もう悩みに振り回されない! 精神科医が教える「相棒」としてのAI徹底活用法
仕事の悩みを、上司でも友人でもなくAIに打ち明ける。そんなビジネスパーソンが増えている。
会社から配られたAIを、仕事だけでなく心の相談相手として使う人も出てきた。ちょっとした愚痴の聞き役にしている人も少なくないだろう。一方で、AIとの対話をめぐっては依存のリスクも指摘され始めている。
悩みを打ち明ける相手として、AIとどう向き合えばいいのか。登録者70万人超のYouTubeチャンネルを持つ精神科医で、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏に聞いた。連載全3回の最終回。

AIで優柔不断にならないために、まずすべきこと
仕事でも私生活でも、私たちは日々、大小さまざまな選択を迫られています。迷ったときに判断を支えてくれるのは、自分の価値観です。
価値観がまったくなければ、自分が何をしたいのか分からなくなってしまいます。目的意識が持てなければモチベーションは湧かず、忙しい仕事をこなし続けることもできません。
なぜこの仕事をするのか。その理由を自分の中で説明できないと、困難にぶつかったときにやりきれなくなります。残業もできず、つい安易なほうに流れてしまうのです。
前回お伝えしたように、転職や結婚といった答えの出ない問題では、最後は自分の価値観で決めるしかありません。では、その価値観はどうすれば知ることができるのでしょうか。手がかりになるのは、自分の歩みを振り返る自分史です。
決断力を高める「過去の掘り起こし」
自分史というと、就職活動やキャリアの節目に作るものという印象があるかもしれません。ただ、本当に役立つのは、迷いの多い決断を迫られたときです。
自分史を振り返ると、これまで自分がどんな場面で何を選び、どう行動してきたのかが見えてきます。その中に一貫して流れている判断軸を知っておくと、迷ったときの道しるべになります。
判断軸は、大きな決断だけに表れるものではありません。就職先を選んだときに何を決め手にしたのか、異動や昇進の打診にどう応じたのか、忙しいときに仕事と家庭のどちらを優先してきたのか。そうした選択を一つひとつ並べてみると、自分が何を大事にしてきたのかが浮かび上がってきます。
この判断軸が分かっていると、答えの出ない問題でも納得して結論を出しやすくなります。
たとえば転職に迷ったとき、これまで安定よりも新しい環境への挑戦を選んできた人なら、今回も転職するという結論に納得しやすいでしょう。反対に、1つの職場で信頼を積み重ね、それに満足してきた人なら、今は不満があってももう少し続けてみようと決められます。
どちらも過去の自分の選択と重なるので、腹落ちしやすいのです。単純なことですが、「あのときはこう決めたから、今回もこうしよう」と考えられるだけで、迷いはずいぶん小さくなります。
これまでとは逆の道を選ぶ場合も同じです。過去の自分の判断軸を知っていれば、今回はあえて違う決断をするのだと自覚したうえで選べます。何となく流されて決めるのとは、結果を引き受ける覚悟がまるで違ってくるはずです。