親が認知症になると実家売却も困難に! 機嫌を損ねずに「親の本音」を引き出す方法と“究極の解決策”
「親が元気なうちに相続や終活の話をしておきたいが、どう切り出せばいいのか分からない」「お金の話をすると『早く死んでほしいのか』と機嫌を損ねそうで怖い」——親を思いやるからこそ、相続の話ができずに先送りにしてしまう子ども世代は非常に多い。
そう語るのは、「小さな相続専門税理士」としてYouTubeなどで情報発信を続けている、税理士のきむらあきらこ氏だ。きむら氏によれば、相続対策において最も致命的な失敗は「親が認知症になってしまうこと」であり、意思能力が低下した瞬間からあらゆる対策が一切できなくなってしまうという。
本稿では、なぜ認知症になる前の対策が絶対条件なのか、そして親に不快感を与えずに相続や将来の対話をスムーズに始めるための具体的なテクニックについて同氏が徹底解説。全3回の第3回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
認知症になった瞬間に、すべての法律行為はストップする
「まだ親も元気に暮らしているし、相続の手続きや対策はもう少し先でいいだろう」——そう考えている方に、ぜひ知っておいていただきたい現実があります。それが認知症リスクです。
認知症になり、契約内容やその結果を理解できる意思能力が失われたと診断されると、生前贈与や遺言書の作成、本人による不動産売却などは難しくなります。成年後見制度を利用できる場合もありますが、後見人は本人の財産を守る立場であり、相続税対策を目的とした贈与などを自由に行えるわけではありません。
本人の意思能力が失われると、本人だけで生命保険へ加入したり、生前贈与をしたり、不動産の売買契約を結んだりすることは難しくなります。成年後見制度を利用して、本人の生活や介護のために必要な不動産売却が認められる場合もありますが、手続や制約が生じます。
「死ぬときの話なんて縁起でもない」と対策を先延ばしにしているうちに認知機能が低下してしまうと、そこですべての手立てが遮断され、残された家族は途方に暮れるしかありません。
相続対策で一番重要なのは「亡くなった後」ではなく「認知症になる前の元気なとき」に動くことです。つまり「亡くなった後にできることは基本的には何もない」と考えておき、親本人しかできない相続税対策は、親が元気なうちに考えておくことが何よりも大切なのです。
親に嫌がられずに相続の話を切り出す「5つのテクニック」
子どもから親へ相続の話を持ちかける際、最もやってはいけないのが「自分の都合やお金の話から入ってしまうこと」です。「自分の税金負担を減らしたいから」「自分がどれくらいもらえるのか気になるから」というスタンスが見えると、親は当然反発します。
親の警戒を解き、自然な流れで将来の話をするには、次の「5つの工夫」が非常に有効です。
1.「親の希望」を聞く質問から入る
「お金」の話ではなく、「この家にこれからも住みたい?」「行きたい旅行ややり残したことはない?」といった、親の今後の人生や希望を聞く質問から切り出します。そこから自然と終活や将来の話題へスライドさせていきます。
2.専門家やYouTubeを「だし」にする
「この前YouTubeで税理士の動画を見たら不安になっちゃって…」「セミナーでこんな話を聞いたんだけど、うちは大丈夫かな?」と、第三者の専門家を理由にして話題を出します。実はYouTubeを見ている高齢者は、TVを通じて見ている方も多く、家族で一緒に動画を観るのもおすすめです。
3.1対1のリラックスした場面で話す
お盆や正月に親族全員が集まった場でいきなり切り出すと、親は「家族から追及されている」ような圧迫感を感じてしまいます。例えば早朝にコーヒーを飲んでいるときなど、1対1の空間でさりげなく持ちかけるのがベストです。
4.一度ですべてを決めようとせず「長期戦」で臨む
「今日中にすべての結論を出そう」と焦ってはいけません。「まずは通帳や保険証券の場所だけ教えて」「将来どうしたいか、また少しずつ教えてね」と、ひとつずつ段階を踏んで進める心のゆとりが大切です。
5.芸能人やニュースの話題を引き合いに出す
話題になった有名人の相続トラブルや苦労談を引き合いに出し、「こんな大変なことがあったらしいよ」と話すことで、親自身に「他人事ではない」と気づいてもらうきっかけを作ります。
親と一緒に取り組める「これだけはやっておけ」ベスト3
いざ話ができる関係になったとしても、お金の話ばかりが続くと親も気が滅入ってしまいます。お金の話をする前に、実は確認しておくこともたくさんあります。ここでは次の3つから始めることをおすすめしています。