“有事の円買い”は遠い過去… “弱い円”を利用したコツコツ堅実な投資手法とは?
目次
生活を直撃!他人事ではない円安の進行
2022年の春頃から、外国為替市場での円安が世間を騒がせ、連日ニュースで報じられています。外国為替の中でも特にドル円相場が大きく変動している背景には、世界的なインフレ、米FRBの利上げ、日銀の為替介入などさまざまな要因があります。こうしたかつてない相場状況下において、自国通貨である円の価値はどうなっていくのでしょうか? 私たち日本人にとって、世界における円の価値を知ることは、自身の資産を正しく評価する意味でも大切になります。
まずは、2022年のドル円相場の値動きを確認しましょう。チャートを見ての通り、年初には1ドル115円だった価格は、4月に130円、10月には150円を超え、歴史的な円安水準に突入しました。しかし、その後は切り返して140円を割り込むなど、上下への値動きが激しさを増しています。ここから再び円安に進むのか、それとも円高に進むのか、先行きを見通すのが非常に難しい相場状況です。
・2022年のドル円チャート
円安を推し進めた主な要因として挙げられるのは、日本と米国の金利差拡大です。日本はいまだにゼロ金利のままですが、米国では2022年3月に、2018年12月以来3年3カ月ぶりとなる政策金利引き上げに踏み切り、その後も利上げを継続し、両者の金利差はどんどん広がっています。その結果、円売りドル買いが加速し、円安が一気に進みました。
現在の日本は、円安とインフレが同時進行している状況です。それらが私たちの日々の生活に与える影響は大きく、決して他人事ではありません。2022年に入ってから物価や光熱費などの値上がりが加速し、それを受けて家計の負担が増していることはすでに実感しているところでしょう。インフレが円の価値を目減りさせて円安を招き、大幅な円安がインフレを招くという負の連鎖は、対処が困難な問題です。
そもそも「円」という通貨は、世界でどのような立ち位置なのか?
他国の通貨に対する円の価値は、常に変動しています。過去を振り返ると、円の価値は今よりもずっと高い時代がありました。2008年に起きた世界的金融危機のリーマン・ショック後や、2011年の東日本大震災発生後には「有事の円買い」と言われ、円が安全資産として世界中の投資家から買われていたのです。
それはつまり、世界が円の実力を認めていたということです。しかし、2011年10月に戦後最高の円高水準となる1ドル75円を記録してからは、どんどん円安になっていきます。一時的に円高へ動いた局面もありましたが、2022年10月21日には1ドル151円まで円安が進みました。この11年間に、円は対ドルでおよそ半分の価値になってしまったということです。
では、世界の中でなぜここまで円の価値が落ちてしまったのでしょうか? 前述の通り、日米間の金利差は拡大傾向にあるわけですが、金利を上げているのは米国だけではありません。世界的にインフレ懸念が広がっていることから、多くの先進国も金利を引き上げつつあります。そんな中、日本は世界で唯一ゼロ金利政策を続けており、各先進国との金利差が拡大したため、円の価値が低下しているのです。金利差が一段と広がればさらに円は売り込まれ、ますます価値は下がってしまいます。
世界各国との金利差が拡大しているなら、「日本もゼロ金利をやめて金利を上げていけばよいのでは?」と思うかもしれませんが、そう簡単にはできない理由が二つあります。一つ目は、日銀の懐事情です。日銀は国の借金である国債を大量に保有していますが、金利が上がると国債価格(価値)が下落し、最悪のシナリオとして債務超過に陥る恐れがあります。そして、二つ目は日本経済全体に与える影響です。政策金利を上げることにより、中小企業の借り入れ金利や、個人の住宅ローン金利などが上昇します。そうすると企業や個人がお金を借りにくくなり、お金の流れが鈍化してさらなる景気悪化を招きかねません。このような理由から、日銀はなかなか利上げに踏み切れないのです。
また、円の価値が下がった要因として、日本経済のファンダメンタルズの低下も考えられます。少子高齢化やイノベーション力の低下が進む日本は、ファンダメンタルズの観点から見て、他の先進国よりも優れているとは言い難いです。通貨は国力を反映する鏡であり、国の評価が低ければ通貨の価値も下がります。
“弱い円”を賢く使う!外貨投資の選択肢「FX積立」
ここまで説明した通り、世界各国の通貨に対する円の価値は、さまざまな要因で決まります。そのため、簡単に円の価値が上がることはありません。では円が弱い状況の中、多くの資産を円で保有する私たちはどうやって資産を育て、守っていけば良いのでしょうか? その方法として考えられるのが投資による資産運用・防衛です。
円安やインフレが進行すると、預貯金だけでは資産が目減りしてしまいます。何もしなければお金が減ってしまう時代なのです。そのため、資産を守る意味でも、投資による運用が重要になります。ここでは投資の選択肢として、「外貨預金」「株」「投資信託」「FX」の概要をまとめました。
