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「台湾を売る」米中ディールは起こるのか――峯村健司氏が警告する「9月24日」までに日本が打つべき手

「台湾を売る」米中ディールは起こるのか――峯村健司氏が警告する「9月24日」までに日本が打つべき手
(c) AdobeStock

 中国・北京で5月中旬、米中首脳会談が行われた。ジャーナリストでキヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏は、台湾有事をめぐり、中国側がアメリカ側に攻勢をかけていると警鐘を鳴らす。今後、アメリカ側はどう動くのか。Xデーが来る前に、日本が打つべき手とは。全2回の第2回。

 みんかぶプレミアム特集「中国崩壊か 習近平の黄昏」

目次

中国がアメリカを牽制

 5月14〜15日、北京で米中首脳会談が行われました。この会談で米国側が求めたのは、あくまで経済分野での成果でした。私は首脳会談の前にワシントンを訪れ、トランプ政権の関係者に話を聞きましたが、そのほとんどが「台湾問題は議題に上がらない」と話していました。

 なぜなら、台湾の話をしても、トランプ政権にとって得るものがないからです。トランプ大統領が欲しいのは、農産物や航空機の購入といった、目に見える成果です。

 一方、中国側が本当に欲していたのは、台湾問題での成果でした。会談後、トランプ氏は「台湾問題を扱ったか」という質問に応じませんでしたが、中国側は、習近平国家主席が「台湾問題は中米関係で最も重要な問題であり、処理を誤れば両国は衝突、さらには紛争に向かい、中米関係全体を危険な状況に追い込む」と述べたと発表しました。これは強い警告であり、事実上の牽制です。

 さらに習氏は、米中関係を「トゥキディデスの罠」に重ねました。トゥキディデスの罠とは、米政治学者グレアム・アリソンが広めた理論で、覇権国と新興大国の間で恐怖や猜疑心が高まり、戦争へ引き込まれてしまう危険を指します。

 要するに中国は、「いま米中は戦争に突入しかねない。その火種は台湾だ」というメッセージを発したのです。そして米国に対し、「台湾問題への関与を抑えよ」と迫ったのです。

 中国としては、「米軍さえ出てこなければ、台湾を屈服させられる」と見ています。私としては、実際にはそれほど甘くないと思っていますが、少なくとも中国側はそう考えている。だからこそ、米国の介入意思を削ぎに来ているのです。

トランプ氏は中国のナラティブに乗った

 トランプ氏には、相手の説明を率直に受け止める面があります。今回の会談でも、トランプ氏は習氏の「罠」に引っかかってしまったように見えます。

 それがわかるのが、5月15日に放送されたFOXニュースのインタビューです。トランプ氏はここで、中国側の論理に近い言葉を発しています。

 たとえば台湾について、トランプ氏は「米国の政策に変更はない」としながらも、「誰かが独立しようとすることは望んでいない」「米国が支えるから独立しよう、という動きは望まない」という趣旨の発言をしています。

 台湾の頼清徳政権は、「台湾はすでに主権国家であり、現状維持を守る」という立場です。少なくとも、「新たな独立宣言によって現状を変える」という路線ではありません。ところがトランプ氏の言い方は、まるで台湾側に「独立に踏み出す勢力」がいて、それを米国が背後で支えているかのように聞こえる。これは中国のナラティブにかなり近いものです。

 また深刻なのが、台湾への武器売却をめぐる発言です。トランプ氏は、台湾向けの武器売却について「判断を保留している。中国次第だ」「われわれにとって非常に良い交渉カードだ」と述べました。これは極めて危険な発言です。

 台湾への武器売却は、台湾関係法の下で、米国が台湾の自衛能力を維持するために行ってきたものです。本来、中国との取引材料にすべきものではありません。1982年の「6つの保証」では、米国は台湾への武器売却について中国と事前協議しないという立場を示しており、今回の発言は少なくとも、これまでの米国政策の解釈と大きな緊張関係にあります。

 にもかかわらず、トランプ氏は台湾への武器売却を、あたかも中国とのディールの材料であるかのように語った。これは、中国側に有利な前例を与えかねない発言です。

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この記事の著者
峯村健司

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。1974年、長野県生まれ。朝日新聞入社後、北京・ワシントンで計9年間特派員を務める。ハーバード大フェアバンクセンター中国研究所客員研究員、朝日新聞編集委員を経て現職。2011年、優れた報道で国際理解に貢献したジャーナリストに贈られるボーン・上田賞を受賞。著書に『十三億分の一の男』(小学館)、『潜入中国』(朝日新聞)など、監訳書に『中国「軍事強国」への夢』(劉明福著、文春新書)がある。

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