不動産価格は本当に下がっているのか 「下落」のカラクリと、上昇を止めた「資金」の正体
東京都心のマンションで、売買が成立した価格が前年を下回る動きが出てきた。東日本不動産流通機構によると、8月の東京都区部の中古マンション成約㎡単価は前年同月比0.3%下落し、約6年ぶりのマイナスとなった。一方、首都圏の売り出し価格は前年を2割以上上回っており、指標によって見え方は大きく異なる。マンション情報サイト「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクト代表で、不動産コンサルタントの沖有人氏に、現在の不動産価格について話を聞いた。全4回の第1回。(聞き手・望月悠木)
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下落ではなく、実際は横ばい?
――月次の平均価格が前月より下がったという報道が目立ちます。価格は実際に下がっているのでしょうか。
結論から言えば、正確には「ほぼ横ばい」です。月ごとの平均単価は、取引される物件が毎月入れ替わるため、価格の動きを測る指標にはなりません。場所も広さも築年数も異なる物件を平均して、前月比で上がった、下がったと言っても、あまり意味はありません。
新築は不動産経済研究所、中古は東京カンテイが毎月平均価格を公表していますが、同じ理由で、下落の根拠にはしにくいと考えています。株式で言えば、TOPIXや日経平均は構成銘柄が決まっているからこそ値動きを追えますが、不動産価格の場合は、算出方法に注目すべきです。
――物件の入れ替わりを除いた指標では、どう動いていますか。
まず、同じ物件の価格変化を追う「インデックス」で見る必要があります。現在使えるのは国土交通省と日本不動産研究所が公表する2つですが、国交省の指数はシステムの不具合で、半年ほど公表されていません。日本不動産研究所の指数は、同じ物件が取引された際の価格差から、取引のなかった月の価格も推計して作っています。それで見ると、まだ緩やかに上がってはいるものの、ほぼ横ばいに近い状態で、少なくとも下落とは言えません。
――いつごろから横ばい状態になっていったのですか。
昨年10月ごろからです。価格を大きく動かすのは、買い手がどれだけ資金を使えるかです。2013年の金融緩和で金利が下がり、住宅ローンに資金が流れ込んで、上昇が続きました。2024~25年に急騰したのは、そこに転売業者や海外の買い手による追加の資金が加わったからです。その追加の資金が、昨年の秋から止まり始めました。
転売業者にかき回された
――何がきっかけで止まったのでしょうか。
1つは、昨年10月の経営管理ビザの厳格化です。資本金の要件が500万円から3000万円に引き上げられ、「新規の申請は約96%減った」と報じられました。更新できずに出国せざるを得ない人も出て、買い手だった人たちが売り手に回り始めています。
もう1つは、転売業者への融資です。登記簿を調べると、資金の出し手として目立ったのは、都市銀行ではなく、地銀、信金、信組、ノンバンクでした。コンプライアンスがしっかりした会社は、転売目的の新築購入にお金を出しません。決定的だったのは今年2月です。金融庁が地銀に不動産融資の管理の甘さを警告したと報じられ、現場は一気に慎重になりました。
――報道ひとつが、転換点になったと。
そうです。地銀や信金は、新聞を毎朝必ずチェックしています。「そんなことをしてはいけない」と金融庁が考えているという話が、新聞に載るわけです。そうなれば現場は動けなくなり、追加の融資はほぼ出なくなります。その結果、価格は上がらなくなったと見ています。