「投資で生き残る人は『儲けない準備』をする」資産10億円投資家が教える「バブル相場」で生き残るための“おもしろくない”投資術

記録的な乱高下が続く日本株市場。SNSでは、信用取引で築いた資産を急激に減らした「億り人」の悲鳴が上がる一方、「新NISAを始めたものの、含み損に耐えられず数カ月で辞めてしまった」という初心者の声も聞かれる。
過剰なリスクを取る投資家と、わずかな下落にも耐えられない初心者。一見正反対に見えるが、両者には「短期間で儲けようとしている」という共通点がある。
相場から退場する人と、長く資産を増やし続ける人の違いは何か。独自の投資手法で資産10億円を築いた株億太郎氏は、「投資を一生続けるという前提があるかどうかです」と語る。
長年、資金のほぼすべてを株式に投じてきた同氏が、現在はあえて現金比率を20%まで引き上げている。その真意と、一生相場に残るための“おもしろくない投資術”を聞いた。 インタビュー連載全3回の第2回。
資産減より怖い…「次の相場」に参加できない退場
ーー直近の乱高下で、強気だった個人投資家が大きなダメージを受けています。
特集でも触れたように、AI・半導体株の上昇局面では、信用取引によって資産を急拡大させた投資家も少なくありません。しかし、相場が逆回転すると、追証への対応に追われ、次の投資機会に使う資金まで失ってしまいます。
本当に怖いのは、一時的に資産が減ることではありません。生活資金に手をつけ、常に追証を心配する状態になれば、冷静な判断ができなくなります。精神的にも疲弊し、相場へ戻れなくなる人もいるでしょう。
一度の相場で大きく儲けても、その後の投資を続けられなくなれば意味がありません。次の相場にも参加できる資金と気持ちの余裕を残すことが、長く生き残るうえでは何より重要です。
数カ月の含み損で、新NISAを辞める人の大きな誤解
ーー新NISAを始めた初心者にも動揺が広がっています。
少し厳しい言い方ですが、株価が少し下がっただけで新NISAを辞めると、結果的に相場で利益を得る側ではなく、利益を与える側になってしまいます。
NISAのメリットは、長期で資産を積み立て、値上がり益や配当にかかる税金を非課税にできることです。数カ月の値動きだけで結論を出す制度ではありません。
長期的な成長を前提に同じ金額を積み立てるなら、下落時は同じ資金で多くの口数を買える局面でもあります。もちろん、どの商品も必ず値上がりするわけではありません。だからこそ、投資先を理解し、短期的な下落にも耐えられる金額で始める必要があります。
ーー自分の資産が減るのを見ると、不安になる人も多いのではないでしょうか。
根本には、「投資はすぐに儲かるものだ」という誤解があると思います。「流行っているから」「インデックスなら安心だと聞いたから」という理由だけで始めれば、少し下落しただけでも裏切られたように感じます。
重要なのは、含み損を一度も抱えないことではありません。含み損が出ても投資を続けられるよう、資金と気持ちに余裕を残すことです。
積立額が家計を圧迫しているなら、すべて辞めるのではなく金額を減らせばいい。相場との接点を切らず、無理のない形で続けることが大切です。5年、10年、20年と時間がたつほど、続けた人と途中で辞めた人の差は大きくなります。
フルインベスターの私が現金比率20%にした理由
ーー現在の乱高下相場には、どのように向き合っていますか。
私は長年、資金のほぼすべてを株式に振り向ける「フルインベストメント」を基本としてきました。しかし、現在は現金比率を20%程度まで引き上げています。
ーーなぜ現金を増やしたのでしょうか。
相場から逃げるためではなく、次の投資機会をつかむためです。
今は、AIや半導体など、これまで相場を牽引してきた銘柄の値動きが不安定になる一方、業績がよいのに放置されてきた企業もあります。買われすぎた銘柄から出遅れ株へ資金が移る、セクターローテーションの過渡期にあるのです。
こうした局面では、日経平均が上昇していても、どの銘柄でも上がるわけではありません。無理に勝負せず、どこから資金が抜け、次にどこへ向かうのかを見極める必要があります。
ーー現金は、暴落に備える守りの資産ですか。
守りだけでなく、次に攻めるための資金です。資金をすべて株式に投じていれば、魅力的な銘柄が急落しても買えません。保有株を売って資金を作るか、せっかくのチャンスを見送ることになります。
現金が20%あれば、相場が下落しても慌てて保有株を売らずに済みます。さらに、資源やエネルギー、食料といった次の本命セクターが動き始めた際、初動から資金を投入できます。
もちろん、現金比率を高めれば、上昇相場で得られる利益はその分だけ小さくなります。それでも今は、すべての値上がりを取りにいくより、次の主役が見えたときに動ける余力を確保するほうが重要です。
投資では、買う判断だけでなく、買わずに待つ判断もリターンを左右します。「まだ買わない」と決めて次の機会を待つことも、立派な投資なのです。