「怪我をしたら誰が責任を取るんですか」。7割の高校生が「自分は無力」と答える国で、松田悠介が説く”伸びる子”の絶対条件

「うちの子が怪我をして、プロサッカー選手になれなくなったら、どう責任を取るんですか」——保護者会でそう詰め寄られた元体育教師がいる。
前回は、いじめの標的だった中学時代と、そこからハーバード留学、NPO法人Teach For Japanの創業へと至った道のりを松田悠介氏に聞いた。最終回となる今回は、多くの子どもたちと向き合ってきた中で見えてきた「伸びる子」の共通点、子どもの挑戦に大人がどう伴走し、いつ手を離していくのか、そしてこれからの時代に必要な力について聞く。全3回の最終回。
みんかぶマガジン連載「天才たちの育ち方」
多くの子どもを見て分かった、「伸びる子」と「伸びない子」を分ける親の接し方
これまで多くの子どもや若者と関わってきましたが、伸びる子には共通点があります。1つは「自分で決めさせる」こと。もう1つは、親が社会の常識を一方的に押しつけず、辛抱強く見守ることです。
例えば、子どもが「YouTuberになりたい」と言い出したとき、多くの親は「そんなの食べていけないからやめなさい」と否定してしまいます。そうではなく、一緒に成功しているYouTuberを調べて、「この人はなぜこんなに人気があるんだろうね」と分析してみる。「編集がすごいね、映像制作のプロが関わっているのかもね」といった気づきから、映像編集そのものへの探究につなげていくこともできます。
子どもの好奇心に、親自身が本気で興味を持って寄り添うことが大切です。頭ごなしに否定して、子どもが頑張ろうとするチャンスそのものを奪ってしまうのは、本当にもったいないことだと思います。
「怪我をしたら誰が責任を?」プロを夢見る中学生と保護者に、教師はどう向き合ったか
教員をしていた頃、「プロサッカー選手になりたい」と言う生徒がいました。現実的な確率を考えれば、大人が「もっと現実を見ろ」と言いたくなる場面かもしれません。ただ、私はその夢を否定しませんでした。代わりに、「プロの選手って、毎日どんな練習をしているんだろうね」と一緒に調べるところから始めたのです。
調べた内容をもとに、何をするのかを決めるのは、あくまで本人です。彼は「毎日1,000メートル走る」といった練習計画を自分で立て、実際に走り始めました。うまくいかない日があれば、なぜできなかったのかを一緒に振り返り、翌週の計画を組み直す。その繰り返しに、私は伴走し続けました。
ところがある日、保護者から「うちの子が怪我をして、プロサッカー選手になれなくなったら、どう責任を取るんですか」と詰め寄られたことがあります。もちろん怪我のリスクはありますし、怪我をしても私が責任を取れるわけではありません。しかし、そのリスクを理由に何も挑戦させず、勉強だけをやらせるようにしてしまえば、本人の個性や意欲はすべて奪われてしまいます。
目標を掲げ、計画を立て、努力し、振り返りながら成功と失敗を積み上げていく。たとえ怪我などで目標が途中で頓挫したとしても、そこで育まれた「目標を作り、努力し、やり抜く」という生きる力は残ります。次に何かを見つけたときに、より効率よく、スピーディーに目標達成へ近づける力になるのです。日本の教育は、こうした挑戦や成長のチャンスを奪ってしまっているケースが多いと感じています。