損する前にAIに自分を読ませよ…ヘッジファンドに学ぶ投資判断の点検法
銘柄探しの前に、自分が過去に出した「注文のクセ」を調べ直したことがあるだろうか。「ずっと持つ=正しい」と思い込み、保有株の再点検を嫌がるプロの運用者に対し、データや問いかけによって取引判断の歪みを可視化する取り組みが広がっている。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、プロも実践する「今日ならこの株を新しく買うか」という問いを、個人投資家がChatGPTを使って実践する具体的なステップを明かす。
みんかぶプレミアム連載「AI投資最前線 ハイテク投資の波に乗る」
「ずっと持つ=正しい」と思い込む罠 3年経った株に再点検が必要な理由
「私たちは長期投資家だ」
保有株の点検を促す通知を、運用者はこう言って断った。投資判断を分析するエッセンシア・アナリティクスの創業者、クレア・フリン・レビーが、公開記事『長期投資は、永久保有を意味しない』で紹介した話だ。
その運用者の記録では、保有の初期に市場平均などを上回っていた銘柄が、長く持つうちにその優位を失っていたという。そこで提案されたのが、3年持った株について、改めていくつかの質問に答えることだった。売却を命じる通知ではない。持ち続けることも、買い増すことも選べる。
それでも運用者は受け入れず、その後データを調べ直し、チームの仲間とも話すうちに通知を使うことにしたという。運用者の名前は伏せられている。サービスを提供する会社が記した導入の経緯だ。質問に答えた後の売買は、引き続き運用者が決める。
同社の利用者には、ヘッジファンド、G2インベストメント・パートナーズのジョシュ・ゴールドバーグもいる。同社の講演案内では、本人が投資判断の評価と改善に分析を使っていると紹介している。エッセンシアは、過去のデータから傾向を学ぶ「機械学習」と専門家の助言で、運用者自身の判断を調べる。新しい銘柄を探す仕事と並行して、自分が過去に出した注文も分析の対象になる。
1,000円から800円に下がったら買い増すのか 買った理由が変わった時の落とし穴
フリン・レビーは、運用者だった頃、取引を振り返る時間を取るのが難しかったと書いている。新しい情報が次々に届き、過去より先を見るよう求められる。そのため、日々の判断を投資日記に残し、売買の前には決まった質問に答える方法を勧める。自動通知を使い、その回答と実際の取引も結びつけている。
保有株への質問には「今日、新たに買うとしたら買うか」がある。買った時の理由が、いつの間にか変わっていないかも尋ねる。個人は、この問いを過去のメモとともに使う。以下は、その点検を身近なAIで行う応用案だ。この使い方の収益改善効果は未検証だ。
個人向けの使い方を、架空の食品会社への投資で考える。新商品に期待して1株1,000円で買った後、決算では販売が伸びたのに利益が減った。材料費の上昇が原因だ。会社は仕入れ先の変更を検討中で、実施の時期や利益への効果は示していない。株価は800円に下がった。この株を持つ投資家は、「商品は売れている。長く持てばいい」と考え、さらに100株買おうとしている。