金融商品 | 特徴 |
外貨預金 | 円を外貨に換えて預金する金融商品です。 円に比べて外貨は金利水準が高く、その分多くの利息を得ることができます。 |
株式 | 証券取引所に上場している会社の株式を売買し、値上がり益・配当金・株主優待を得ることを目的とした金融商品です。日本株だけではなく、海外株を取引できる証券会社もあります。 |
投資信託 | 資産運用の専門家であるプロが、投資家に代わって株式や債券などを運用してくれる金融商品です。日本だけではなく、海外の資産に投資する銘柄も多くあります。 |
FX | 外貨の売買を通じて、為替差益やスワップポイント(預金の利息のようなもの)を得ることを目的とした金融商品です。元手となる資金以上の金額で取引できるレバレッジという仕組みが利用できます。 |
リスクを抑えながらなるべく安定した運用をしたいなら、「長期、積立、分散」の三原則を実践するとよいでしょう。先に紹介した金融商品なら、投資信託やFXで取り組みやすい投資方法です。投資信託は、比較的安定した運用結果が得られやすいものの、商品内容が複雑で何に投資しているか分かりづらい面があります。一方のFXは、レバレッジがあるため少額でもリターンが期待でき、投資対象が分かりやすいです。特に「FX積立」という投資方法は、時間を分散した長期的な積立でスワップポイントを貯めることを目的としており、リスクを抑えながら効率的に運用できます。
投資にはさまざまな種類がありますが、以前のように円が強くない時代においては、外貨投資を「長期・積立・分散」で実現できるFX積立のような投資手法が適しているかもしれません。
FX積立は、世界の通貨に幅広く投資できます。例えば、外為どっとコムのFX積立 では9種類の通貨で対円の取引が可能です。一般的に、金利差の大きい通貨ペアほどスワップポイントも大きくなります。
- ドル円
- 豪ドル円
- ポンド円
- NZドル円
- カナダドル円
- 南アフリカランド円
- トルコリラ円
- 人民元円
- メキシコペソ円
では実際に、FX積立を行うとどれくらい利益が見込めるのか 、シミュレーションしてみましょう(スワップポイントは原稿執筆の2022年11月17日時点を参照)。各通貨ペアの金利差がシミュレーション時点のままだと仮定して、毎月3万円ずつ、レバレッジ3倍での積立を10年運用した場合を比較してみます。
・毎月30,000円積立、レバレッジ3倍で10年運用した場合
買付金額合計 | スワップ金額合計 | 総合金額 | |
ドル円 | 3,600,000円 | 1,934,388円 | 5,534,388円 |
豪ドル円 | 3,600,000円 | 1,269,157円 | 4,869,157円 |
ポンド円 | 3,600,000円 | 1,132,475円 | 4,732,475円 |
NZドル円 | 3,600,000円 | 1,494,008円 | 5,094,008円 |
カナダドル円 | 3,600,000円 | 1,606,886円 | 5,206,886円 |
南アフリカランド円 | 3,600,000円 | 3,192,444円 | 6,792,444円 |
トルコリラ円 | 3,600,000円 | 7,787,416円 | 11,387,416円 |
人民元円 | 3,600,000円 | 1,412,963円 | 5,012,963円 |
メキシコペソ円 | 3,600,000円 | 5,225,320円 | 8,825,320円 |
投資元本360万円に対し、ドル円でもスワップポイントとして「1,934,388円」と十分な金額を得られます。それよりもスワップポイントの大きいメキシコペソ円や南アフリカランド円、メキシコペソ円といった高金利通貨なら、スワップポイントだけでも300万円以上の金額を稼げることが分かります。今後、円安が進むのであればスワップポイント収益に為替差益が加わり、より大きなリターンを得られる可能性があります。このように “弱い円”を利用し収益に結びつける運用方法もあるのです。
FX積立は「少額から取引可能」「最大レバレッジ3倍」と、投資初心者でも無理せず始められる商品設計です。ただし、投資である以上、リスクはゼロではありません。取引通貨ペアの金利水準が将来的に逆転した場合は、スワップポイントの受け取りから支払いに転じる可能性があります。また、昨今の円安が今後も続くとは限らず、円高基調に転換した場合は、為替差損を被るリスクがあります。とはいえ、FX積立はドルコスト平均法(一定の金額を、時間を分散しながら定期的に買い続ける方法)となるため、通常のFX取引よりもリスクを抑えた運用ができます。
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