「令和の米騒動」からわずか1年半で価格崩壊を招いた自民党の自業自得…「自分たちが正しい価格を知っている」と錯覚する政治の傲慢
2024年夏の「令和の米騒動」からわずか1年半。5キロ5000円に迫ったコメ価格は急落し、今度は卸の倉庫に売れ残ったコメが積み上がる過剰事態を迎えている。この極端な需給の乱高下は、単なる増産政策の成否ではなく、半世紀にわたり国家が市場を統制してきた構造そのものの破綻を意味している。元『プレジデント』編集長で作家の小倉健一氏が、迷走を続ける日本農政の病巣を冷徹に解剖する。
みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」
不足から一転。過剰と価格暴落に陥った「令和の米騒動」の結末
去年の夏、スーパーの棚からコメが消えた。5キロ5000円に迫る価格に家計は悲鳴を上げ、政治家もメディアも「令和の米騒動」と名づけて大騒ぎした。それからわずか1年半。今度は売れ残ったコメが卸の倉庫に山と積み上がり、価格は崩れ落ちている。
2026年1月に5キロ4000円台だった小売価格は、4月には3000円台まで下がった。民間在庫は前年比70万トン増の329万トン。関税を払ってまで民間が輸入した外国産米は、前年の96倍という過去最大の量に膨らんだ。
不足から一転、過剰へ。この乱高下を「増産政策の失敗」と総括する報道が多い。だが、それは問題の核心を完全に取り違えている。失敗したのは「増産」ではない。半世紀にわたって国家がコメの供給量を握り続けてきた、その構造そのものが破綻したのだ。そして石破政権は、その破綻に最も有害な一章を書き加えた政権として記憶されねばならない。
年3000億円の助成金による主食用米の抑制と2023年猛暑での市場崩壊
まず、騒動の根幹を直視しなければならない。日本のコメ市場が去年あれほど脆くも崩れたのは、需要が急増したからでも、コメが本当に消えたからでもない。1971年の稲作転換対策に始まる減反・生産調整によって、市場から「余裕」が完全に奪われていたからだ。
2018年に減反は「廃止」されたと喧伝されたが、実態は違う。飼料用米への転作助成に年3000億円規模の税金を投じ、主食用米の供給を絞り込む生産調整は今も続いている。需要と供給がギリギリで一致するよう人為的に管理された市場は、2023年の猛暑というたった一度の外的ショックに耐えられなかった。
加工用に回るはずだった篩(ふるい)下米が消え、加工業者が主食用米を奪い合い、価格が連鎖的に跳ね上がった。バッファーを国家が奪った市場は、自分で需給を調整する力を失っていたのである。これが半世紀続いた自民党と農水省の農政の正体だ。
ここに登場したのが石破茂だった。彼の診断そのものは、実のところ正しかった。農林水産大臣だった2008〜9年の頃から、彼は莫大な税金で米価を維持する生産調整を「制度として正しくない」と断じてきた。だからこそ首相就任後、半世紀の生産調整に終止符を打ち、増産に舵を切ると宣言した。供給管理という日本農政の宿痾に正面から切り込もうとした、その問題意識自体は評価に値する。