第一声は「お話は一切しません」…自民党・門ひろこ氏との直接対話で崩した拒絶の壁と「分断煽り」の構造
連載「鈴木エイトが読む、日本社会の“静かな違和感”」。第8回は、政治やSNS空間で加速する「分断と対立」に対し、生の言葉で挑んだ直接対話の試みを検証する。杉並区長選の翌朝、かつての快活さを失い、ネット上での過激な発言や取材拒否を強めていた自民党・門ひろこ衆院議員。荻窪駅前で彼女に直接声を掛けたエイト氏は、初めは拒絶されながらも対話を重ね、頑なな壁の奥にあるメディア不信や過剰な攻撃に対する本音を手繰り寄せる。さらに、再選を果たした岸本聡子区長が語った「公人の言葉の重み」や「アルゴリズムが生む分断への懸念」を交え、一方的な非難や排除を超えて「生の言葉」を伝える泥臭いコミュニケーションの重要性と、社会の分断を防ぐ地道な可能性を提示する。
惨敗の体験が生んだ「悪目立ち」へのシフト 門ひろこ衆院議員を変節させた政治の焦燥
連載最新回では、社会の各所で進行する分断を如何にして止めることができるのか、門ひろこ衆院議員との対話から見えた「分断を克服する試み」について記したい。
杉並区長選挙投票日の翌日、自民党の門ひろこ衆院議員と久しぶりに話すことができた。
この1年ほど、門氏のSNS投稿には市民の分断を煽るような強い言葉が目立つようになっていた。門氏とは、1年前までは杉並区内の駅頭で顔を合わすたびに親しく言葉を交わす間柄だった。だが昨年の秋以降、様々な選挙の取材時に現場で声を掛けても素っ気ない対応を取られることが増えていった。
門氏の存在が大きくクローズアップされたのは今年4月、アベマプライム出演時に国会前での市民のデモに対する「ごっこ遊び発言」が炎上したときだった。以後も、大型台風が迫るタイミングで杉並区長選の争点のひとつとなっていた善福寺川の治水対策に絡めて岸本聡子・杉並区長批判を展開。以後も杉並区長選告示前には岸本氏の支持者を強い言葉で直接非難する投稿を行うなど、敵と味方を明確に分け、味方にのみ支持されるような言葉を発信する傾向が強く見られた。こうした門氏による市民の分断を煽るやり方は禍根を残すのではないかと気になっていた。
私はもともと、リベラルな面も持つ門氏の誰とでも会話を交わす快活で明るい性格や政治姿勢を評価していた。東大法学部卒で経産省に入省したエリートの門氏は総理補佐官を経て、2023年には石原伸晃氏の跡を継ぎ東京8区の自民党支部長となった。だが翌年の衆院選では立憲民主党(当時)の代表選に出馬し知名度が上がっていた吉田はるみ氏に惨敗し比例復活も叶わなかった。それがおそらく門氏の最初の挫折体験となったのではないか。以後の門氏はコアな指示層へのアピールに加え、悪目立ちしても名前と顔を売り、知名度を上げることにシフトしたように私には見えた。
ネットの非難より「直接の対話」を 投票日翌朝に試みたアプローチ
今回の杉並区長選挙でも、自民党が推薦した大和田伸氏の陣営を実質的に率いていた門氏のSNSでは、区民の対立を敢えて意図的に煽るような投稿が複数なされていた。私は区長選取材中に何度か門氏にアプローチしようとしたが、まったく応じてもらえず、明らかに避けられているのでは感じた。私に限らず、門氏へのアプローチを複数のメディア関係者が試みたが、代議士が応対することはなく、大和田氏の最終演説が行われた高円寺駅前での街宣でも、応援に入った各議員が支援者などとの交流を行うなか、門氏は垣根を乗り越えて横付けした車に乗り去って行った。
区長選は岸本氏の圧勝に終わった。投票日の翌日、まだ開票作業が始まる前の6月29日の朝、門氏が荻窪駅前で挨拶を行っているとのSNS投稿を見て、自転車を飛ばして会いに行った。味方と敵を明確に線引きし分断を煽る手法は、おそらく短期的には効果もあるのだろうが、中長期的にはマイナスでしかない。そんな門氏を遠くからネット空間で非難することは簡単だ。でも私は一年以上、途切れていた対話を試みたいと思ったのだ。