高すぎるウニ丼・並盛1780円也を再投入「なか卯は一体何を考えているのか」元経済誌編集長が企業戦略を読む

チェーン店で普段目にする定番メニューのなかに、突如として現れる高額な限定商品。料理自体の質や相場はともかく、それを食べる「店舗空間」とのギャップに違和感を覚える人は少なくないはずだ。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、実店舗での体験を出発点に、ゼンショーホールディングスの有価証券報告書から「すき家」との設備投資格差や、高価格帯商品が浮き彫りにした“店舗老朽化”の構造課題を読み解く。
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親子丼450円の店で「1,780円」…なか卯のウニ丼に見る外食価格戦略
先日、東京・亀戸の「なか卯」に入った。料理より先にまず目についたのは店のテーブルの狭さだった。よく行く同じゼンショーグループの「すき家」両国店は明るく整っている。「なか卯」亀戸店の内装は雑然としていて、少し古い印象を持った。
店内でさらに驚いたのが、並盛1,780円の「ウニ丼」だ。ごはん大盛は1,880円、小盛でも980円。親子丼並盛450円の店で、突然4倍近い値札が現れる。この落差は大きい。海鮮料理の専門店で見る1,780円と、なか卯の券売機で見る1,780円は、同じ金額でも重さが違う。

ウニ自体が安いわけではない。スーパーの鮮魚売場でウニの値札を見れば、1,780円が暴利だとも思わない。同じような丼を家で作っても、それなりの金額になる。なか卯の店内では、はっきり高く感じる。比べている相手が海鮮専門店ではなく、450円の親子丼だからだ。客は原料の相場を調べてから店に入らない。店内でいつも見ている商品が、値段の基準になる。
「月2回の客にもう1回来てもらう」限定ウニ丼を“強い呼び水”にするリピート戦略
なか卯は2025年に売ったウニ丼を、2026年9月に同じ1,780円で再投入した。全国446店で扱い、ミョウバン不使用のウニを国産米に盛る。米酢を利かせたたれとのりを合わせ、海鮮丼として組み立てた商品だ。公式発表では「昨年もご好評をいただいた」と説明する。値下げも増量もない。前年に手応えを得た価格を、そのまま通した。

価格表を見ると狙いが分かる。親子丼は450円、はいからうどんは350円である。2026年3月の価格改定ではカツ丼やカレー、うどんの一部を値上げしたが、親子丼は450円に据え置いた。その上にウニ、いくら、うなぎ、本まぐろなどの季節商品を載せる。普段使いの値段を守りながら、来店のきっかけになる高額商品を加える形だ。980円の小盛と1,480円のウニまぐろ丼も置き、支払える額に合わせて選ばせている。全員に1,780円を求めず、興味を持った客を3つの価格で受け止める。
なか卯の商品戦略部は採用サイトで、定番を守るのと同じくらい季節商品が大切だと説明している。月に2回来る客に「もう一度」来てもらう商品を考えるという。ウニは写真を見ただけで違いが伝わり、発売のニュースにもなる。販売期間を限れば、次回ではなく今日食べる理由も生まれる。ウニ丼は、そのための強い呼び水である。
うな重から始まった「マグネット商品」 高額季節商品で客層を広げてきた実績
なか卯は高額商品を長く試してきた。2017年9月14日配信の「マイナビニュース」で、当時の取締役は、うな重、ローストビーフ重、リブステーキ重、黒毛和牛重などを客を引きつける「マグネット」と呼んだ。投入後は20代と60代以上の客が増え、売上にも貢献したという。対象は当時の商品で、ウニ丼より安い価格帯だった。高い季節商品で客層を広げる考え方は共通する。
2025年のウニ丼は発売直後からSNSで話題となり、一時売り切れの店も出た。2025年 9月 24 日配信の「食品産業新聞社ニュースWEB」に対し、ゼンショー広報は「想定を上回る反響」と答えている。調達、加工、物流、販売を自社でつなぐ仕組みが、ミョウバン不使用のウニを全国へ運んだ。売れた本数は公表されていない。会社が翌年も同じ並盛価格で出した事実が、商品への評価を示している。

ここまでなら1,780円には筋が通る。引っかかるのは、丼を食べる場所との組み合わせだ。450円の食事では気にしなかった店の古さが、1,780円を払う場面では値段の一部になる。料理だけでなく、座って食べる時間全体に金を払うからである。明るく整った店なら、チェーン店の調達力を生かしたお得な海鮮丼に見える。古びた店では、同じ丼が場違いな高額商品に見える。亀戸店では、商品が求める価格と店の印象がかみ合っていなかった。