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トランプショック「恐怖の相互関税」なぜか日本だけには有利に働く可能性…恩恵をうけるのはこの業種だ!

 なかなか実現が叶わなかったトランプー石破会談。それが2月7日(日本時間2月8日)、ついに開かれた。この会談の成果については意見がわかれており、「初めての会談としては上出来」「日本はお土産ばかりで何も得られなかった」と様々だ。そんな中で、2016年にトランプの初当選を予言した国際政治アナリストで早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏はどう見るのか。全3回に渡って解説していく。第3回は相互関税についてーー。

目次

なぜ世界一律関税から相互関税に変遷したのか

 トランプ大統領が2月13日に覚書に署名した「相互関税」が世界経済を揺らしている。しかし、筆者にはこの相互関税は当初予定されていた「全ての輸入品に対する一律関税」に比べれば非常に温い内容に思える。むしろ、トランプ政権が貿易問題に対して譲歩した政策を取ったと考えたほうが良いだろう。

 トランプ大統領が元々表明していた全世界から米国に輸出される製品・サービスに一律20%程度の関税をかける政策は、国際緊急経済権限法を用いれば法的には実行可能なものだった。しかし、実際には「緊急性」に関する大義名分は欠けており、トランプ大統領の決定に対して、司法府が疑義を唱えて介入する余地が残っていた。そうなった場合、共和党内からも一律関税に対する潜在的な不満が表面化する可能性もあり、連邦議会側から大統領の権限を抑制する法改正が実現する余地が行われかねない。

 そのため、現状の連邦議会における与野党議席差は非常に小さいことに鑑み、トランプ政権としては連邦議会議員との無用な衝突は避けるインセンティブがあることは確かだ。したがって、トランプ大統領にとって、当初の一律関税のアイディアはやろうと思えばできるが、政治的には絵に描いた餅となっていたと言えよう。

 そこで、代替案として登場したのが「相互関税」だ。一律関税と同じように、全世界の国々に対して関税強化を検討することは同様であるが、貿易相手国と同レベルの関税を課す、という相互関税は、共和党内からの政治的に理解が得やすい。実際、相互関税の導入の大統領覚書に対して、マイク・ジョンソン下院議長からも称賛の声が寄せられている。相互関税導入自体は第二次トランプ政権下での政治的ハードルは高くはなさそうだ。

第一次トランプ政権下でも提唱されたものだった

 実は、相互関税のアイディアは、第一次トランプ政権下でも提唱されたものだ。「米中もし戦わば」の著者として知られるピーター・ナヴァロ氏がホワイトハウス貿易製造政策局在任時に押し進めた政策であり、商務長官のウィルバー・ロスも一定の理解を示していた政策でもある。ナヴァロ氏は第二次トランプ政権に対する共和党保守派グループ(プロジェクト2025)からの政策提言集である「Mandate for Leadership 2025」の中で、公平な貿易に関する章の執筆を担当し、相互関税の導入に関しても強く推していた。

 第二次トランプ政権下においても、同氏はホワイトハウスの通商・製造担当上級顧問に就任しており、トランプ大統領の貿易政策に関して影響力を持っている。第一次トランプ政権時代は、関税引き下げによる自由貿易を主張する共和党内の声が今よりも強く、大規模な相互関税政策は日の目をみることはなかったが、第二次トランプ政権では早速目玉政策として採用される形となった形だ。

これは嵐の前の静けさに過ぎない

 仮に、ナヴァロ氏の主張通りに相互関税が導入された場合、その主要ターゲットは「中国」となる。米国にとって中国は関税や非関税障壁が山積みとなっている貿易相手であり、なおかつ巨額の貿易赤字計上国でもある。そのため、「相互関税の第一ターゲットは中国」であり、その他の国は二の次ということになる。現在、トランプ政権は中国に対して10%関税を課しており、その後は激しい動きを見せていないが、これは嵐の前の静けさに過ぎない。2月13日署名された相互関税に関する大統領覚書は180日以内に報告書を出すように指示されており、8月前後から中国との激しい貿易戦争が開始されることは明らかだ。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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