「リクルートにいたらこの景色は見られなかった」村田あつみ氏が同期との差に悩み、副業で独立するまで
新卒でリクルートホールディングスに入社しながら、副業のような感覚で続けていた出張撮影サービス「Lovegraph」。学生時代に法人化まで済ませていたとはいえ、当初はキャリアと両立できる範囲で続けようと考えていた。しかし大企業からのコラボ依頼が相次ぐ中で、村田あつみ氏は「両立」の限界に直面することになる。全4回の第2回。
みんかぶマガジン連載「バリキャリ女性社長のワークライフ・ルール」
「お金はいいから、時間がほしい」。副業が本業を圧迫した日々
「リクルートホールディングスのIT採用という枠で、私の前の年からできた新しい採用枠だったんです。IT人材を強化する方針で、エンジニアを100人近く採用するなかで、女子は10人だけでした。私もプログラミングをやっていたので、ウェブデザインとコーディングのスキルを活かして、IT人材として入りました」
学生時代に培った技術が、そのまま新卒でのキャリア選択にも直結した形だ。入社後、村田氏はプログラミング研修の課題をこなしつつ、並行してラブグラフの業務もこなす日々を送っていた。当時のメンバーはわずか3人で、Web担当は村田氏一人。ジュエリーブランドや音楽レーベルなど、企業からのコラボ企画の相談が次々と舞い込む中、業務量は膨れ上がっていった。
「周りが自分より優秀で、しかもプログラミング研修も必死な中でラブグラフの仕事もすごく忙しくなってしまって、何をやっているんだろうと思うようになりました。お金は2倍もらえるかもしれないけど、それよりも時間が欲しいと思うようになったんです」
当時のリクルートの同期は東大や京大の出身者が多かったという。「自分一人くらいいなくても会社は全然回る」と感じていた一方で、「ラブグラフには自分しかいない」という実感があった。大企業という環境と、自分にしか担えない事業。どちらを選ぶかという問いに対し、村田氏が持ち出した基準は「今しかできない方はどちらか」というものだった。
著名投資家の一言に、涙が止まらなかった夜
退職の決め手になったのは、ベンチャーキャピタル(コロプラネクスト)から資金調達の打診を受けたことだった。出資のオファーを受けた際、リクルート在籍中であることを伝えると、返ってきたのは厳しい言葉だった。
「フルコミットしないとダメだよ、と言われたんです。そう言われたことで、自分はまだ甘いんじゃないかって、すごく怖くて。どう受け止めればいいのか分からないまま、泣いてしまいました。正直、まだそんな覚悟を求められる段階だとは思っていなかったんです」
村田氏にとっては、それだけ重みのある一言だった。覚悟のなさを見透かされたような感覚だったのだろう。だが同時に、スタートアップへの挑戦は、生半可な気持ちでは通用しないという現実を突きつけられた瞬間でもあった。理由が分からないまま流した涙は、副業のつもりで続けてきた事業に対する自分自身への問い直しでもあった。この一件をきっかけに、退職の決断が固まっていく。