「一括投資」と「積立投資」どっちがいいの?それぞれのメリットをシミュレーションを通して解説!

たびたび話題となる「一括投資と積み立て投資どちらが良いのか」問題。
特に「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ)」の利用を考えている人、もしくは利用している人は気になるところですよね。
結論から言うと、一括投資、積み立て投資どちらにもメリットがあります。ここで考えて欲しいのが、「どっちのメリットの方が自分にとってプラスなのか」です。
今回は、一括投資と積み立て投資のそれぞれのメリットと、デメリットをシミュレーションを交えながら解説していきます。
「積み立て頻度は、毎日がいいのか毎月か…それとも一括?」という悩みとはこの記事でおさらばしましょう!
【この記事でわかること】
- 一括投資・積み立て投資それぞれのメリット・デメリット
- 一括投資と積み立て投資の効果の違い
- 自分が一括か積み立てのどちらが向いているのか
目次
一括投資のメリットは?
まずは、一括投資のメリットからみていきましょう。一括投資の主なメリットとしては、
- 上昇相場に強い
- 複利効果が大きい
- 短期的な利益を狙うことも可能
以上3つが挙げられます。
上昇相場に強い
1つ目のメリットは、長期的な上昇相場に強い点です。
例として、米国の有名な株式指数「S&P500」を例に見ていきましょう。
【S&P500 直近5年チャート】

このような短期的な下落はあれど、長期的には右肩上がりをしている投資対象であれば、一括投資をした方がリターンが高い傾向にあります。
また、一括投資では「高値掴みのリスクがある」と言われますが、長期的に成長していく投資対象へ投資をする場合には、遅かれ早かれ高値は更新されていくことになります。
つまり、一括投資では「短期的に見た場合」高値掴みのリスクは伴いますが、10年、20年という長いスパンで考えた場合には、高値づかみはそれほど大きな懸念材料ではないと考えられます。
複利効果が大きい
2つ目は複利効果が大きい点です。
当然の話ですが、複利効果は「投資額が大きく」「投資期間が長い」方が大きくなります。
ここでは、複利効果を雪だるまに置き換えて考えてみます。
- 最初に転がす雪玉の大きさ=投資額
- 雪玉を転がす時間=投資期間
- 転がして増えた雪の量=複利
と考えれば、最初の投資金額が大きい方が雪だるまが大きくなるスピードも早く、転がす時間が長い方が増える雪の量は多くなりますよね。
そのため、早い段階で一括投資を行なった方が「運用期間」と「運用金額」が大きくなるため、積み立てでコツコツ運用金額を増やすより高い複利効果が望めます。
ただ、投資においては雪だるま式に資金が増えるだけでなく、減ることもあるので注意が必要です。
短期的な利益を狙うことも可能
3つ目は、短期的な利益を狙うことができる点です。
積み立て投資と比べて、一括投資の場合は、投資をした時点で大きな金額を運用していくことになるため、短期でも利益を狙うことができます。
例えば、100万円を10回に分けて毎月投資した場合、運用している元本が100万円になるのは10ヶ月後です。
一方で、一括投資なら投資をしたタイミングで運用元本が100万円になります。
すると、100万円で運用してる期間が一括投資の方が長くなるため、その期間に投資対象が値上がりした場合には、一括投資の方が高リターンになります。
投資方法 | 10ヶ月後の元利 | 利益 |
---|---|---|
100万円一括投資の場合 | 110万円 | 10万円 |
100万円を10ヶ月に分けて投資した場合 |
105万5000円 | 5万5,000円 |
ただし、期待できるリターンが大きくなるということはその分、リスクも高くなるということです。
そのため、短期投資での一括投資には長期投資とは異なり、相応のリスクがついて回ることは覚えておきましょう。
一括投資のデメリット
ここまで、一括投資のメリットを紹介してきました。
「一括投資の方がリターンが大きくなりやすいなら一括投資にしよう!」と思った方は要注意です。
メリットがあることには、必ずデメリットも存在します。ここからは一括投資のデメリットについて解説していきます。
「自分はこのデメリットを許容できるかどうか」を考えながら読み進めてみてください。
短期で見ると高値掴みのリスクあり
一つ目のデメリットは、短期的には高値掴みのリスクがあるという点です。
一括投資のメリットでは、「長期運用なら」一括投資の方が期待リターンも複利効果も大きくなるという解説をしました。
ただし、短期的な観点では注意が必要です。なぜなら、投資には短期的な株価の急落はつきものだからです。
下記のチャートは引き続きS&P500の直近10年チャートになりますが、赤い枠線の部分では指数は下落しています。

例えば、自分が100万円一括投資をした直後に10%の急落を経験したとしましょう。すると、この一回の下落で10万円の含み損を抱えることになります。
いくら頭の中では、「長期運用だから問題ない」とわかっていても、少なからず心理的負荷がかかってしまいます。
ですから、「短期的な含み損が大きくなるのは避けたい」という方は一括ではなく、積み立て投資を選んだ方が良いかもしれません。
損益の変動が大きい
二つ目のデメリットは、「損益の変動が大きい」という点です。
一括投資の場合は、投資先の成績が好調なうちは、利益も大きくなりますが、調整相場(下落相場)では、損失も大きくなってしまいます。
つまり、短期的なリターンは、プラスにもマイナスにも大きく振れやすいという性質があるということです。
そのため、「損益が激しく変動するのが嫌」という場合は、積み立て投資に切り替えたり、リスクヘッジとして債券などを投資対象に組み込むなど工夫をしてみるのも一つの手ですね。
一括投資に向いている人は?
