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「台湾有事が起これば、日本も必然的に当事者になる」台湾有事の現在地を考える

「台湾有事が起これば、日本も必然的に当事者になる」台湾有事の現在地を考える

 台湾周辺で中国軍の活動が活発化し、「台湾有事はすでに始まっている」との見方も広がっている。東京大学公共政策大学院教授で地経学研究所長の鈴木一人氏は、広い意味での台湾有事はすでに進行しているとしながらも、武力を用いた強制行動の段階にはまだ至らないと見る。台湾海峡ではいま何が起きているのか、それは日本や企業にどのような影響を及ぼすのかについて、鈴木氏に聞いた。

 みんかぶプレミアム連載「鈴木一人 地政学×経済安全保障=地経学」

目次

台湾有事は日本も当事者になる

 台湾有事は、日本にとっても有事です。それは軍事だけの話ではありません。その影響を考えるうえで参考になるのが、イラン戦争です。この戦争は、私たちに多くの教訓を与えてくれました。

  一つは、やはり航行の自由が必要であるということ。ホルムズ海峡の閉鎖により、世界はエネルギー危機に陥りました。台湾有事が起こると、台湾海峡と南シナ海・東シナ海が封鎖される可能性が高いと考えられます。日本の経済が回っていくためには、海上交通路を維持・確保するシーレーン防衛が重要なのだと改めて思い知らされました。

 もう一つは、アメリカの強大な軍事力をもってしても、イランを屈服させるには至っていないということ。現代の戦争は、勝敗の決め方が大きく変わってきています。武力だけで勝ち切ることが難しくなったいま、“戦争の終わらせ方”をよく考える必要が出てきています。

 広義の台湾有事に関しては、今後どんどん拡張していく可能性があります。いまイランは、攻撃を受けると、中東諸国にあるアメリカの施設を攻撃しています。同様に、仮に台湾有事が起きてアメリカが介入してくるとなると、中国側は米軍基地を攻撃することになるでしょう。

 そうなると、嘉手納基地、普天間飛行場をはじめとする、「アメリカの拠点となる在日米軍基地」が真っ先に攻撃されることになります。当然日本も、当事者として巻き込まれることになります。

台湾有事は企業にとっても有事である

 企業にとっても、極めて大きなリスクになります。

 企業のBCP(事業継続計画)を考えるとき、まず課題になるのは台湾にいる従業員の保護です。台湾で有事が起きた際、現地の駐在員や従業員をどう退避させるのか。これは当然、考えなければならない問題です。

 しかし、見落とされがちなのが、中国大陸にいる従業員です。日本企業は中国大陸に多数進出しており、そこで働く日本人やその家族も多くいます。仮に日本が何らかの形で台湾有事に関与し、中国と敵対する立場になれば、中国大陸にいる日本人は、人質状態になる可能性があります。

 さらに、中国との経済関係が断絶すれば、サプライチェーンに深刻な影響が出ます。台湾有事というと、台湾からの半導体供給だけを考えがちですが、中国からの部品や素材の供給が止まるということを認識しておく必要があるでしょう。

 もちろんこれは、「いますぐ中国から撤退しましょう」という話ではありません。台湾有事は、実際に発生した場合には市場や経済に甚大な被害をもたらすものの、現時点では発生確率が極めて低い“テールリスク”です。

 そのような事象が起きることを前提に、すべてのサプライチェーンを再構築するのは現実的ではありません。

 しかし、それでも、現地従業員をどう守るのか、中国からの供給が止まったときに代替供給先はあるのか、あるいはサイバー攻撃に耐えられるのか。企業は平時からそうした想定をしておく必要があるでしょう。

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この記事の著者
鈴木一人

立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了、英国サセックス大学大学院ヨーロッパ研究所博士課程修了(現代ヨーロッパ研究)。筑波大学大学院人文社会科学研究科専任講師・准教授、北海道大学公共政策大学院准教授・教授などを経て2020年10月から東京大学公共政策大学院教授。国連安保理イラン制裁専門家パネル委員(2013-15年)。2022年7月、国際文化会館の地経学研究所(IOG)設立に伴い所長就任。

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