夫の不倫、感情的に問い詰めるのは命取りに。調停で「自分も被害者だ」と逆襲された時の正しい対処法と、隠し財産の防ぎ方
モラハラや不倫を理由に離婚を決意した女性が直面するのは、「証拠をどう集めるか」という問題だ。しかし証拠を手にしたとして、それが調停や裁判の場でどこまで機能するのか——その現実を知らないまま動いて、慰謝料がとれなかったり、財産を取りこぼすケースがある。
ミカタ弁護士法人大阪事務所・代表弁護士の三津谷周平氏に、証拠とお金にまつわる実務のリアルを聞いた。
みんかぶマガジン連載「絶対に損はしたくない!泥沼離婚のマネー戦略」
目次
モラハラを訴えた女性が、調停で拍子抜けする理由
Q. モラハラの証拠として、何が有効ですか?
「まず前提として、よほどひどいケースでなければ、そもそも争点として大きく扱われることはあまりない。だから、モラハラだと気づいたとしても、それを証明することに全力を注ぐより、財産の把握や婚姻費用の確保を並行して進めていく方が現実的です。
記録をつけること自体は大事で、いつ何を言われたか、どんな行動をされたかを積み重ねておくことはやっておいて損はないです。内容によっては録音を取ることも考えられますが、日常的に録音し続けるのは夫婦関係の実態を考えると現実的ではないケースも多い。モラハラだと感じているのと、それが法廷で使える証拠になるのとでは、話がまったく違います」
調停や裁判でモラハラを主張しても、よほど深刻なケースでなければ争点として大きく扱われないことが多い。実務を知る弁護士の率直な見立てだ。モラハラの認定を離婚の決め手にしようとするより、財産の把握や婚姻費用の確保を並行して進めることが、経済的な損失を防ぐ上では重要になる。
Q. DVの場合、モラハラと対応は変わりますか?
「DVは、警察への相談や病院を受診することが非常に大事です。記録はあくまで本人の主観ですが、警察の記録や医師の診断書は第三者が介在した客観的なものになる。証拠としての重みがまったく違います。危険を感じる場合には保護命令の申立ても検討してほしいです。」
保護命令は、裁判所が配偶者からの暴力被害者を守るために接近禁止などを命じる法的措置で、弁護士に相談することで手続きを進められる。身の安全を確保するために、早めに検討した方が良い方法の一つだ。
問い詰めた瞬間、慰謝料が取れなくなることがある
Q. 不貞の疑いが生じたとき、最初に何をすべきですか?
「証拠が揃っていない段階で見切り発車で請求をかけても、相手に否定されたらそこで終わりになってしまう。黒に近い段階で弁護士に相談に来ていただくことは問題ないですが、その段階では動けないことも少なくないというのが正直なところです」
感情的に問い詰めたくなる気持ちは当然だが、その一言が相手を警戒させ、証拠収集の機会を永遠に失わせるケースもある。慰謝料の請求権には時効があり、「不貞の事実と相手を知った日から3年」が基本だ。気づいた日を記録に残しておくこと自体も重要になる。
Q. 慰謝料の金額はどうやって決まりますか?
「不貞の期間、回数、どちらから誘ったか、それによって婚姻関係が破綻したかどうか——こういった様々な事情が絡み合って決まります。だから一概に相場がいくらとは言いにくいんですが、細かい事実が証拠として残っているほど交渉での立場は強くなります。また、不倫相手への慰謝料請求については、相手の個人情報が特定できていることが大前提です。わからなければそもそも請求できないことも多い」
Q. 不倫相手にも慰謝料を請求したい場合、認められないケースはありますか?
「不貞を行っていた時点ですでに婚姻関係が破綻していると認定されるような場合は、請求が認められないこともある。例えば、何年も別居が続いていて実質的に夫婦関係が終わっていたような状況だと、そこから生じた不倫に対して慰謝料を請求しても認められないことがある。相手への請求を考えるなら、婚姻関係がまだ破綻していない段階での不貞であること、その証拠があること、この両方が必要になります」
慰謝料は「不倫されたら請求できる」と思われがちだが、実際には長年別居が続いていたケースや、すでに離婚協議が始まっていた状況での不貞は、認められないことがある。早めに弁護士に相談することで、動ける選択肢が変わってくる。