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8月決算で見えた「AI・半導体テーマ株」の選別。アドバンテスト「営業利益1兆円の可能性も!?」安川電機急落から見たAI関連株の明暗

 日経平均株価が歴史的な乱高下を演じ、狼狽売りが市場を覆った今年の夏相場。

 韓国市場でのレバレッジ解消や、機関投資家による持ち高整理などが連鎖し、企業のファンダメンタルズとは必ずしも関係のないところで株価が大きく振られる場面も見られた。

 多くの個人投資家がパニックに陥る一方、その裏側では、着実に「次の成長ステージ」へ進もうとしている企業もある。では、この激しい相場のなかで、プロの投資家は何を見ているのか。

 今回は、独立系運用会社fundnoteでTOB企業価値ジャッジファンドを運用するファンドマネージャー・神谷悠介氏とともに、決算で市場を震撼させた半導体テスタの巨人、アドバンテストの成長余地を徹底分析する。

 AI相場の本命はどこにあるのか。そして、今の株価が織り込んでいる「未来」は、本当にすぐそこまで来ているのか。激動の秋相場を勝ち抜くための、プロの視点に迫る。

(取材日:2026年8月24日、文:ちょる子)

 みんかぶプレミアム連載「fundnote 川合・神谷の目」

アドバンテスト「売上倍増」が現実味 営業利益1兆円は夢物語ではない

 今回の決算発表で、神谷氏が「非常に質の高い成長ストーリーを描けている」と高く評価した企業の一つが、半導体試験装置(テスタ)世界最大手のアドバンテストだ。

 生成AIの爆発的な普及によって、GPUをはじめとするAI半導体の性能は急速に向上している。そして、半導体の性能が高度化すればするほど、その品質を検査するテスタにも高い性能が求められる。いわば、AI半導体の進化が、そのままテスタ需要を押し上げる構造だ。

 今回、アドバンテストが示したのは、こうした市場の成長を裏付ける生産能力の大幅な増強計画だった。神谷氏はこう説明する。

「アドバンテストのセグメントを見ると、大きく分けてSoCテスタとメモリテスタがあります。SoCテスタはメモリ以外のテスタになります。前年度実績で営業利益の8割超を稼ぐ最も重要なセグメントです。そのSoCテスタは現在、年間生産能力が3500台と推定していますが、それが2027年3月末には5000台以上へ、そして2028年後半から2029年初には1万台へ、さらにその先、1万5000台へと大幅に増強する方針を示しています」

 この数字が意味するところは大きい。なぜなら、単純に考えれば生産能力が数年で3~4倍に拡大することになるからだ。もちろん、すべてがそのまま売上高になるわけではない。しかし、テスタ1台あたりの単価を考えると、そのインパクトは無視できない。

「テスタ1台あたりの単価は約3億円と推定されます。会社はあくまで顧客からの発注に応えられるようにするための生産能力であり、それがそのまま生産台数になる訳ではないとしていますが、会社も1年半先の顧客のフォーキャストが見えているとコメントしているだけに、需要を大きく超過するような過剰な生産能力を抱えようとしていないとすると、1万台規模で量産されるようになれば、単純計算で売上が2年で倍増するような絵姿が現実味を帯びてきます」

 そして、ここからが重要だ。

「この1Qで上方修正した、今期の営業利益予想8500億円弱という強気な数字すら単なる通過点となり、近い将来に『営業利益1兆円規模、さらにその先』を狙えるポテンシャルを秘めています。これほど明確で力強い成長曲線を描ける企業は稀有です」

 営業利益1兆円。昨年度実績が5000億円弱であったことを踏まえると、一見すると途方もない数字に聞こえる。しかし、生産能力の増強とAI半導体市場の拡大を組み合わせて考えると、少なくとも「夢物語」と切り捨てるのは早い。

 むしろ、今回の決算で注目すべきなのは、会社自身が将来の需要を見据えて、先行して生産能力を増強しようとしていることだ。AI半導体の需要が強い。だから設備を増やす。そして、その設備増強を吸収できるだけの需要が見えている。この好循環が続く限り、アドバンテストの成長ストーリーはまだ終わらない。

AIなら何でも上がるわけではない 安川電機が突きつけた「時間差」の現実

 一方、同じAI関連として期待されていたにもかかわらず、決算発表後に株価が急落したのが安川電機だ。工作機械の受注が伸び、物理世界でAIが稼働する「フィジカルAI」の本命候補として注目されていた。

 ところが、決算を受けて株価はストップ安近くまで急落。なぜ、市場はここまで無慈悲に売り込んだのか。直接的な要因となったのは、工場での基幹システム導入トラブルに伴う一時的な生産停止という「自社要因」だった。

 しかし神谷氏は、そこだけを見るべきではないと指摘する。背景にあるのは、AI相場特有の「期待と業績の時間差」だ。

「生成AIの進化の順序を、冷静に見極める必要があります。現在は基礎となる『学習型』から『推論型』、そして自律的に動く『エージェンティックAI』へと進んでいる段階です」

 そして、その先にあるのがフィジカルAIだ。

「ロボットが実際に自律稼働して企業の収益を直接的に増加させる『フィジカルAI』の波が本格到来するのは、実はまだ少し先の話なのです」

 ここが、AI関連株に投資するうえで極めて重要なポイントになる。市場は「将来こうなるだろう」という期待を、現在の株価に織り込む。しかし、企業の業績に実際に反映されるまでには時間がかかる。

 つまり、「期待 → 設備投資 → 受注 → 生産 → 売上 → 利益」という時間差が存在する。この時間差を無視してしまうと、「AI関連だから業績もすぐ伸びるはず」という誤った投資判断につながる。安川電機の急落は、まさにこのタイムラグを市場が突きつけた格好ともいえる。

それでも安川電機を悲観しすぎない理由 「受注残」は崩れていない

 もっとも、神谷氏は安川電機そのものの成長ストーリーが崩壊したとは見ていない。

「ただ、安川電機の受注、受注残はしっかりと積み上がっています」

 今回の業績悪化には、システムトラブルによる一時的な生産停止という特殊要因が含まれている。したがって、重要なのは「今回の決算が悪かった」という事実だけではない。受注そのものが崩れたのか。ここを切り分ける必要がある。

「貿易統計(産業用ロボット、門司税関からの輸出データ)などを細かく分析していれば、少なくとも過去10年で単月で最低となった5月の異常な落ち込みを察知できたかもしれませんが、事前に見抜くのは非常に難しかったでしょう。しかし、本質的な需要が崩れたわけではないため、一時的なシステムトラブルが解消されれば、業績回復につながる可能性があると考えています」

 つまり、今回の急落を「AI需要の終焉」と捉えるのは早計だ。むしろ投資家が見るべきなのは、一時的な生産トラブルと、中長期的な需要の変化を切り分けることだ。

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この記事の著者
ちょる子

投資歴14年。平成生まれの兼業投資家。2児の母として育児をしながら億り人を達成し、現在の総資産額は2億円。『日経WOMAN』『ダイヤモンドZAI』、『日経マネー』、『日経電子版』、『日経モーニングプラス』など数多くのメディアに出演。(X:https://x.com/kabu_st0ck)

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