NISAはデメリットしかないと言われる理由は?やめたほうがいい人・やったほうがいい人の特徴を解説 みんかぶ編集室 2023.11.27 新NISA NISA制度は、一定期間「非課税」で投資できることもあり、資産形成の第一歩として紹介されることの多い制度です。 しかし「投資」が身近ではない人、初めて投資を考えている人からすれば「本当にNISAってやったほうがいいのかな」と半信半疑の人も少なくないはず。 特に「デメリットしかない」という噂もあり、不安に感じている人も多いのではないでしょうか?今回は、NISAはデメリットしかないと言われる理由や、やめたほうがいい人の特徴など「NISA制度のデメリット・否定的な意見の考察」を中心に解説します。 目次NISAはデメリットしかないと言われる5つの理由NISA制度を使うのはやめたほうがいい・投資目的に合わない人の特徴NISAにはメリットもある!資産形成に役立つNISAのメリットとは?NISAで失敗しないために心がけたい運用上の注意点2024年から始まる新NISAでは今までのデメリットが軽減されるまとめ NISAはデメリットしかないと言われる5つの理由 <2023年までのNISA制度の概要> 一般NISA つみたてNISA 制度開始 2014年1月から 2018年1月から 非課税保有期間 5年間 20年間 年間非課税枠 120万円 40万円 投資可能商品 上場株式・ETF・公募株式投信・REIT 等 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 ※金融庁への届出が必要 買付方法 通常の買い付け・積立投資 積立投資(累積投資契約に基づく買付け)のみ 払出し制限 なし なし 備考 一般とつみたてNISAは年単位で選択制 2023年1月以降は18歳以上が利用可能 NISAはデメリットしかないと言われてしまう主な理由は、以下の5点です。 損益通算と繰越控除ができない 非課税期間終了時に含み損を抱えていると非課税の恩恵が得られない 非課税投資枠の持ち越し・再利用ができない つみたてNISAか一般NISAのどちらかしか利用できない 投資上限額が少ない(つみたてNISA40万円/年・一般NISA120万円/年) 特に、すでに投資をがっつりしている「中・上級投資家」からすると、あまりメリットを感じないことから生じた意見が多くあります。 逆にいえば、資産形成を始める「投資初心者」にとっては大きなデメリットにならないこともあるということです。 それぞれの理由について、自分はそのデメリットを許容できそうか?を考えながら読み進めていきましょう。 損益通算と繰越控除ができない NISA口座では、利益が非課税になる代わりに「損益通算」と「繰越控除」ができなくなっています。 【損益通算とは?】 損益通算とは、対象年の「利益」と「損失」を相殺させることで、課税される利益額を減らすことを指します。損益通算を戦略的に行うことで、課税額を最小限に抑えることが可能になります。 【繰越控除とは?】 繰越控除とは、控除(相殺)しきれない損失分を翌年以降に持ち越して、該当する年の利益から控除(相殺)させることができる制度のことです。持ち越しは最大「3年間」と定められています。 この損益通算と損失繰越ができないため、NISA制度は「損失」に対して弱いと言わざるをえません。 特に、すでに株式投資をしている個人投資家からすると「損失に対するカバーがしづらいからな」というマイナスイメージがあるのも頷けます。 既存の個人投資家からすると、すこし使いづらい印象があるんですね。 非課税期間終了時に含み損を抱えていると非課税の恩恵が得られない NISA最大のメリットでもある「利益が非課税になる点」ですが、効果を発揮できるのは「売却時に利益が出ている場合」に限られます。 そのため、非課税期間が終わる分を売却する際に「損失を抱えている状況」だと、せっかくのNISA制度の恩恵が得られなくなってしまいます。 また、前述の通り、NISAでは損益通算と損失繰越ができないため「損失」として確定せざるをえません。 対処法としては、非課税期間を終えた分を「一般口座/特定口座」に移管して、利益分が確保できるまで「長期保有を続ける」のがおすすめです。(ただし、塩漬けになって損失が大きくなっている銘柄の場合は損失を確定させて他の投資先に投資することをおすすめします。) 非課税投資枠の持ち越し・再利用ができない NISAでは、使わなかった投資枠の翌年持ち越しや、該当年内で売却分の再利用ができません。 