国民はリベラル化しているのに、なぜ保守政党が勝つのか 経済学者が指摘する野党の誤算
2月の選挙では歴史的な大勝を飾った高市早苗政権。しかし、物価高対策の物足りなさや誹謗中傷動画作成の疑いなど、国民の不信感が高まり、内閣支持率は右肩下がりを続けている。とはいえ、受け皿となる野党も現れず、政治に対する期待感の薄さを感じている国民は少なくない。こうした政治、さらには世論の動きについて、『「上」vs.「下」の経済学』(地平社)の著者であり、立命館大学経済学部教授・松尾匡氏に話を聞いた。短期連載全4回の第4回。(聞き手・望月悠木)
れいわ大敗の理由
――内閣支持率は低下していますが、受け皿となる野党が出てきていない状況と言えます。世論の動きをどのように見ていますか。
世論調査では、夫婦別姓や女系天皇に肯定的な人が多数派を占めるなど、国民の意識は年々リベラルな方向に向かっています。ただ、高市政権をはじめ、近年議席を伸ばしている参政党や国民民主党、日本保守党といった保守的な政党が人気を集めている状況です。
なぜ国民がリベラル化しているにもかかわらず、保守的な政党が支持を集めているのか。それは、そうした論点は選挙の争点にはなりにくく、物価高など目の前の生活課題のほうが投票行動を左右しやすいからです。だからこそ、2月の選挙で、共産党やれいわ新選組といったリベラル政党が伸び悩んだのだと思います。
――中でもれいわ新選組が大きく議席を減らしたことは衝撃的でした。
れいわ新選組に関しては、党員制度を整備してこなかったことが大きな反省点だと考えています。ボランティアに頼るスタイルは真新しく、政治参加の間口を広げるという意味でも面白い取り組みでした。しかし、参政党のように党員制度を徹底的に整備し、間口を広く保ちながらも自分たちの価値観を内面化した人材を育てる仕組みを、早い段階から用意しておくべきだったと思います。
また、れいわ新選組は結党以来、消費税廃止や積極財政を訴える数少ない政党として、独自の存在感を放ってきました。ところが高市政権が積極財政を前面に押し出し、消費税についても言及するようになったことで、いわば「お株を奪われた」形になった。有権者からすれば、「似たような主張をするなら、実現性が高いと見える与党に入れたほうが早い」と考えるのは自然なことです。結果として、れいわ新選組が長年温めてきた独自色が薄まってしまったことも影響したのかなと思います。
――自民党に対立する野党として期待されている立憲民主党や中道改革連合も、存在感を発揮できていない気がします。
そこも同じ問題を抱えていると思います。国民の意識がリベラル化してはいますが、それを正面から代弁するための政策を打ち出せていない。本来であれば、反緊縮的な積極財政と、暮らしを守るという理念を組み合わせれば、リベラルな有権者の受け皿になれるはずです。しかし、そこがはっきりしないまま埋没してしまっている。結果として、消費税減税のような積極財政的な政策を掲げる参政党や国民民主党のほうが、選挙の場面ではわかりやすい訴えとして国民に響いているのだと思います。