介護業界で躍進中。ケアリッツが教える、介護に備えるための準備と対策

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 厚生労働省が発表した2021年度の「介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護と要支援を合わせた認定者数は約690万人だった。公的介護保険制度がスタートした2000年度の数である約256万人と比較すると、約2.69倍増加していることになる。そしてこの数字は、今後もより増加していくトレンドにある。介護は日本国民全体の課題となりつつあるのだ。

 とはいえ、介護を経験したことがない方は、どのように親の介護に備えるべきなのか、わからないことも多いだろう。そこで、介護業界で快進撃を続ける株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズの宮本剛宏代表取締役社長、並びに太原有理取締役のお二方に、来るべき親の介護にどのように向き合うべきなのか聞いたーー。

株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 
代表取締役社長 宮本 剛宏
慶應義塾大学 環境情報学部卒
日清紡績株式会社、株式会社ベイカレント・コンサルティングにて、営業・コンサルタントとして勤務
2008年、ケアリッツ・アンド・パートナーズ創業
2022年、ケアリッツ・テクノロジーズの分社化、東都観光バスの事業承継に伴い、3社の代表取締役を兼任

目次

親が要介護状態になる前に、段取りを決めておくのがベスト

ーー親が突然要介護になったら、どうすればよいのでしょうか。

宮本剛宏 社長

 そもそも、親が突然要介護になる、ということはなかなかありません。多くの場合、前兆があります。物忘れが激しくなってきたり、約束を守らなくなったりなど、いろいろあるので、普段から親御さんに会っていれば、そういったことに気づきます。そうした前兆に気づけないのが最悪のパターンです。ですから、そもそもの前準備として、できれば月に1回程度、親御さんと定期的に会ったり、コミュニケーションを取っておくことをおすすめします。要介護の前兆に気づければ、早めにその後の段取りを組むこともできます。

 理想的には、親がしっかりしている、認知ができるうちに、親をどうやって介護するのか決めておくべきです。特に、施設に入るか、在宅で介護を受けるか、ということですね。大抵の方は住み慣れた家で最後まで暮らしたい、という意思を持っていますが、もちろん、子供の世話になりたくないからといって施設に入りたい、という方もいます。他にも事細かく決めておくと、いざ要介護状態になったときでも、落ち着いて動けます。

突然、要介護状態になっても慌てて介護離職してはいけない

太原有理 取締役

 数としては少ないですが、突然、要介護になるパターンもあります。いきなり大怪我をしてしまったり、脳梗塞になってしまったりなどするケースです。

 親御さんが今までの日常生活を送れなくなることで、お子さんが慌ててしまい、急遽仕事を辞めて「私が親の面倒を見ます」と意気込んでしまうこともよくあります。いわゆる、介護離職ですね。

 しかし、そこはよく考えてほしいんです。本当に仕事を辞める必要はあるのか、ということですね。突然、親御さんが要介護の状態になっても、介護のプロであるケアマネージャーに一度、相談していれば、仕事を辞める必要はなかった、というケースも多いです。現実問題として、一度仕事を辞めてしまい、親の介護につきっきりになってしまうと、当然ながらキャリアに復帰するのは難しくなります。10年も20年も仕事ができず、お金もどんどんなくなっていって、自分の人生すら台無しにしてしまうかもしれません。

 そこで、選択肢として持っておきたいのが、介護休業を取得することです。期間としては約3ヶ月取ることができます。その3ヶ月の間にケアマネージャーに相談しつつ、介護の体制を作りきって、働きながら親御さんの介護を始めていく。そうすれば、仕事を続けながら生活の資金を確保しつつ、親御さんの介護も無理なく続けていくことができます。

(左)太原取締役(右)宮本代表取締役社長

ーーケアマネージャーを利用するのは無料でしょうか。

宮本剛宏 社長

 もちろん、それぞれの自治体にある地域包括支援センターに行けば、ケアマネージャーには無料で相談できます。要介護の認定調査を受けると、担当のケアマネージャーがつきますので、そこでいろいろと相談しながら、親御さんのケアプランを作成していくことになります。