それでは、一括投資のメリット・デメリットを踏まえて、どんな人におすすめなのかをまとめておきます。
一括投資に向いている人
- 長期投資でリターンをできるだけ大きくしたい人
- 短期的な含み損を抱えても運用を続けられる人
- 手元資金に余裕のある人
逆に、含み損の額をみたら焦って売ってしまいそう、値動きが緩やかでコツコツ利益を上げたい人は一括投資は不向きかもしれません。
積み立て投資のメリットは?
続いては、お馴染みの積み立て投資のメリットについてみていきましょう。
積み立て投資の主なメリットは、以下の3点が挙げられます。
- 少額資金から始められる
- 売買タイミングに悩まない
- 損益の変動が緩やか
少額から始められる
一つ目のメリットは、一括投資のようにまとまった資金がなくとも「少額」から始められる点です。
まとまった資金が貯まったら…と考えていたら、結局投資を始めずじまいというケースも少なくないと思います。
その点、積み立て投資であれば毎月の余裕資金を少額から投資することが可能です。こうした投資金額のハードルが低いことは積み立て投資のメリットです。
近年、証券会社も積み立て投資に適したサービスを提供しており、投資信託の積み立てであれば100円程度から始められる証券会社もありますから、積み立て投資を始めやすい環境は整っているといえますね。
売買タイミングに悩まない
二つ目のメリットは「売買タイミングに悩まない」点です。
積み立て投資の場合は、いつ(毎月や毎週など)、何円投資をするか決めておいて、その通りに投資を続けていくことになります。
そうすると、投資先の価格が高いときには買い付ける量が少なく、逆に安い時は多く買い付けることができます。

そうすると、買い付けた価格が平均化されるので、高値掴みのリスクを減らしながら投資ができるという仕組みです。
これを「ドルコスト平均法」と言います。
損益の変動が緩やか
これは二つ目のメリットで登場した「ドルコスト平均法」が関係してきます。
ドルコスト平均法の効果で買い付け価格が平均化されるため、損益の振れ幅もそれに伴って小さくなるのです。
例を挙げて説明すると、仮に以下のような値動きで買い付けを行なってきたとします。
投資先の価格(1万口) | 10000円 | 9500円 | 11000円 | 10500円 | 12000円 | 12500円 |
---|---|---|---|---|---|---|
積立金額 | 20000円 | 20000円 | 20000円 | 20000円 | 20000円 | 20000円 |
合計保有口数 | 2万口 | 4万1000口 | 5万9100口 | 7万8100口 | 9万4700口 | 11万700口 |
この場合、1万口あたりの平均取得価格は「10840円」となります。そして12500円から11000まで価格が下がったとしても、「(11000円−10840円)×12=1920円」の利益となりますね。
もちろん、9500円の時に一括投資をしていればより大きな利益が生まれますが、もし12000円の時に一括投資をして、価格が11000円まで下がってしまったら、「(11000円-12000円)×12=12000円」の損失となってしまいます。
このように、積み立て投資は、大きな利益を狙うには不向きですが、価格の下落などで損失を小さくするには有効といえそうです。
何より、投資を始めたてのときに「含み損」が膨らんでいくのを見るのは、精神的に辛い方が多いと思います。
投資を始めるときは積み立て投資で損益の変動を小さくしながら運用することをおすすめします。
積み立て投資のデメリット
続いては、積み立て投資のデメリットについて紹介していきます。
一括投資のメリット・デメリットを踏まえながら、どちらの投資手法が自分に向いているか考えながら知識をつけていきましょう。
短期間で大きな利益を狙うには不向き
一つ目のデメリットは、短期間で大きな利益を狙うのに不向きな点です。
投資のリターンは、一括投資のメリットでも説明しましたが、「運用資金」と「運用期間」に左右されます。
その点、積み立て投資は、徐々に運用資金が増えていく投資手法のため、一括投資と比べるとリターンが小さくなりやすい傾向にあります。
ただ、これは「高値掴みのリスクを抑える」というメリットの代償とも言えるので、リターンを取るか、安定運用を取るかはその人の投資方針によります。
そのため、積み立て投資は短期的な利益が得られないからダメというわけでなないので覚えておきましょう。
長期投資だと一括投資よりパフォーマンスが劣る可能性もある
二つ目のデメリットは、長期運用においては積み立て投資のパフォーマンスは、一括投資のパフォーマンスに劣る可能性がある点です。
積み立て投資では徐々に運用資金が増えていくため、一括投資に比べるとどうしても複利効果が弱まってしまいます。
ただ、複利効果が弱まるといっても「銀行預金」と比較すれば、複利効果は依然として高いといえます。
一括投資ほどリターンを求めず、安定運用を目指す場合には、このデメリットに関してもそこまで過敏に反応する必要はないといえます。
積み立て投資に向いている人は?