例1:つみたてNISAで30万円投資した場合→残りの10万円分は翌年の40万円分に加算されない 例2:一般NISAで100万円投資をして、50万円分を年内に売却した場合→50万円分は復活せずのこりの20万円しか非課税投資ができない 非課税枠が「使い切り」のため、柔軟に売却したり、資産配分を調整することが少々難しくなっている点もNISAのデメリットといえます。 非課税枠が限られている分、投資先選びは慎重に行う必要がありますね。 つみたてNISAか一般NISAのどちらかしか利用できない NISAには「つみたてNISA」と「一般NISA」の2種類が用意されていますが、どちらか「ひとつ」しか利用することができません。 つまり、つみたてNISAで数10年スパンの長期運用をするか、一般NISAで5年〜の中期運用をするかのいずれかを選択する必要があるということ。 積立投資も個別銘柄投資も「非課税でしたい」と思っていた人にとっては、デメリットに感じてしまうのも無理ありません。 しかし、2024年から始まる「新NISA」では、つみたてNISAと一般NISAが一体化しているため、積立も個別株も「非課税運用」できるようになります。 関連記事:新NISA制度はいつから始まる?年間上限投資額や非課税期間など変更点をわかりやすく解説 非課税投資上限額が少ない(つみたてNISA40万円/年・一般NISA120万円/年) つみたてNISAと一般NISAの投資上限額は、それぞれ40万円と120万円です。この投資上限額が少ないことが、以下のデメリットにつながります。 【短期間で大きな資産を増やせない】 投資上限額が少ないため、短期間で大きな資産を増やすことは難しいと言えます。 例えば、つみたてNISAで年間40万円を積み立てた場合、20年間で800万円になります。これは、複利効果によって資産を増やすことができますが、それでも短期間でまとまった金額を準備することは難しいでしょう。 【リスクの高い投資先を活用しにくい】 投資上限額が少ないため、リスクの高い投資先を活用しにくいというデメリットもあります。 例えば、個別株式などの比較的リスクの高い投資先は、短期間で大きく値上がりする可能性もありますが、逆に大きく値下がりする可能性もあります。 そのため、リスクを抑えながら投資上限額をすべて活用したいという人は、リスクコントロールが非常に重要になります。 【投資戦略の自由度が低くなる】 投資上限額が少ないため、投資の幅が狭まるというデメリットもあります。 例えば、つみたてNISAでは、金融庁の認可を得た「投資信託と一部ETF」の購入のみが可能です。 そのため、個別株式や債券、色々なETFなどに投資したいという人は、投資戦略の幅が狭まってしまいます。 NISA制度を使うのはやめたほうがいい・投資目的に合わない人の特徴 ここまで紹介した「デメリット」をもとに、NISAを使うのはやめたほうがいい(別の資産形成方法がおすすめ)の人の特徴をまとめました。 短期間で大きく資産を増やしたいと考えている人 頻繁にトレード(売買)を繰り返したい人 元本割れリスクを絶対に負いたくない人 投資に回す余裕資金が十分にない人 投資先の豊富さを重視する人 それぞれの特徴と、代替案としてどんな投資先がおすすめなのかを簡単に説明します。 短期間で大きく資産を増やしたいと考えている人 NISA制度は、長期かつ安定した資産形成を目的に作られた制度のため、短期間で資産を何倍にもしたい、数十万円、数百万円の利益を狙いたいと考えている人には不向きです。 もし、短期間でリスクをとり大きな利益を狙いたいのであれば、以下に代表されるような「リスク(価格の変動幅)」が大きい投資先を選ぶことをおすすめします。 個別株投資(日本株・米国株) 信用取引 FX(外国為替証拠金取引) CFD ただし、短期で大きな利益を狙い人のなかでも「資産の一部はリスクを抑えて運用したい」と考えている人は、株式投資+NISAやFX+NISAという組み合わせで投資をしてみるのも賢い選択といえます。 頻繁にトレード(売買)を繰り返したい人 NISA制度では、非課税投資上限が定められているため、頻繁にトレードをするとすぐに非課税枠を使い切ってしまいます。 ですから、デイトレード〜スイングトレード(数日から数週間)のような、短い期間で売買を繰り返す投資手法とは「相性が悪い」といえます。 デイトレ・スイングトレードをメインに考えている人も前述の投資方法がおすすめです。 