注目テーマ「系統用蓄電池」に個人投資家はどう関わる? 株とは違う“貸付債権投資”という選択肢

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日本の電力市場では今、相反する二つの現実が同時に起きています。AIやデータセンター、半導体工場の増加などを背景に、電力需要は拡大。「電気待ち」のデータセンターも多いといわれ、安定供給の確保が課題となっています。

その一方で、太陽光発電が盛んな地域では、晴天の昼間に発電量が需要を上回り、せっかく発電した電気を電力網(系統)に流しきれず、発電量を抑える「出力抑制」が行われるケースもあります。

電気が足りない、でも捨てられている電気もある——このねじれを解消する鍵として注目されているのが「系統用蓄電池」です。

発電した電気を貯め、必要な時間に送り出す。このシンプルな機能が、今まさに新しい投資テーマとして株式市場でも注目を集めています。この新しいインフラに、個人投資家はどう関われるのでしょうか。

関連銘柄の株を買うだけでなく、蓄電所の開発に向けた融資(貸付債権)に投資する「貸付型ファンド」を通じて関わる方法もあります。今回は、開発の最前線にいる日本蓄電池株式会社の漆原氏と、オルタナバンクを運営するSAMURAI証券の山口氏に話を聞きました。

参入が相次ぐ蓄電池ビジネス 稼働までに立ちはだかる「高い壁」

蓄電池ビジネスへの参入は相次いでいますが、実際に蓄電所を完成させ、稼働まで持っていける事業者は限られます。

日本蓄電池株式会社もその一社です。同社のグループは物流不動産のアセットマネジメントも手がけており、約3年前に太陽光発電所に関わることになったのをきっかけに、エネルギーもアセットになると考え、蓄電池事業に参入。ここ2年ほどは、グループのリソースを蓄電池に集中させてきたといいます。

漆原氏が強調するのは、蓄電池は「買って置けば終わり」という事業ではないということです。

土地を探し、そこに本当に系統をつなげられるのか、そのための工事費はいくらかかるのかを見極める。さらに電力会社との協議や許認可、建設、各種試験を経て、ようやく稼働にたどり着きます。

しかも、系統につなぐ権利の確保をめぐる競争も激化。資源エネルギー庁の資料によると、系統用蓄電池について、電力会社に接続の可否を調べてもらう申込み(接続検討)の受付は、2024年度の9,544件から、2025年度には24,862件と約2.6倍に増えました。

ただし、この件数には、建設の見通しが立たないまま「とりあえず」接続の権利を押さえておこうという申込みも含まれています。そこで国は、申込み時に事業用地の書類提出を求めたり、一事業者あたりの申込み件数に上限を設けたりと、ルールを厳しくしています。

一方、日本蓄電池が目指すのは、権利の確保ではなく、その先の完成と運用です。漆原氏は「最終的に建設して運用することを前提に、土地、系統、建設コスト、設備仕様、運用方法、資金調達まで含めて案件を見ています」と話します。

同社は約600件の接続検討を申し込み、約6,000件の土地を調査し、約70件の開発案件を積み上げてきました。調査した土地の数から見れば、開発案件にたどり着けたのはわずか1%ほどです。

「『系統接続を持っていること』と『実際に蓄電所を完成させられること』は全く違う」。漆原氏はそう強調します。

稼働まで収益化しない…蓄電所開発が直面する「資金ギャップ」

では、稼働までの道のりが長い蓄電所の開発資金は、どのように調達するのでしょうか。

蓄電所は、稼働を始めれば実物資産ができ、収益も見えやすくなります。ところが、資金が最も必要になるのはその前の開発段階です。土地の取得、電力網に接続するための費用、設備を発注する際の前払金など、売上が立つ前にまとまった資金が出ていきます。

しかも漆原氏によると、接続検討を申し込んでも回答までに数カ月かかり、工事負担金が数億円と示されることもあるそうです。「3カ月」と聞いていた期間が「24カ月」に延びることもあり、資金の見通しを立てること自体が難しいといいます。

銀行から見ると、この段階ではまだ蓄電所が完成しておらず、担保として評価しにくい。さらに、系統用蓄電池は比較的新しい事業で、長期の実績も十分とは言えません。

ただ、漆原氏は「事業性がないから融資がつかない、というより、事業者が資金を必要とするタイミングと、銀行が融資しやすくなるタイミングにギャップがあるという感覚です」と話します。複数の案件を並行して進める同社にとって、この「資金ギャップ」は大きな課題でした。

完成が近づいた案件に絞って資金を出す。オルタナバンクの「見極め」

この「資金ギャップ」を埋める役割を担っているのが、SAMURAI証券が運営する「オルタナバンク」です。

「貸付型ファンド」は、投資家から集めた資金を事業者への融資(貸付債権)に充て、その返済をもとに分配する仕組みです。一般には貸付型クラウドファンディングと呼ばれ、オルタナバンクでは1万円から投資できます。日本蓄電池も、オルタナバンクを通じて資金を調達した事業者の一社で、福島県の蓄電所案件※1で個人投資家から資金を集めました。

