費においても同様です。誰も「文章を読もう」と思って情報に触れているわけではないのです。

 むしろ、脳はできるだけ思考エネルギーを使いたくないと常に考えています。

誰も文章なんて読みたくない

 だからこそ、人は無意識のうちに「楽に情報を得られるもの」「面白そうなもの」「自分にとって得になりそうなもの」に引き寄せられます。そして、その判断のほとんどは、コンテンツの中身に入る前に、その「タイトル」や「見出し」によって下されているのです。ちょうどコンビニの棚に並んだ商品が、そのパッケージやキャッチコピーによって消費者の衝動を刺激するように、これはデジタルコンテンツの世界でも同様に働いていると言えるでしょう。

 多くのライター、特に「作家志向」のライターは、「読者に文章を読んでもらう」という前提でコンテンツを作ります。しかし、これは根本的な間違いです。なぜなら、人間は誰も文章なんて読みたくないからです。

 作家志向のライターが書く文章は、往々にして自己満足に陥り、読者の視点を見失いがちです。彼らが自己満足に陥りやすいのは、自身の表現欲求や知識欲が先行してしまうからです。彼らは「書きたいこと」を書き、自分の知識や技術を披露することに喜びを感じます。美しい比喩表現、複雑な修飾語、文学的な言い回し……。まるで文芸作品を書くかのように、文章そのものの完成度や芸術性を追求するのです。確かに彼らの文章は深みや豊かさがあるのかもしれません。しかし、インターネットの海に溢れる情報の中で、多くの読者はそこまでを求めていないのです。

「読まれない文章」を量産してしまう人

 ウェブコンテンツやビジネス文書、あるいはSNSの投稿において読者が求めているのは、「何が書いてあるか」よりも「自分にとって役に立つこと」「感情的に、衝動的に読みたくなるもの」という即時的な価値でしかありません。これに対して、作家志向のライターは、読者が文章を読むこと自体を楽しんでくれると期待し、時には読者の知識レベルや関心度を過大評価してしまいます。結果として、専門用語を多用したり、前置きが長すぎたり、論点が曖昧になったりして、肝心なメッセージが伝わらない「読まれない文章」を量産してしまうのです。これだと、自分は良い文章を書いたつもりでも、読者にとっては退屈で、途中で読むのをやめてしまうようなものになりかねません。彼らは「読んでもらえる」と思い込んでいるからこそ、つまらない文章を量産してしまうのです。

 一方で、ヒットメーカーと呼ばれるライターや編集者たちは、この現実を理解しています。

だからタイトルに全力を注ぐ

 彼らは、読者が「文章を読む」という行為自体を避けたいと思っていることを知っています。なぜなら、文章を読むという行為は、少なからず脳に負荷をかける「カロリーの高い」作業だからです。現代人は、日々膨大な情報に晒されており、そのすべてをじっくり読む時間もエネルギーも持ち合わせていません。だからこそ、コンテンツの中身よりも、いかに読者の衝動を刺激し、クリックさせ、そして読ませるかを考え、そのための「タイトル」に全力を注ぐのです。

 これは私の経験値による話でもありますが、明確な裏付けがあります。例えばマックマスター大学のノア・フォーリン氏らによる研究「Longer sections of text increase rates of unintentional mind-wandering」(2020)は、学術的な文章のような長文を読んでいる際に、読者の「心のさまよい(mind-wandering)」が増加することを明らかにしています。つまり、集中力を持続させながら長文を読むことは人々にとって難しい作業なのです。

 これはスマホでデジタルコンテンツに毎日触れる近年はより顕著なものになっています。アメリカン大学の言語学者ナオミ・バロン氏らによる「Doing the Reading: The Decline of Long Long-Form Reading in Higher Education」(2021)によると、高等教育における長文読解力の低下とデジタルメディア利用の相関関係を調べた結果、デジタル環境は長文をじっくり読む習慣を失わせているそうです。

ほとんどの人が、コンテンツの中身を読んでない

 私たちは、朝から晩まで無意識に多くのコンテンツに触れていますが、その中で実際に最後まで読み切るものはどれほどあるかご存じでしょうか? ネットニュースの読了率、LP(ランディングページ。広告や検索などを経由して流入したユーザーに製品購入や資料請求などのアクションを起こしてもらうことを目的としたウェブページのこと)や通販サイトの購入率、いずれも驚くほど低いのです。つまり、ほとんどの人が、コンテンツの中身をほぼ読んでいないのです。

 LPや通販サイトの商品説明ページにおいても、その読了率は決して高くありません。当然、LPの目的は、訪問者に特定のコンバージョン(商品の購入、資料請求、問い合わせなど)を促すことにあります。

情報発信の一流と二流の違いとは

 しかし、LPの一般的なコンバージョン率(目標達成率)は2~3%程度とされています。おそらく、想像以上に低いと思ったのではないでしょうか。裏を返せば、97~98%もの訪問者は、LPの内容を最後まで読まずに、あるいは読んだとしてもコンバージョンせずに離脱していることになります。

 これはECサイトの商品説明ページも同様で、多くのユーザーは商品画像、価格、レビューをざっと確認する程度で、詳細な説明文を隅々まで読み込むことは稀です。ユーザーは「必要な情報だけを効率的に探し、それが見つからなければ、すぐに別のサイトへ移る」という行動パターンが定着しているのです。

 情報そのものを丹念に集めてどう料理するか、というのは二流の仕事です。一流は、その情報を手にする前に、読者の衝動を刺激し、確実にクリックを誘う「ヒットするタイトル」を考えることに時間を費やします。なぜなら、どんなに優れたコンテンツも、読者の手に取られなければ、その価値を伝えることはできないからです。

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