介護をもっと働きやすい業界に。ケアリッツの革新戦略とは?
人口の約3割が65歳以上という超高齢社会の日本。 いつまでも元気に活躍する高齢者が増える一方で、認知症や要介護高齢者も増え続け、2022 年度の介護費は11兆1912億円と過去最高を更新したという。
そんな中、急増する介護ニーズに応えて急成長しているのが、株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズだ。宮本剛宏代表取締役社長、並びに太原有理取締役のお二方に、その躍進の理由を聞いたーー。
株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 宮本 剛宏 慶應義塾大学 環境情報学部卒 日清紡績株式会社、株式会社ベイカレント・コンサルティングにて、営業・コンサルタントとして勤務 2008年、ケアリッツ・アンド・パートナーズ創業 2022年、ケアリッツ・テクノロジーズの分社化、東都観光バスの事業承継に伴い、3社の代表取締役を兼任 |
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介護業界の人手不足の要因…なぜケアリッツは急成長しているのか
ーー貴社は、介護業界の中でも、ひときわ急成長を遂げています。他者と比較した際の優位性はどんな点にあるのでしょうか。
宮本剛宏 社長
訪問介護サービス提供者が、正社員中心であるということです。
日本の訪問介護の問題点でもあるのですが、他の介護事業者におけるサービス提供者のほとんどが、非正規雇用のアルバイト・パートの方々が中心です。
実態として、そうした方々はさまざまな事業者に複数登録して、掛け持ちされていることも多いです。こうした状態では、会社の看板を背負って責任を持ったサービス提供する、というのも難しいですし、研修などが行いづらいため安定した高品質でサービス提供するのも困難です。
太原有理 取締役
介護サービスを提供するうえでは、介護保険法の理解も重要になります。弊社では、サービス提供者である自社の正社員に、こうした知識の教育も行っています。それによって、法令を遵守した品質の高いサービスを可能としています。
(左)太原取締役(右)宮本代表取締役社長
ーー介護業界における人手不足は、サービス提供者の雇用形態が非正規雇用中心となっている点も大きいのかと思われます。
宮本剛宏 社長
そうですね、やはり非正規で働く道しかないと、訪問介護という仕事によって安定した生活を送ることは難しくなるでしょう。その点、弊社は介護スタッフを正社員として雇用しているので、他の事業者よりも働く側にメリットが大きいのかな、と思っています。
また、介護業界の人手不足を解消するためには、カスハラ(カスタマーハラスメント)も防がないといけません。こうした仕事柄、お客様の中には過剰なサービスを期待されている方もいます。しかし、そうした要望にすべて応えていては、働く側のスタッフが疲弊してしまいますし、その結果としてさらに人手不足が進むことにもなりかねません。スタッフを守る、ということも業界全体で考えていくべきかと思っています。行政にも働きかけながら、介護業界をもっと働きやすい業界に変えていきます。
ケアリッツが介護業界を「安心して働ける」業界に変えてきた
ーー介護サービス提供者を正社員中心にすれば、働くスタッフの給与も上がり、顧客が受けられるサービス水準も上がるので、一石二鳥ですね。
宮本剛宏 社長
はい。正社員中心の雇用形態に業界全体が変わっていくべきだと思っています。
キャリアパスを作ることも重要です。弊社では、新卒採用においては現場中心にキャリアを積んでいくプロフェッショナルコースと、管理職を目指すマネジメントコースの2つのキャリアパスを設けています。ジョブローテーションもあります。このような先がみえるキャリアパスができれば、安心して長く働く見通しが立ちますよね。そうすれば、よりレベルの高い人材が入社してくるようにもなります。
太原有理 取締役
弊社が率先して取り組んできた結果なのか、実際に業界全体で正社員の比率は上がってきています。弊社の創業時、2008年あたりは訪問介護業界の正社員率が1.2割くらいだったのですが、最近は4割程度にまで上がってきているんです。プロフェッショナルコース、マネジメントコースというキャリアパスについても、最近は業界でもよく見かけるようになってきています。弊社が、介護業界の古い常識を少しずつ変革できているのかなと感じますね。
介護業界のナンバーワンプレイヤーを目指す
ーー現在、介護業界にはどのような事業者がいるのでしょうか。
宮本剛宏 社長
施設介護は大手企業、在宅介護は中小企業が比較的多いです。そのためか、介護サービスの広告も、施設介護のものに偏っている印象です。
しかしながら、弊社としては、サービス水準、コストの両面において、在宅介護にもメリットは大きいと考えています。国の財源の面でも、より負担が少ない在宅介護を推進していくことは、社会的にも意義は大きいでしょう。
現在、業界内でも大きなプレイヤーとなった弊社をさらに成長させていくことは、業界への影響も大きく責任も感じています。ここから5年から10年をかけて、介護業界のナンバーワンプレイヤーを目指していきますので、ぜひ、弊社サービスの今後にご期待ください。
ケアリッツ・アンド・パートナーズ
2024年現在、東京都事業所数1位の訪問介護事業社。従業員数は約3500人、2023年度の売上は174億円。ITによる介護作業の効率化、介護職の待遇改善に取り組みながら業界No.1をめざしている。