トランプ支持率が過去最低32%へ下落「中間選挙で負けたら、マーケット・為替・関税はどうなるか」海外機関の検証
トランプ政権の支持率低下に伴い、11月の中間選挙で共和党が敗北する現実味が強まっている。しかし、民主党が議会を握ったとしても、2025年に恒久化されたトランプ減税が直ちに撤回されるわけではなく、大統領が持つ既存の通商・関税権限が消えることもない。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、追加減税の足踏みと関税負担の継続という、中間選挙後に企業が直面する二重のリスクを解説する。
みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」
支持率がロイター調査で過去最低32%を記録 中間選挙直前に突きつけられた厳しい世論
支持率32%。2026年9月21日に公表されたロイター・イプソスの世論調査で、共和党のドナルド・トランプ米大統領は、1期目を含む同調査の最低水準を記録した。生活費への対応を支持する人は17%にとどまる。9月17~20日に全米の成人1277人に聞いた調査で、全体の誤差幅は約3ポイントだ。
11月3日の中間選挙では、下院の全435議席と上院の一部が改選される。大統領を選び直すわけではない。共和党が議会の多数を失っても、トランプ政権は続く。日本の企業や投資家が備えるべきなのは、政権交代ではなく、議会に制約されながら政策を動かす大統領である。
1期目に、その実例がある。共和党は2018年の中間選挙で下院の多数を失った。翌2019年5月、政権は約2000億ドル分の中国製品への追加関税を10%から25%へ引き上げた。民主党が下院を握っていても、関税は上がったのである。
今回の調査では、共和党支持者の間でも大統領支持は、1月の86%から9月の73%へ下がっている。政権に反対してきた人だけでなく、支持基盤の内側でも評価が落ちた。それでも党内の支持は7割を超す。
イラン戦によるガソリン高騰と生活費への不満 インフレが鈍化してもレジの支払額は下がらない
ロイターは、2月に始まったイランとの戦争に伴うガソリンや軽油の値上がりを、生活費への不満の背景として挙げる。金融機関RBCも、物価上昇率が鈍っても家計の不満は消えにくいと指摘した。値上がりが遅くなっても、レジで払う金額が以前に戻るわけではない。
議会への希望にも差が出た。キニピアック大学が9月3~6日に登録有権者970人へ電話で聞いた調査では、下院で多数を占めてほしい政党として民主党を挙げた人は49%、共和党は38%だった。全体の誤差幅は3.9ポイント。聞いたのは個々の候補者への投票先ではなく、議会に望む姿だ。
全国調査をそのまま議席数に置き換えることはできない。ロイター・イプソス調査には、投票へ行かない人も含まれる。読み取れるのは、家計を圧迫する生活費への不満と、党内の支持低下が重なっている現状だ。
共和党が下院の多数を失えば、追加の減税や歳出変更に民主党の賛成が要る。2025年の大型税制・歳出法で使った「財政調整」は、一定の予算関連法案を上院の単純過半数で通せる特別な手続きだ。下院での可決は省けない。新たな減税を実現するには、民主党議員に賛成してもらう交渉が必要になる。
法改正がなくても企業の書類作成や説明負担が急増する 「下院多数奪還」が民間取引に及ぼす影響
民主党側は議会調査の準備も進めている。8月8日のロイター報道によると、下院で多数を取り戻した場合、直ちに大統領の弾劾を進めるより、政権周辺の企業や金融機関への調査を重視する構想だ。公聴会で証言を求め、契約や取引の資料を集める。
対象企業の最終リストは未定で、不正が認定された段階でもない。この構想が実行されれば、規制法が変わらなくても企業の仕事は増える。大統領府との間で進めてきた取引について、議会向けに資料をそろえ、経緯を説明することになる。
上院も失えば、人事に及ぶ。大統領が指名する政府高官や連邦裁判官などの承認権は上院にある。政権の要職に誰を据えるか、裁判官に誰を送り込むか。そのたびに、民主党が多数を持つ上院から同意を得なければならない。
大統領の罷免には、さらに高い壁がある。弾劾は、大統領らの重大な非行について議会が責任を問う手続きである。下院が訴追しても、罷免には上院で出席議員の3分の2の賛成が要る。民主党が両院で過半数を取っても、それだけではトランプを退場させられない。民主党が増税や規制の法案を可決しても、トランプには拒否権がある。それを覆すには上下両院でそれぞれ3分の2の賛成が必要だ。民主党が握るのは、まず共和党の追加政策を止める力だ。自分たちの法案を成立させるには、大統領の壁が残る。