オワコン化するセブン「おにぎりが小さい」「弁当高い」だけではない深刻事態

「上げ底弁当」への批判や客数減少が報じられながらも、2026年2月期の日販は依然として業界首位を独走するセブン-イレブン。だが、数字上の強さとは裏腹に、価格や量に対する顧客の不信感は確実に定着しつつある。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、各社実績データや、ファミリーマートの衣料品・ローソンの増量企画といった競合の動きを比較分析。2万店を超える店舗網の陰で進行する「市場を定義する力の減退」と、王者の足元を脅かす構造的危機を浮き彫りにする。
みんかぶプレミアム連載「消費者トレンド最前線 ToCビジネス 儲けの構造」
値上げも商品変更もネガティブに捉えられる現実 セブン-イレブンが直面するブランドの摩耗
セブン-イレブンが、つまらない会社になってきた。
「弁当が高い」「おにぎりが小さい」という不満だけを言っているのではない。もっと気になるのは、客がセブンに寄る理由そのものが弱くなっていることだ。上げ底弁当をめぐる騒動が長く尾を引いたのも、容器の形だけが問題だったからではない。「値段の割に中身が寂しくなった」という感覚が先にあり、そこへ「上げ底」という分かりやすい言葉が刺さった。一度、店への疑いができると厄介である。値上げも容器変更も、客は悪い方へ読むようになる。
数字を見ると、セブンが明日にも転落する会社ではないことは分かる。2026年2月期の既存店売上高はセブンが前期比1.2%増、ファミリーマートが3.0%増、ローソンが4.5%増。客数はセブンが0.9%減、ファミマも1.2%減り、ローソンだけ0.8%増えた。1店当たりの日販ではセブンが約69万9000円で、ローソン約59万8000円、ファミマ約58万5000円をなお大きく上回る。
ここは重要である。セブンだけが客を失っているわけではない。ファミマも客数は減っている。しかもセブンには2万店を超える店舗網、物流、商品開発力があり、日販首位という事実も重い。
それでも私は、オワコン化は始まっていると思う。理由は売上高ではない。新しいコンビニの姿を、セブンより先に他社が見せる場面が増えたからだ。ファミマの「コンビニエンスウェア」は2021年3月に全国展開を始めた。緊急時に仕方なく買う下着や靴下だったコンビニ衣料を、「ファミマへ買いに行く商品」に変えようとした企画である。ローソンは2023年から「盛りすぎチャレンジ」を始め、2025年6月には価格据え置きで約50%増量した41商品を投入した。この企画期間中、1店舗当たりの平均来店客数は前年同期比で約5%増えたという。2024年にはAI発注システム「AI.CO」も全店舗へ導入している。
後からでも良いものを取り入れる現実 王者の背中に漂い始めた「追いかける側」の影
セブンも黙っていたわけではない。2026年5月には「感謝盛り」で12品を50%以上増量し、1キロを超える麺商品まで出した。後からでも良いものを取り入れるのは小売業では当然である。問題は、王者だった会社について「またセブンが先にやった」と驚く回数より、「セブンもやるのか」と感じる回数が増えたことだ。
ここで、先発なら何でも偉いという話をするつもりはない。ローソンもファミマも他社を真似する。セブンにも新商品は毎週のように出る。小売業では、失敗した先行策より完成度の高い後発策が勝つこともある。私が気にしているのは個々の勝ち負けではなく、何年か続けて眺めたときの「誰が最初に客の常識を変えたのか」という順番である。首位企業は規模が大きいぶん、実験の失敗も高くつく。それでも安全な答えを選び続ければ、市場を定義する力だけが別の会社へ移っていく。
かつてのセブンには、その力があった。
象徴がセブン銀行である。現セブン銀行は2001年に営業を始めた。当時、コンビニATM自体はすでに存在したが、セブンは自ら銀行をつくり、ATM網を猛烈な速度で広げた。2001年11月に2000台、2002年6月に4000台、2005年4月には1万台を突破している。店の一角に機械を置いたという話ではない。コンビニの便利さそのものを作り替えた。