「AIの答えはギャンブルに似ている」精神科医が教える悩み相談との付き合い方
仕事の悩みを、上司でも友人でもなくAIに打ち明ける。そんなビジネスパーソンが増えている。
会社から配られたAIを、仕事だけでなく心の相談相手として使う人も出てきた。ちょっとした愚痴の聞き役にしている人も少なくないだろう。一方で、AIとの対話をめぐっては依存のリスクも指摘され始めている。
悩みを打ち明ける相手として、AIとどう向き合えばいいのか。登録者70万人超のYouTubeチャンネルを持つ精神科医で、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏に聞いた。連載全3回の第1回。

「降りられない40代」が自分を追い込む理由
精神科医として30代、40代の男性の話を聞いていると、この世代ならではの行き詰まりを感じることがよくあります。ちょうど中年に差し掛かる時期で、体力が落ち、見た目も変わり、将来に希望を持ちにくくなります。
キャリアへの不安も抱きやすくなります。30代なら転職という選択肢もありますが、40代になるとその道も狭まります。若手が転職して抜けていく中、自分は下っ端のまま今の職場にとどまる。最近は、そうした40代が多くいます。
職場で抱える悩みも、ここ数年で質が変わってきました。以前はパワハラをめぐる相談が目立ちましたが、最近はあまり聞かなくなっています。
ただし、パワハラが減ったからといって、職場が穏やかになったわけではありません。誰かのせいにできなくなった分、自分の能力が低いことへの失望感や劣等感は、かえって強まっているように感じます。
悩みを職場で打ち明けようにも、今はウェットな人間関係を望まない人が多く、ともに頑張ろうという空気もありません。その結果、人と関わるよりスマホを見ているほうが楽だと、人付き合いから身を引いてしまう人も少なくありません。
職場の外に目を向けても、社会全体に閉塞感が漂っています。AIがさまざまな仕事を担うようになり、定年まで逃げ切れる人とそうでない人の差は広がる一方です。そのうえゴールはまだ遠く、70代、80代まで働き続けなければならない可能性もあります。
こうした状況で、どこで妥協すればいいのか悩む人は多くいます。給料に見合う分だけ働き、あとは穏やかに暮らす道もあるはずですし、本来、出世競争から降りること自体は難しくありません。
それでも多くの人は、誰に求められているわけでもないのに仕事を抱え込み、自分を追い込んでしまいます。誰にも打ち明けにくいこうした悩みを、AIに相談する人が増えています。