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相次ぐネット炎上から考える「メディアのモラル」の境界線ーー『ReHacQ』高橋氏・『街録』三谷氏の“面白主義”が孕む危うさと、政治が金になるSNSのリアル

相次ぐネット炎上から考える「メディアのモラル」の境界線ーー『ReHacQ』高橋氏・『街録』三谷氏の“面白主義”が孕む危うさと、政治が金になるSNSのリアル

 動画配信メディアでの発言を巡り、プロインタビュアー・吉田豪氏の切り抜き動画がネット上で大きな論争を呼んだ。単なる個人の論争を超えて、プラットフォームが抱える「切り取り」の弊害やメディアの倫理観にまで議論が波及するなか、同氏の語る「モラルの線引き」には独自の文脈がある。90年代のオウム事件をリアルタイムで目撃したからこそ抱く「面白主義」への危機感と、現在のSNSで過熱する「対立のマネタイズ」への違和感。安易なビジネスプロレスに加担しない同氏が、ネットメディアが孕む危うさをひもとく。

 みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」

目次

DOMMUNEでの対談が「石丸支持層」へ届くまでーー切り取り動画が引き起こした誤読のメカニズム

 最近ボクに起きたことで言うと、少し前の『ReHacQ(リハック)』を巡る騒動の話もしておきましょうか。

 事の発端はライブ配信番組の『DOMMUNE』なんですよね。ボクの担当編集を長年やってくれている人物が箕輪厚介さんの新刊の担当でもあって、彼に頼まれたから箕輪さんの新刊発売プロモーションの対談イベントに出演したんです。『箕輪厚介 VS 吉田豪 サブカルHATASHIAI最終決戦!!』ってタイトルでやたら煽ってたけど、箕輪さんとは過去に何度かイベントやったりインタビューもしてたりで実は対立構図もないから、イベント自体は平和な感じで。泥酔した箕輪さんに手こずりはしたけれど、まあ成功したんですよ。DOMMUNE側からも「あれだけ酔っ払った箕輪さん相手に、よく成立させた」って絶賛されたりして。だけど、左派の人が良かれと思って作った「吉田豪が良いことを言ってた」って趣旨の切り抜き動画によって、意図しない形で騒動に巻き込まれてしまいました。

 配信中、視聴者から「ReHacQの高橋(弘樹)さんをどう思いますか?」という質問が何度も来て、それを拾ったんです。そしたら箕輪さんが「クレイジーなテレビ屋ですよ」とか答えて、ボクも「本当によくも悪くもテレビ屋ですよね、すごく分かります」と同意した。ただ、ボクはReHacQの人選に関して、ちょっと引っかかる部分があるという話もしたんですよね。

 ボクは自分が好きな人が出ているカルチャー系のReHacQの動画はけっこう見てますけど、苦手なものをわざわざ見に行かないから政治関係の動画に関してはノーチェックなので、誰が出ていて誰が出ていないかの厳密な線引きはよく分かっていなかったんです。だから「誰のことですか? 具体的に教えてください」とか箕輪さんに聞かれても、石丸(伸二)さんあたりを持ち上げているのは知っていましたけど、「立花孝志は出たっけ?」というぐらいの認識でした。だから、具体的な名前は出さず「政治家を恋愛リアリティショーに出して面白おかしいコンテンツにするのはどうかと思う」的な話をして。そしたらコメント欄に麻原彰晃の名前を出している人がいたから、90年代のメディアがオウム真理教を面白コンテンツ扱いにしてたら、その後で大変なことになったエピソードを話したら、箕輪さんが「ああ! 確かに俺は麻原みたいな存在を面白がって本を作っちゃう!」っていい出したりして。

 そんな切り抜き動画がバズりまくった結果、石丸さんの支持層にも届いて、「吉田豪が石丸のことを麻原彰晃扱いしているぞ!」ってことで燃え上がった、と。さらにはReHacQと、ボクが並べて名前を出したYouTube『街録ch』のことも批判してるぞ!ってことになったわけです。ただ、「そういう人物を番組に出すなってことか!」とか怒ってる人も多かったんですけど、「それはボクの線引きなだけで、それを他人に強いるつもりはない」ってこともちゃんと言ってたんです。ただ、そこが切り抜き動画には入ってなかった、と。

政治、宗教、人の死をおもしろがらないーー吉田豪が死守する「モラルの線引き」

 ボクは『街録ch』とは交流もありますが、ReHacQも街録もどちらも面白いメディアだけど似ている部分があると思ってます。そこでボクがDOMMUNEで言ったのが、「街録chもそうですけど、詐欺師の言い分をそのまま出しちゃうような怖さがある」ということでした。

 ボクの中でのモラルの線引きとして、「政治」「宗教」「人の死」をおもしろがらないという絶対的なラインを作っています。これは実は、過去に街録chから出演オファーが来た際にも伝えたことなんです。ボクは自分の出演を断ったら、代わりにディレクターの三谷(三四郎)さんから「僕のインタビューをしてくれ」と依頼されて、それは引き受けたんですよ。そこで三谷さんに「モラルのラインはどこに置いていますか?」と尋ねているんですよね。

 そのとき三谷さんは「そんなことを考えたことがなかった」と言っていたし、今回のDOMMUNEで箕輪さんも「いいじゃん、言い分は全部出した方がいいじゃん」というスタンスでした。街録chは、犯罪被害者や加害者家族のフォローといった非常に有意義な取材もたくさんやってて素晴らしいと思う一方で、立花孝志や長谷川豊といった人たちや陰謀論者、詐欺まがいなことをやって捕まった人なんかの主著を、十分な予備知識がないまま聞いて「ああ、そうですか」と流してしまっている。作り手側に「それは事実と違います」と突っ込むだけの知識がないからこそ、裏の取れない怪しい主張にそのまま発言権を与えて垂れ流してしまう怖さがあるわけです。

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この記事の著者
吉田豪

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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