防衛産業は日本経済を成長させるのか? 専門家が語る政府投資の意義
高市政権が2026年7月に閣議決定した「日本成長戦略」は、AI・半導体、造船、航空・宇宙など17分野に、2040年度までに官民で累計370兆円超の投資を呼び込む構想を掲げた。17分野の一つには「防衛産業」も含まれ、批判的な声も上がっている。防衛省防衛研究所主任研究官で、防衛産業と経済の関係に詳しい小野圭司氏に、政府が防衛産業に注力する必要性などについて話を聞いた。(聞き手・望月悠木)全4回の第3回。
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防衛が「引っ張る」わけではない
――17分野に防衛産業が入ったことを、どう見ましたか。
確かに防衛産業は入っていますが、ほかの分野と、技術や事業の面で重なっています。例えば、艦艇をつくる造船や、戦闘機やロケット、人工衛星をつくる航空・宇宙は、防衛と共通の技術に支えられています。「防衛そのものが成長を引っ張る」というより、旅客機や商船、一般企業向けのAIなど、民間の需要も大きいため、「航空・宇宙、造船、AIといった分野全体が伸びていく」と考えているように感じました。あくまで「防衛はその一部を担う」という位置づけなのではないでしょうか。
――政府が防衛産業の発注者になることの意義を教えてください。
防衛に限った話ではありませんが、政府が関わるとリスクへの耐性が高まります。JAXAのロケットが失敗したことが何度かありましたが、政府機関だから耐えられるのです。民間企業なら損失に耐えられず、資金繰りが行き詰まりかねません。国立大学が、将来事業につながるか分からない基礎研究にも取り組みやすいのと同じです。1回や2回失敗しても開発を続け、できあがったものを民間に伝えることが期待できます。
――介護などのエッセンシャルワーカーに対する投資の少なさに不満を持っている人も多いです。
低賃金でエッセンシャルワーカーが働いている状況は問題視すべきですが、その一方で介護や福祉にお金をかけることへの社会的な理解は、まだ十分ではないのだと思います。「介護サービスにいくら払うか」と問われて、「自動車ならここまで払うが介護はあまり出せない」という人は多いのではないでしょうか。「人が中心のサービスはお金がかかるものだ」という世論をつくらないと、政府がそこにお金を出すことはなかなか難しいのが現状です。