※1 福島県の蓄電所案件の募集は終了しています。

そこで重要になるのが、どの案件に資金を出すかという「見極め」です。山口氏は「案件が開発の入口に近いか、出口に近いかで、私どもがリスクを評価しきれるかどうかが分かれる」と説明します。

土地や電力会社との接続条件などが固まっていない初期段階の案件は原則として引き受けず、接続の承諾などで条件が確定し、設備の搬入まで終わった案件に絞って資金を供給。稼働後は、銀行からの借り換えや案件の売却といった出口を想定しています。

判断材料として山口氏が挙げるのは、工事や運用を担う事業者の実績と、稼働後にどの市場でどう収益を生むのかという道筋です。加えて、複数の事業者・地域の案件に融資するなかで蓄積した、工事の進捗やスケジュール感といった実務レベルの情報も審査に生かし、計画どおり完成に至るかを見極めているといいます。

審査を受けた側の漆原氏は、「単に『お金を貸す、貸さない』という見方ではなく、蓄電池事業そのものを深く理解しようとしていただけた」と、福島県の現場に山口氏が同行した際のエピソードを交えて振り返ります。

このように、事業のリアルな現場まで理解した上での資金供給だからこそ、投資家にとっても手触り感のある投資になると漆原氏は強調します。

「投資いただいた資金の先では、実際に蓄電池が設置され、電力系統につながり、日本の電力インフラの一部として動き始めます。そうした実体のある事業に関われることも、大きな魅力だと考えています」

株とは違う、日々の値動きがない投資。「貸付型ファンド」の特徴と注意点

山口氏は「株式は日々の市場評価で値段が動きますが、貸付債権への投資はそもそも日々の時価評価という概念を持ちません」と説明します。

利率や運用期間、分配・償還(元本の返還)のスケジュールは、あらかじめ融資契約で定められており、ファンドの目標利回りや分配予定もこれに基づいて設定されます。

こうして募集時に決まる利回りは、これまで年4~12%(固定利回り※2)。償還されたファンドのうち、99.5%がこの目標利回り以上の実績を達成しています※3。

一方で、注意点もあります。値動きがない分、運用期間中は原則として途中解約や売却ができません。また、株式投資と同じく、元本は保証されていません。

山口氏は「投資先の事業者様の状況によっては、想定していた分配や償還が予定通りに行われない可能性もあります。表示している利回りも、あくまで目標であり、確定した利益をお約束するものではありません」としたうえで、余裕資金の範囲で、他の資産と組み合わせたポートフォリオの一部として検討してほしいと呼びかけます。

※貸付債権投資には日々の時価評価はありませんが、オルタナバンクの外貨建てファンドの場合、分配金や償還金を円で受け取る際の為替相場によって受取額が増減する可能性があります。

※2 固定利回りとは、ファンドの利回りが募集時に定められていることを意味しており、利回りを確約しているものではありません。数値は税引前のもので、2022年4月1日~直近月末までに募集を行ったファンドの実績値です。

※3 「目標利回り達成率」とは、募集時に設定した目標利回りに対し、税引前の分配金額を基に年利換算した実績利回りが目標利回り以上となった貸付型クラウドファンディングの割合です。数値は2022年1月1日~2026年5月31日に運用を開始し、償還されたファンドの実績です。過去の実績であり、将来の運用効果を保証するものではありません。

日本の電力インフラに、少額から関わる。余裕資金の一部で検討する新しい選択肢

今後について、漆原氏は「開発して、建設して、系統につないで、実際に運用する。そこまでを継続的に実行できる会社でありたいと思っています」と話します。

山口氏によると、オルタナバンクにはこれまで数十件規模の相談が寄せられ、実際に融資を実行したのは、日本蓄電池を含む3社・4案件。基準に照らして一件一件向き合ってきた結果だといいます。(2026年10月時点)

今後も、日本蓄電池をはじめとする事業者の新しい開発案件に合わせて、ファンドを順次組成していく予定です。さらに、系統用蓄電池事業に限らず、分野や事業者の異なる複数の貸付をまとめて投資できる商品も、年内の提供に向けて準備を進めているといいます。

株式とは収益の生まれ方が異なる、もう一つの選択肢として。まずは、系統用蓄電池という新しいインフラの仕組みを知るところから、始めてみてはいかがでしょうか。

【お知らせ】
日本蓄電池向けの系統用蓄電所を対象とした新たなファンドが、11月5日から公開されました。
募集の内容や条件は、公開後の案件ページでご確認ください。

※オルタナバンクの貸付型ファンドは元本が保証された商品ではなく、投資先事業者の状況等により、分配や償還が予定どおり行われない可能性があります。運用期間中は原則として途中解約できません。目標利回りは確定した利益をお約束するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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