 お子さんがどれくらい介護に時間を当てられるかなどについてもケアマネージャーにいっておけば、そうした事情を加味したケアプランを作ってくれます。ケアマネージャーを頼って、暮らしと仕事を両立できる介護体制を作っておけば、その後も安心できますよね。

 施設介護と在宅介護の違い。サービス内容やコスト面、様々な視点で適切な選択を。

ーー介護サービスにはどのような種類があるのでしょうか。

宮本剛宏 社長

 介護サービスの種類は大きくわけて2つあります。在宅介護と施設介護ですね。ただ、要介護度や、サービスの内容によって種類はより細分化できます。

 在宅介護の場合、日中だけとか、一時間だけ家に来てもらうとか、時間を指定することができます。逆に、朝と夜は在宅でご家族が対応して、日中はデイサービス施設に預けるという選択肢もありますね。

ーー施設と在宅で、どのような違いがありますか。

太原有理 取締役

 施設の場合は、やはり夜中に何かあってもすぐにプロに対応してもらえる安心感はありますよね。一方で施設だと、あまり職員の方と1対1でコミュニケーションをとる機会は少なかったりします。一方在宅介護では、訪問介護スタッフとも1対1でしっかりと会話する時間がありますし、地域コミュニティでの生活を続けることで、自立した生活を維持しやすいのもメリットかと思います。

 また、自宅介護は1ヶ月ごとにサービス内容を変えられるのですが、一方で施設は一度入ってしまったら、サービス内容は変更しにくいです。

 コスト面でも大きく違います。受給者1人当たりの月額介護費用では、施設介護の31.7万円に対して、在宅介護では 12.5万円です。年間で見ると施設介護の方が280万円も多くなっています。

 在宅ではコストを抑えながら介護サービスを受けることが可能

出所:厚生労働省「令和4年度介護給付費等実態統計の概況」

ーーそんなに違うんですね。利用のしやすさでも、コストの面でも、在宅介護の方がメリットが大きいように感じます。

宮本剛宏 社長

 そうなんです。認知症が進んだ方の場合は、いつでも対応できる施設の方が安心ですが、そうでない方の場合は、まずは在宅介護がおすすめです。

 やっぱり、住み慣れた自宅でサービスを受けられる方がQOL(生活の質)も高くなりますよね。総合的にみて、在宅介護からまず介護を受け始めて、その後、症状が進んでいったら施設介護に移行する、というのが一番よいのではないかと思っています。

施設介護の方がおすすめなパターンとは

ーーサービス的にも、コスト的にも、在宅介護が魅力的なのはわかりました。一方で、施設に入りたいという人の理由もあらためてお聞かせいただけますでしょうか。

宮本剛宏 社長

「子供に迷惑をかけたくないから施設に入りたい」という人は多いですね。お子さんが面倒をみようと思っていても、認知症が進んでいって、面倒がみきれなくなって施設に入る、というパターンもあります。今は施設の種類やサービスも多様なので、親御さんに合った施設は見つかりやすいかと思います。どの施設に入ったらいいかわからなければ、ケアマネージャーに相談してみましょう。

太原有理 取締役

 コストが安い特別養護老人ホームに入りたい、という方は多いですが、特養は人気が高く、都会のホームには空きがないという現状があります。そうなると、やはり認知症がひどかったり、本人が迷惑をかけたくないと強く望む、といった場合以外は、コスト面からも、まずは在宅介護から始めていく方が良いだろうと思っています。

(左)太原取締役(右)宮本代表取締役社長

ケアリッツ・アンド・パートナーズ

2024年現在、東京都事業所数1位の訪問介護事業社。従業員数は約3500人、2023年度の売上は174億円。ITによる介護作業の効率化、介護職の待遇改善に取り組みながら業界No.1をめざしている。

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