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相次ぐ大物芸能人の訃報から考える「規格外のスター」という生き方ーー美談で片付けられない勝新太郎&中村玉緒夫妻のリアル、“おバカ”を演じきったガッツ石松のプロ意識

相次ぐ大物芸能人の訃報から考える「規格外のスター」という生き方ーー美談で片付けられない勝新太郎&中村玉緒夫妻のリアル、“おバカ”を演じきったガッツ石松のプロ意識

 6月は芸能界において大きな訃報が相次いだ。テレビメディアが流す一元的な美談を超えて当時の芸能史にまで議論が波及するなか、プロインタビュアー・吉田豪氏の語る思い出には独自の文脈がある。復刻本の出版やかつてのファンとしての交流を通じて、ギリギリのタイミングでその肉声に触れてきた同氏だからこそ知る濃密なエピソード。テレビ的な物語に回収されがちな勝新・玉緒夫妻の規格外の虚実と、晩年のガッツ石松氏が最後まで手放さなかった世界王者としての矜持に迫る。

 みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」

目次

テレビが流す「おしどり夫婦」という綺麗事への違和感

 陰謀論の人がよく「最近はあまりにも大物が死にすぎている。これはおかしい、何かある!」とか言ってるじゃないですか。あれって単純に自分が子供の頃はよく知らない老人が死んでいたのが、いまは自分を年令を重ねてよく知っている人が亡くなるようになったってだけの話だと思うんですけど、そういう意味でも今月は印象に残る人の訃報が多かったですね。

 この前、テレビのワイドショーを家で久しぶりに見てたら、亡くなった中村玉緒さんのニュースが流れてきて、勝新との関係について「おしどり夫婦として知られた2人。勝新は恋愛に関してはピュアな面もあった」なんてナレーションが流れてきて、思わず「なんだよ、それ!」と突っ込みました(笑)。今のテレビはコンプライアンス重視でとにかく無難な話に落ち着かせなきゃいけないのはわかるけど、勝新太郎と中村玉緒の関係は単純な「おしどり夫婦」でもないし、勝新は恋愛にピュアでもなかったのは、ちょっと調べたらわかるはずなんですよ。

 そもそも勝新さんは、愛人報道も何度もあったし夜遊びから借金から薬物から悪いことは大体やって玉緒さんをさんざん振り回し続けた人ですからね。勝新さんのお気に入りだった三浦綺音という女優のヘアヌード写真集を、自分で撮影して出版したことすらある。嫁の立場からすれば複雑極まりないはずなんですよ。ある男性俳優がプライベートでも勝新さんと密接に付き合いすぎて、その人に玉緒さんが嫉妬してたって話を聞いたこともあるぐらいなんです。さすがに玉緒さんが怒っても「……そう! その表情だ。演技に使えるから忘れるな」とか言い出して煙に巻く。それでも玉緒さんは最後まで離婚せず最後まで添い遂げたし、勝新さんが亡くなった後は天然っぽい可愛いベテランとしてテレビでもブレイクした。そのややこしい関係性を、単なる美談で片付けてほしくないなと思うんです。

甥のピンチに単身で現れる「勝新太郎」という完璧な配役

 ボクは以前、幻冬舎で山城新伍が若山富三郎・勝新太郎兄弟について書いた伝説の名著『おこりんぼさびしんぼ』を文庫化して、同時に文庫版『俺、勝新太郎』の再発にもガッツリ関わって、解説と帯文を書いたことがあります。川勝正幸さんが編集した『勝新図鑑』という本にもボクのタレント本コレクションの中から勝新エピソードを抜き出した原稿を書いたりもしたし、勝新ジュニアの鴈龍太郎さんや、兄・若山富三郎ジュニアの若山騎一郎さんを取材したこともあります。玉緒さんのインタビューは実現しなかったんですけどね。そうやって集めた情報や、言うまでもなくテレビが流す綺麗事とは全く異なるものでした。

 勝新さんは徹底して「勝新太郎」というキャラクターを演じきっていた人なんですよね。ほら、伝説の記者会見があるじゃないですか。癌だと告知されて煙草もやめたって言いながら、美味しそうに煙草を吸い始めて芸能レポーターに突っ込まれるやつ。実はあの時点で身体がボロボロで煙草なんか吸える状態じゃなかったのに、ああやって勝新を演じきる人なんですよ。親族の前でも勝新を演じきっていたから、若山騎一郎さんは「あまりにも父親が横暴すぎて、俺は本当に勝新太郎の息子に生まれたかった」と言っていました。騎一郎さんの本に出てくる勝新さんは、六本木でトラブルに巻き込まれた親族を単身で助けに来るような、圧倒的にかっこいい叔父貴なんですよ。暴力&パワハラ三昧だった父親とは違うって感じで、本当に心酔してました。

 ただ周囲にとって「迷惑な存在」だったのも間違いなくて、勝新の子供2人が大麻で捕まったこともあるんですけど、そもそもお父さん自身が国内外のアウトローと交流があったせいか、家にアヘンの吸引器具がデザインの良さを理由に飾られているような環境だったんですよね。しかもそのとき勝新は「他の薬物はともかく、俺はしんどい時に大麻に救われた経験があるから、大麻のことは悪く言えないんだよ」というなかなかないスタンスのコメントを出しています。そういう人物が、90年代以降のクリーンさを求める世の中に適合できなくなるのは当然の流れでした。

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この記事の著者
吉田豪

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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