1文字0.5円の執筆業を請け負うWebライターの限界…手っ取り早くイイ案件を獲る方法(連載:40代フリーライター「1000万は稼げます」コラム1)

 フリーライターと聞いてどんなイメージをするだろうか。「稼げなさそう」「不安定そう」…。あまりポジティブでない印象を持ってる人もいるはずだ。しかし田中圭太郎氏は、40代で安定の会社員生活を捨ててフリーライターになり、今では悠々自適な生活を送り、年収は1000万円を超している。「やり方さえわかっていれば、誰でもできます」。連載:40代フリーライター「1000万は稼げます」では、田中氏がライターとして独り立ちする方法を伝授していく。

コラム① クラウドソーシングサイトは利用すべきか?

 「文字単価1.0円で3000文字」「文字単価0.5円で10000文字」……このような条件でライティングする人を募っているのが、「ランサーズ」や「クラウドワークス」などのクラウドソーシングサイトです。

 私はこれらのサイトを利用して、ライティングの仕事をしたことはありません。

 ただ、フリーランスになってすぐの2016年4月に、複数のサイトに登録はしてみました。あまりの単価の低さに驚いた記憶があります。10000文字書いて5000円では、いったい時給はいくらになってしまうのだろうと首を傾げましたし、この単価の仕事で前職の収入を上回るのはとても無理だと感じました。

 同時に不思議に思ったのは、発注元に出版社がないことです。出版社の媒体に書きたいと思っていたのですが、クラウドソーシングサイトをきっかけにするのは難しいようでした。

 それから2022年の現在までにクラウドソーシングのサイトは増えて、多種多様になっています。ライティングの仕事の募集状況を見てみると、依然として低い単価の仕事が多数掲載されていますが、サイトによっては1記事3万円といった単価の仕事をマッチングしているところもあるようです。

 おそらく、私がフリーランスになったときよりも、仕事自体も増えているのではないでしょうか。それでも自分が利用するのかどうか、改めて考えてみます。

ライター初心者であれば「利用する」

 まずは自分が記者経験もなく、まったくの駆け出しのライターとしてこれから仕事を始める設定で考えてみます。

 初心者であれば、まず仕事を得ることを優先しますので、クラウドソーシングのサイトを利用するでしょう。その際には、まとめ記事のようなライティングは選択せず、署名記事ではないにしても、Webなどに記事が残る仕事を探したいところです。

 各サイトには、自分の仕事実績が記録され、発注者からの評価が積み重なっていくシステムがあります。自分でも書いた記事のURLなどを仕事実績としてまとめておけば、リアルの場で仕事の相談をする際にも、実績として見せることができます。

 記事執筆以外では、報酬もそれほど悪くないと感じるのが文字起こしの仕事です。文字起こしであれば、取材をして、資料を集めて、構成を考えて、執筆して、といったプロセスがありませんので、ライティングよりは効率がいいと思います。

 ただ、クラウドソーシングの仕事だけでライターを続けていくのは、副業ならまだしも、家族を養おうと思うのであれば難しいでしょう。もっと稼ぎたいと思ったら、速やかに次のステップを目指していくことが必要ではないでしょうか。

 次のステップとは、例えばインタビュー取材をして執筆するといったケースです。取材ができれば仕事の単価も上がります。そのためには取材のスキルを独学するなり、ライター教室で学ぶなり、自分で身につけていく必要があります。

 また、クラウドソーシングで仕事を受注した会社から、実績を重ねていくうちに取材記事を依頼されるケースもあるかもしれません。一般的には取材記事が書ければライターとして食べていくことが可能になると思います。クラウドソーシングはあくまで入口と考えるのがいいのではないでしょうか。

元記者であれば「利用しない」

 では元記者である自分が今フリーランスになったときに、クラウドソーシングを使うかというと、答えは「利用しない」です。実際に利用したこともありません。

 元記者のみなさんは、これまでそれなりの給料をもらってきたはずですので、あまりの単価の低さにモチベーションが下がります。単価の高い仕事がないかといくら探してみても、なかなか見つからず徒労に終わるでしょう。

