投資歴30年のベテラン投資家が教える「インフレ時代」に再評価すべき本物の投資価値

長年のデフレが染み付いた日本人の投資感覚は、今まさに根本から問い直されています。
今回は、投資歴30年のベテラン投資家・名古屋の長期投資家こと、なごちょうさんに、製造装置や素材という「喉元」を握り続ける日本企業の底力を語っていただきました。インタビュー連載全3回の第2回。
目次
「リアルな経済」を知るために見るものは?
ーー世界情勢が目まぐるしく変化し、不確実性が高まる現在の相場において、特に注視している経済指標はありますか?
マメにチェックしているのは、商品市況のリアルな値動きです。ゴールド、シルバー、そして原油の動向ですね。これらは地政学リスクや通貨価値の変動を最も敏感に反映する指標だと感じています。
もう一つ、マクロの統計よりも遥かに頼りになるのが、企業の業績データです。たとえば米小売最大手のウォルマートの決算数値などを追いかけた方が、机の上の経済学者が弾き出したマクロ指標よりも、はるかにリアルな消費者の肌感覚、実体経済を掴めると思っています。
デフレ脳からの脱却
ーー実体経済といえば、日本の長きにわたるデフレが終わり、本格的なインフレが到来しました。この環境下での投資は、やはりこれまでとは全く異なる頭の切り替えが必要なのでしょうか?
ここまで明確なインフレを経験するのは、私自身の投資人生の中でも初めてのことです。
アベノミクス相場でも多少の物価上昇はありましたが、国民の誰もが露骨にインフレが進んでいると体感するようになったのは、消費税が10パーセントに引き上げられたあたりからでしょう。
ここで個人投資家が絶対に脱却しなければならないのが、長年の染み付きから抜け出せないデフレ脳で、デフレ時代は銀行預金に現金をそのまま寝かせておく貯金こそが最も賢く、最も堅実で安全な運用先でした。
金利がゼロであっても、土地や株、あらゆる物の価値が下がっていくわけですから、何もせずにじっと持っているだけで現金の価値が勝手に上がっていったからです。まさに現金最強の時代でした。(2012年まで)
しかし、現在のインフレ下では、この黄金ルールが逆転します。インフレの世界では、給与も、土地も、株も、あらゆる実物資産の値段が上がっていく一方で、現金は持っているだけで毎日その価値が目減りしていくのです。
現在の70代以上の世代であれば、高度経済成長期(1955年頃から1973年)や1970年代のオイルショック期の猛烈な物価高騰を記憶しているかもしれません。ところが、1979年の第二次オイルショック以降の日本は、緩やかなインフレの後にバブル崩壊を経験し、そこから約20年デフレでした。本格的なインフレは約半世紀ぶりなので、インフレの感覚は覚えていないでしょう。
だからこそ、これからは形のないブームに浮ついて飛びついて大損するようなリスクを避けつつ、企業価値から見て割安な銘柄へ投資を行っていくことが大切だと思います。(一部の短期売買が上手い人は除きますが)
大損リスクを回避する方法
ーー現在の相場は生成AIをはじめとする様々なテーマで株価が急騰していますが、中身のないマネーゲームに巻き込まれて大損するリスクを避けるにはどうすれば良いでしょうか。
ひと口にテーマ株と言っても、本当に受注や売上の伸びといった将来性の裏付けがある会社と、実態がないのに言葉の響きや会社が出した大風呂敷で買われている会社に二分されます。特に、最近人気の生成AIやドローン関連のなかには、事業計画書にキーワードが並んでいるだけで、実際の利益貢献は何年も先、あるいは永遠に実現しなさそうな銘柄も散見されるため、警戒が必要です。
ーーどうやってブームの罠を見抜くのですか?
例を挙げるとするとスカパーJSATが分かりやすいと思います。同社は、今でこそ「宇宙・防衛テーマの本命株」として市場の脚光を浴びていますが、私が買い始めた2018年当時は全く正反対の評価をされていました。
当時はNetflixなどの動画サブスクサービスが台頭し「スカパーのような有料テレビビジネスは衰退する」という悲観論が支配的だったのです。しかし、何気なくマネー雑誌を読んでいたら、テレビ事業よりも宇宙事業の方が利益が出ているという記事を見て、決算書を深掘りするうちに市場の決定的な勘違いに気づきました。世間はテレビ会社だと思って叩き売っていましたが、実態は自前の通信衛星をいくつも所有し、そこから莫大なキャッシュを安定して稼ぎ出す日本最大の宇宙インフラ企業だったのです。
当時のバリュエーションは、BPS(1株あたり純資産)が709円もあるのに、市場で放置されていて、株価はわずか475円。PBR(株価純資産倍率)に換算すると驚異の0.6倍程度と、理不尽に安く放置されていました。さらに配当利回りも3.78パーセントと高水準だったため、「これは絶好の投資機会だ」と確信して買い付けたのです。