「米軍基地なき平和」が招く地政学的な絶望…フィリピンの悲劇に学ぶ、沖縄を蝕む「補助金依存」という名の毒
沖縄の米軍基地問題ーー。この、あまりに手垢のついた政治的争点において、私たちはいつまで「感情的な対立」という不毛なループを繰り返すつもりなのだろうか。基地反対を叫ぶ「主権の違和感」は正当だが、抑止力を欠いた「軍事的空白」の現実は冷酷だ。真の課題は基地の是非ではなく、自立を阻む「補助金依存」と資本の流出という構造的欠陥にある。
元プレジデント編集長・小倉健一氏が、免税特区による製造業誘致という、合理的かつ冷徹な「沖縄再生の処方箋」を提示する。
みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」
目次
生活圏を侵食する「フェンスの向こう側」。沖縄にのみ適用される法体系の断絶
世界を見渡せば、他国の軍隊が自国の領土に駐留することを手放しで喜ぶ国民はいない。主権を持つ独立国家において、外国の軍隊が長期間にわたって存在し続ける事態は、本質的に不自然な状態である。日本国内において、沖縄県にはアメリカ軍の専用施設が極端に集中している。生活圏のすぐそばに軍用機が飛び交い、フェンスの向こう側に外国の法体系が適用される空間が存在している。
私は思う。住民がアメリカ軍基地を追い出したいと願う気持ちを持つのは、ある意味で当然の感情であり、何も間違ってはいない。反対運動が起きる背景には、長年にわたる騒音問題や痛ましい事故、目に見えない心理的な圧迫感が積み重なっている。外国の軍事力を排除して平穏な生活を取り戻したいと考える姿勢を、遠く離れた場所に住む人間が安易に否定することは許されない。
同時に、軍事基地が存在しない方が、地域の経済発展に大きく寄与するという指摘も、まぎれもない事実である。広大な軍用敷地は、都市の発展に欠かせない貴重な平地や海岸線を占有している。商業施設や住宅地、最先端の工場を建設できるはずの土地が、フェンスに囲まれたまま民間人には利用できない状態となっている。貴重な土地を活用できない状況は、地域経済にとって巨大な足かせとなっている。
「基地は経済のエンジン」という神話の崩壊。返還跡地が証明する税収・雇用の爆発的増加
事実として、過去にアメリカ軍基地が返還された後の跡地を適切に土地区画整理事業などで再開発した地域では、基地が稼働していた時代と比較して、雇用機会も地方自治体の税収も爆発的に増加している。基地の存在は地域経済を潤すエンジンなどではなく、むしろ経済成長を根本から阻む重しになっている側面が強い。
ゆえに、経済的な潜在力を引き出すという観点から基地の撤退を求める声には、客観的なデータに基づいた十分な合理性がある。広大な敷地が返還されれば無限の可能性がある。商業施設が立ち並び、オフィスビルが建設されれば、地元の若者たちが働く場所は劇的に増える。基地に依存しない新しい都市計画を描き、豊かな街づくりを進めることは、決して不可能な夢物語ではない。軍用施設という存在が、いかに街の発展を歪め、民間企業の活動範囲を狭めているかを考えれば、基地の返還が莫大な経済効果を生むという主張は、データに裏打ちされた強い説得力を持っている。