 それにクラウドソーシングのサイトにある低単価の仕事では、これまで培ってきたスキルを十分に生かすことができません。取材ができて、構成もできて、ニュース原稿が書けるのですから、記事の企画を1本でも多く考えて直接媒体に売り込む方が、仕事を得ることにつながるはずです。

 最近は新聞社を辞めた方が、Webメディアなどに編集者として再就職するケースも多いようです。そういう編集者が同じ新聞社の元社員でつくるFacebookグループなどで、ライティングの仕事を募集しているといった話も聞きます。

 私が通った「上阪徹のブックライター塾」でも、上阪さんの担当をされていた書籍編集者と知り合えるほか、塾の仲間同士で仕事を紹介し合うケースも多々あります。

 企画を売り込む際には、自分の得意分野、興味のある分野をあわせて伝えることも有効です。持ち込んだ企画が採用されなかったとしても、編集者から「こんな記事は書けますか」「こんな取材はできますか」と持ちかけられることがよくあります。

 元記者のみなさんには、クラウドソーシングのサイトは使わずに、どんどん自分の企画を媒体に提案していくことをおすすめします。そして、ライター初心者のみなさんも、独自の企画を提案できるように、日々準備をしてみてはいかがでしょうか。

手っ取り早く(?)仕事を得る方法

 私がどのようにしてジャーナリストやライターの仕事を得ていったのかについては、この連載で触れていきます。その前に、私がフリーランスになるにあたって最初に実行したことでもあり、仕事を得るうえで効果があったことをお伝えします。

 それは、フリーランスのジャーナリストやライターになることを、周囲の人に向けて宣言することです。私のFacebookを見ると、2016年3月30日に次のように投稿していました。

【ご報告】

あす、3月31日付で、株式会社大分放送を退社いたします。

報道部で15年間、東京支社営業部で4年間、あわせて19年間勤務いたしました。

これまで仕事でお世話になりました、全ての皆様に、感謝申し上げます。

大変お世話になりました。

ありがとうございました。

4月からは、フリーランスのライターとして活動いたします。

引き続き、多くの方々にお世話になります。よろしくお願いいたします。

(以下略)

 この投稿の直後に、複数の編集者の方から仕事の打診をいただきました。4月1日のFacebookには「さっそくお仕事のお話を頂きました。関係者の皆様、ありがとうございます!」と投稿しています。これは本当の話です。

 また、前職で仕事のお付き合いがあって、数年経ってから依頼をいただいた方も少なくありません。フリーランスになったと知ってもらうことが大事です。しかも、声をかけていただいた方の仕事に、クラウドソーシングサイトのような低単価の仕事はありません。

 もちろんオファーをいただいたからといって、仕事が順調にいくかどうかはまた別の話です。同じ書く仕事とは言っても、記者が書くニュース原稿と、書籍の原稿、Webや雑誌の原稿はまた違います。新たな努力が必要になってきます。

 最も成長につながると感じているのは、編集者のみなさんと仕事をさせていただくことです。構成にしても、原稿にしても、編集者の方からいただいた指摘は的確で、修正することで必ず原稿が良くなります。赤字をたくさんもらっても、「なるほど!」と納得するばかりです。

 それに、編集者のみなさんは、社内の他の部署だけでなく、他社も含めてさまざまなつながりを持っています。私もそのつながりの中で、いろいろな編集者の方をご紹介いただいています。この連載が実現したのも、編集者同士のご紹介からです。

 クラウドソーシングのサービスで仕事を探した場合、編集者と出会える確率がどれくらいあるのか、私は仕事をしたことがないのでわかりません。おそらくゼロではないと思います。クラウドソーシングを利用するにしても、しないにしても、編集者とつながることを優先してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者
田中圭太郎

1973年生まれ。大分県出身。早稲田大学第一文学部卒。地方局で19年間勤務後、2016年からフリーランス。雑誌・Webで大学、教育、社会問題、ビジネス、大相撲など幅広いジャンルで執筆。著書『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房 2月9日発売)『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)

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