積み立て投資のメリット・デメリットを踏まえた上で、積み立て投資に向いている人はどんな人かをまとめておきます。
積み立て投資がおすすめな人
- 少額からコツコツ投資をしたい人
- 比較的安定して運用をしていきたい人
- 短期的な値下がりリスクを下げたい人
- 投資に時間を割きたくない人
積み立て投資は、損益の値動きが比較的緩やかな傾向にあります。
そのため、積み立ての頻度と金額さえ決めてしまえば、常に相場を意識する必要はなく、自分のペースで投資経験を養っていけるという点が特徴です。
投資のイメージを掴むために最初はあまりリスクを取りたくない人や、投資成績に対する精神的負荷を減らしたい人、投資に手間をかけたくない人には特におすすめの投資手法といえますね。
一括投資と積み立て投資の効果を検証してみた!
最後に、長期投資の投資先として有名な「日経平均225」、「S&P500 」、「全世界株式(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)」に一括投資or積み立て投資していたら、評価額はいくらになるのか検証していきます。
投資条件は以下で計算しました。
【一括投資の投資条件】
- 投資資金:300万円
- 20年前の2001年に「300万円」一括投資
- 各インデックスに連動する投資信託へ投資
【積み立て投資】
- 投資資金:300万円
- 2001年から2020年まで毎月「13500円」積み立て投資
- 各インデックスに連動する投資信託へ投資
20年平均リターン | 一括投資の評価額 | 一括投資の損益(円) | 積み立て投資の評価額 | 一括投資の損益(円) | |
日経平均225 | +4.1% | 680万1987円 | +380万1987円 | 500万7494円 | +200万7494円 |
S&P500 | +7.7% | 1392万5094円 | +1192万5094円 | 766万1754円 | +466万1754円 |
全世界株式(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス) |
+6.9% | 1187万7668円 | +887万7668円 | 694万7740円 | +394万7740円 |
この結果を見て多くの人が「あの時一括投資をしておけば…」と思ったのではないでしょうか。
中でも、S&P500に一括投資していた場合のリターンが「1000万円越え」となっています。
ただし、このシミュレーションは「20年の平均リターン」から算出したという点に注意しましょう。
平均リターンということは、この数値を大きく上回った年もあれば、下回った年もあるということです。
参考までに、過去20年間におけるS&P500の年間リターンの推移を見てみましょう。
2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年 | 2005年 |
---|---|---|---|---|
-13.04% | -23.37% | 26.38% | 8.99% | 3.00% |
2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 |
13.62% | 3.53% | -38.49% | 23.45% | 12.78% |
2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 |
0.00% | 13.41% | 29.60% | 11.39% | -0.73% |
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
9.54% | 19.42% | -6.24% | 28.88% | 16.26% |
この表からもわかる通り、投資したお金がシミュレーションサイトのように右肩あがりで増えていくわけではありません。
今回の例のような「インデックス投資」では、株式指数へ間接的に投資をするわけですから、当然損益も指数に合わせて上下します。
大切なのは、こうした「客観的なデータ」をもとに、自分はこの価格の上下に耐えられるのか、もしくは耐え難いから債券にも分散投資したほうが良いのかなど、「自分にとって」最善の一手を見つけることです。
まとめ
今回は、一括投資と積み立て投資の特徴を解説してきました。
記事でも度々伝えてきましたが、どちらかが絶対の正解というわけではありません。
自分の投資目標や、リスクの許容度などを踏まえて、どんな投資手法で運用をしていくか考えていただければ幸いです。