意志は弱い、願望は強い、仕組みはもっと強い…サイバーエージェント、阪急阪神HDの大株主が教える「付き合うべき相手」
金利が上がり、住宅ローンに頭を悩ませる。AIが台頭し、自分の仕事の先行きに不安を覚える。
現在、ビジネスパーソンの多くが将来不安に駆られ、金融資産をどう増やすかに目を向けている。
こうした多くの人の行動に対して「そのままでは将来不安は決してなくならない」と断言するのが、実業家で投資家の嶋村吉洋さんだ。
嶋村さんはサイバーエージェントや阪急阪神ホールディングス、朝日放送グループホールディングスの大株主であり、テレビ東京ホールディングスの個人筆頭株主としても知られる。運用する資産は数百億円規模にのぼる。
10代で起業して以来、実業家、投資家、映画プロデューサーとして多方面で活躍してきた嶋村さんは「株や不動産を買う前に、まず築くべき資産がある」という。
莫大な資産を築いた投資家が語る「豊かになるためのステップ」を聞く。連載全3回の第2回。
目次
なぜあの店は、初日から行列ができたのか
「人間関係こそが資産である」
前回そうお話しすると、異業種交流会に足を運んだり、友人に自分の商品を売り込んだりする方がいます。
しかし、それは逆です。人間関係を資産として生かすとは、仲間を利用することでも、金儲けの手段にすることでもありません。
相手のために自分が何をできるかを積み重ねた結果、めぐりめぐって大きな力が返ってくる。それが人間関係という資産の正体です。そしてこの力はいざというとき、お金では決して買えない働きをします。
わかりやすい例があります。私の仲間が、都内で食品店を開いたときのことです。
扱っていたのは、賞味期限がわずか一時間という商品でした。
売れ残ればその日のうちに廃棄するしかない、売るのが難しい部類の商品です。ところが、この店はオープンと同時に行列ができ、数時間で売り切れました。
開店の案内を受け取った仲間たちが、あの商品を無駄にさせたくないと駆けつけたのです。彼らがつくった行列を見て、通りすがりの人もつい並びたくなる。こうして店は、初日から人が人を呼ぶ状態を生み出していました。
どんな商売でも、最初の集客がいちばんの難所です。知名度も実績もない開店直後は、客足が伸びないまま数カ月の赤字を耐えることになり、そこで力尽きる店も少なくありません。
もしこの店に助けに来る仲間がいなければ、集客に苦しみ、商品を捨て続け、赤字のまま閉店していたかもしれません。
両者を分けたのは、資金力でも商品力でもなく、いざというとき動いてくれる人がいたかどうかです。
これは単なる人情話ではありません。商売において、最初の集客は、いちばんお金と時間がかかる部分です。 動いてくれる仲間が最初からいれば、その難所を一気に飛び越え、早くに損益分岐点を越えられる。
かかるはずだった広告費も、耐えるはずだった赤字の時間も、まるごと省ける。人とのつながりは、こうして事業のうえでも、はっきりとした見返りになって返ってくるのです。
名刺を千枚集めても、人脈はゼロのまま
ただし、人が集まってさえいれば力になるわけではありません。集まりには段階があり、何を共有しているかで強さが変わります。
いちばん下が「烏合の衆」です。互いに何も共有せず、同じ場所に居合わせただけの状態を指します。たまたま同席しただけの集まりが、その典型です。顔ぶれが変わればそれきりで、関係は残りません。
一段上が「コミュニティ」で、ここでは仲間意識を共有します。顔なじみになり、あの人のためなら一肌脱ごうという気持ちが芽生え、困っている人がいれば自然と手を貸し合う関係です。
そして最も強いのが「チーム」です。仲間意識に加えて共通の目標を持っています。
たとえば、この事業を全国に広げるとか、この大会で優勝するといった、全員が本気で目指す一つのゴールです。
同じ目標に向かうからこそ、それぞれが自分の役割を果たします。誰かが手一杯になれば別の誰かが黙って補う。 指示を待たなくても互いに動けるのです。
こうした仲間意識やチームは、実際にどれほどの力を持つのか。それを痛感したのが、あるビーチ沿いのパーラーでした。
コロナ禍で多くの飲食店が客足を絶たれるなか、その店は、店主が不在の日でも営業がまわっていました。事情を知る常連客が、店を閉めさせたくない一心で、自分たちで厨房に立ち、料理をつくって出し、片づけまで済ませて、代金をきちんと置いていく。
もはや客と店ではなく、同じ店を守る仲間になっていきました。