ほめるだけで、本当に大丈夫?「ほめる」よりも大事な「認める」技術

「すごいね」「優秀だね」とほめれば、相手は喜んでくれる。しかし、非認知能力トレーナーの白石慶次氏は「ほめる」よりも「認める」ことのほうが重要だと話す。ほめると認めるの違いや、なぜ認めることが重要なのかについて、白石氏が解説する。
※本稿は白石慶次著『「好かれる人」のこれだけ いつも選ばれる人に変わる非認知能力のトリセツ』(すばる舎)から抜粋、再構成したものです。全3回中の1回目。
「ほめる」に潜む大きな落とし穴
まず理解してほしいのは、「ほめる」ことと「認める」ことはまったくの別物である、という事実です。
「ほめられる」と、ほめられた人は一時的によい気分になります。しかし、その効果は一時的です。
一方、他者に「認められる」と、自分を認められた相手は“自分の価値”を信じられるようになります。その結果、一時的な喜びではなく、安心感や自信として長く心に残りやすくなるのです。もちろん、自分を認めてくれた相手への信頼感も深いものとなります。
まずはこの2つの違いを正しく理解するところから始めましょう。
【ほめる(Praise)】 = 相手の出した成果や結果、能力、優れている点などについて自分の評価を伝えること。
例)「すごいね!」「今回の成績はトップだったね」「君は本当に優秀だね」
【認める(Acknowledge)】 = 相手の存在や努力、姿勢、プロセス、気持ちなどの“相手の内側にあるもの”をそのまま受け止めること。
例)「丁寧に進めたんだね」「緊張するくらい、責任感を持ってくれているんだね」「あなたのその姿勢、助かったよ」
そして、「ほめる」行為には“大きな落とし穴”があります。それは「上下関係のなかで一方的に評価される構造になりやすい」ことです。ほめることは“評価”の一環なので、ほめる側とほめられる側のあいだに“上下関係”や“力の差”が生まれやすいのです。
もちろんほめること自体は悪くないのですが、「ほめ続けないと相手のモチベーションが下がる」という依存の構造を生むこともあります。
「ほめる」よりも「認める」が大事
一方で、相手を「認める」行為はこの逆です。相手を素直に認めてあげると、相手と自分が対等な関係になれます。なぜなら、認めるとは「評価」ではなく「理解」だからです。相手の努力や姿勢を評価せずにそのまま受け取り、「私は、あなたの内側もちゃんと見ていますよ」というメッセージを届ける行為です。
そこには上下関係は生まれません。むしろ、お互いを同じ人間としてフラットに扱える関係が育ちます。
上下関係ではなく対等な関係を築け認めてもらえると、相手はこう感じます。
「この人は、結果だけを見ているわけじゃない」
「自分の気持ちや努力を大事に扱ってくれている」
「自分のことをひとりの人間として尊重してくれている」など
相手を認める行為は、信頼と安心感を育てるのです。同じ言動に対してほめるのか認めるのかで、その後の関係性は大きく変わるでしょう。
例)部下が大きな案件を獲得したとき
・ほめる場合
「すごいね! やるじゃん!」
→ 一瞬相手の気持ちが上がるが、“評価される側”という構造が残る。
・認める場合
「Aさんはこの案件に、粘り強く向き合っていたよね。その姿勢、本当に助かったよ」
→ 結果よりもプロセスに触れているので、上下関係が生まれにくい。
前者は「ほめてくれる人」で、後者は「認めてくれる人」「わかってくれる人」です。どちらがより好かれるのかは、もはや明らかでしょう。
認めるには「相手の内面を想像する」こと
認めるとは、相手の“内側の努力(見てほしいところ)”に気づくことです。人は、結果よりも“見えない努力”を認められたときに、もっとも心が満たされます。
・不安な気持ちを抑えて挑戦した
・締切りに間に合わせるために工夫した
・緊張しながらも勇気を出して発言した
・相手を気遣って言葉を選んだ
こうした内側の努力は周囲の人には見えませんし、なかなか気づいてももらえませんし、自分から口にすることも少ないでしょう。
しかしだからこそ、そこまで言葉が届いたとき、人は深く満たされるのです。これは、「ほめる」だけでは絶対に届かない領域です。最高の認める行為とは、「相手がいま最も認めてほしい、内側の努力に届く言葉」なのです。
・頑張っている人には、「あなたの努力、ちゃんと届いてるよ」
・不安で固まっている人には、「そのままで大丈夫。責任は僕が取るから」
・挑戦した人には、「その一歩、すごく価値があるよ」
・落ち込んでいる人には、「あなたの存在が助けになってるよ」
こんなふうに相手を認めていきましょう。
・相手がどんな状態にいるのか?
・どんな気持ちでそこに立っているのか?
・これまで、どんな苦労をしてきたのか?
・何に迷って、何に悩んでいるのか?
常にこうした問いを立て、相手の“背景”を想像し、その人の心にぴったりフィットする言葉を選んでください。認める力のある人は、話を聞くときにも相手の内面を想像できます。
「きっと、勇気を出して話してくれたんだろうな」
「この人なりに精一杯やった結果なんだろうな」
「言葉に詰まっているのは、失敗できないと真剣に考えているからだろう」
こんなふうに“背景を想像する力”を使って、相手が本当に必要としている言葉を届けることを意識しましょう。
誰でもできる「認め方」のコツ3つ
自分の努力を認め、自分の頑張りを自分で労うことは大切です。それができる人は、他者の努力にもすぐに気づいて認められるはずです。
自分を認められない人は、他者の見えない努力にも気づけません。だからこそ、認められた人はこう感じます。
「この人には自分をわかってもらえた」
「自分は大切に扱われている」
「また頑張ろう」
まさに“心が満たされる瞬間”です。「ほめる」行為はあくまで“外側”の評価にすぎません。一方で相手を「認める」行為は、相手の“内側”の本質にまで触れます。だからこそ、人はほめられたときよりも、認められたときに深く満たされるのでしょう。
認められる → 安心する → 行動が増える → 成長が加速 → また認められる → ……この循環は、教育やマネジメントでも絶大な効果があります。
成果や能力だけを条件にほめられて育った人は、「成果を出さなければ価値がない」と感じやすく、挑戦を怖がることがあります。
一方で、結果だけでなく、存在や努力の過程まで認められて育った人は、「失敗しても自分の価値はなくならない」と思いやすくなります。
他者を積極的に「認める」ことで、相手のなかに「自己肯定感」というポジティブな感情を生み出してください。それこそが、最高の「他者に与える習慣」です。
誰でもすぐにできる、上手な「認め方」のコツも3つお伝えしておきます。
上手な「認め方」のコツ ❶ 結果ではなく、プロセスに注目する
上手な「認め方」のコツ ❷ 相手の背景情報を想像する
上手な「認め方」のコツ ❸ 想像で見えてきた、相手が口にしない苦労や頑張りを言葉にして伝える
最初からうまくできなくてもかまいません。「もしかして、こういう気持ちだったのかな?」と確認する形で伝えてください。想像が外れることもあるでしょう。それでも大丈夫です。
なぜなら、「あなたのことを理解したい」というあなたの姿勢や気持ちは、絶対に相手にも伝わり、それだけでも十分に「与える」ことになるからです。
これだけ
「ほめる」のは、相手の外側をプラス評価する行為。喜ばれはするが、デメリットもある。相手の存在そのものを承認して「認める」ほうが、より強い関係につながる。
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