相続で家族を壊さないために 相続専門税理士が勧める、親が元気なうちに作る「紙1枚」
「相続の話はデリケートだから、家族での話し合いが難しい」——そう悩んでいるうちに、時間だけが過ぎていく人は多い。
だが、税理士・桑田悠子氏は、相続をきっかけに壊れてしまった家族関係を数多く見てきた。そして、一度壊れた関係を修復するのは本当に難しいと語る。だからこそ勧めるのが、遺言よりもずっと手前にある、「紙1枚」の財産一覧づくりだ。
親にどう切り出せばいいのか。SNSの情報を頼りにしてはいけないのはなぜか。相談する専門家はどう選べばいいのか。最終回は、親が元気なうちに家族でできることと、今日から始められる一歩を聞く。全3回の最終回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
金額はいらない、親が元気なうちに確かめたい財産の「場所」と”原野商法の土地”
親御さんが元気なうちに家族で確認しておくべきことは、まず財産が「どこに」あるかです。金額まで確認する必要はありません。どの金融機関に口座があるか、どこに不動産があるか、どの保険に加入しているか、金庫はあるか、借入金はあるか、ネット上の資産はあるか、そして関連書類をどこに保管しているか。分かる範囲でこれだけでも把握できていれば、残された家族の負担は大きく変わります。
なかでも見落としやすいのが、自宅以外の不動産です。先代から相続した畑や山林、いわゆる原野商法によって購入した土地などが見つかることがあります。原野商法とは「将来値上がりする」などと説明し、ほとんど価値のない土地を高値で売りつける商法のことです。
こうした土地は、現在では買い手がつかず、売却が難しいケースもあります。放っておくと、将来、子どもや孫が相続することになり、管理や処分が新たな負担になりかねません。そのため、財産の一覧には、自宅以外の不動産も含めて書き出しておくことが大切です。
実家をどうしたいか、親の気持ちの”背景”と相続の話の切り出し方
実家を将来どうしたいか——住み続けたいのか、売りたいのか、貸したいのか。親御さん自身の意向を確認しておくことも重要です。そして、誰に何を渡したいと考えているのか、その背景や気持ちも一緒に伝えておくことをおすすめします。
たとえば、子ども2人に財産を分ける場合、本来は半分ずつのところを、7対3や6対4の割合で相続させたいと考えることもあるでしょう。その場合は、「なぜその割合にしたいのか」という理由を、遺言に書くなり、生前の話し合いで共有するなりしておくことが大切です。「親がそう言っていたから」という納得感があれば、遺言がなかったとしても、子ども同士の話し合いがまとまりやすくなります。
親と一緒にエンディングノートを作るのも一つの方法です。相続や死後のお金の話から入るのではなく、「これからどう暮らしたい?」「万が一のとき、どうしてほしい?」というように、親の気持ちを尊重する聞き方から始めると切り出しやすくなります。
まずは相続の話をするきっかけが欲しいという方は、相続に関する記事や本、友人・知人の実例を会話のきっかけにするのもおすすめです。お正月やゴールデンウィーク、お盆など、家族が集まるタイミングを活用するのもいいでしょう。
兄弟姉妹がいる場合は、事前に話し合い、親御さんに一番話を切り出しやすい人から伝えてもらうのも一つの方法です。必ずしも自分から話す必要はありません。兄弟姉妹で足並みをそろえながら、無理のない形で話し合いを始めてほしいと思います。