個別株投資(日本株・米国株) 信用取引 FX(外国為替証拠金取引) CFD 元本割れリスクを絶対に負いたくない人 NISAだけでなく、投資全般に言えることですが「元本割れリスク」がどうしても嫌な人は、利用しないほうがよいと考えます。 もちろん、一時的に損失を抱えても「長期でプラスになる」と考え、運用を続けられるのであれば、NISA制度は非常におすすめできます。 しかし、元本割れに対して強い嫌悪を抱いている人にとって「損失を抱えている状態」は精神的にもつらいはず。 ですから、元本割れがどうしても怖い場合には、投資先の中でもリスクの低い「債券」を満期まで持つ、資産運用分をカバーできるよう転職などで「収入」を増やす方法をとるとよいでしょう。 投資に回す余裕資金が十分にない人 こちらもNISAに限った話ではありませんが、余裕資金(毎月の自由に使える余剰資金のこと)がない場合、無理やり投資資金を捻出することはおすすめしません。 なぜなら、無理やり捻出したお金で投資をしてしまうと「減ったら嫌だ・失いたくない」という気持ちが必要以上に大きくなり、正常な投資判断がしづらくなってしまうからです。 もし、NISAを始めようとしているものの、投資資金が捻出できない!という場合には、家計の見直しから始めてみましょう。 関連記事:資産形成のはじめ方 – みんかぶ(マガジン) 投資先(商品)の豊富さを重視する人 一般NISAはかなり豊富な投資商品の中から、投資先を選ぶことができます。しかし、つみたてNISAは、金融庁が選定した「約200銘柄」の中から商品を選ぶ必要があります。 そのため、リスクを抑えた長期運用はしやすいものの、いろいろな投資戦略を試したい、投資信託以外の商品にも投資したいと考えている人には不向きといえます。 NISAにはメリットもある!資産形成に役立つNISAのメリットとは? 【NISAのメリット】 一定の投資額・期間まで利益が非課税になる 長期運用が前提になっているためリスクを抑えやすい 一般NISAとつみたてNISAがあるため投資目的や性格に応じて使い分けが可能 少額から投資を始めやすい設計になっている つみたてNISAでは金融庁が選定した銘柄のみが対象になっているため投資先選びが楽 NISAには前述の通り「デメリット」が存在します。しかし、重要なのは一般的なデメリットを知ることだけではありません。 NISAを始めるかどうかを決める際に重要なのは「メリットとデメリットを照らし合わせること」です。 リスクに対する考え方も、資産形成の目的・目標も人によって異なりますからね。 もし、これから紹介するメリットの方がデメリットよりも「大きい」と感じたのであれば、少額からNISA制度を始めることをおすすめします。 資産形成のための手段が増えるのは非常に良いことです。 一定の投資額・期間まで利益が非課税になる 一般NISA つみたてNISA 非課税投資枠(年間) 120万円 40万円 非課税投資枠(総額) 600万円 800万円 非課税期間 5年 20年 NISA制度では、上記の表の通り、一定金額・期間までであれば「利益(売却益・配当金)に税金がかからない」というメリットがあります。 通常の株式投資の場合「20.315%分」が利益に対して課税されてしまうのですが、この課税分が「0」になるのは非常に大きいです。 例:100万円利益が出ている場合 一般口座/特定口座 NISA口座 手元に残る金額 約80万円 100万円満額 この「非課税メリット」は運用額が大きくなればなるほど効果を発揮します。だからこそ、NISA制度は「長期運用」が基本になっているんですね。 長期運用が前提になっているためリスクを抑えやすい NISAは、長期運用が前提になっているため、リスクを抑えやすいと言えます。 NISAの非課税期間は、つみたてNISAが20年間、一般NISAが5年間となっており、長期運用を前提としています。 では、なぜNISA制度はわざわざ「長期運用」を基本としているのでしょうか? その答えは、長期運用を行うことで、短期的な値動きの影響を相殺し、リスクを抑えることができます。また、複利効果によって資産を増やしやすくなるからです。 未来のことは確実ではないため、断定はできませんが、投資における「リスク(価格の変動幅)」は長期運用になればなるほど、収束していくというデータがあります。 「長期投資のススメ | みずほ証券」より引用 つまり、NISA制度は「投資の大失敗」をさせないように、長期運用を前提にしているということです。 なるべく失敗しないような設計になっているのは嬉しいポイントです。 一般NISAとつみたてNISAがあるため投資目的や性格に応じて使い分けが可能 現行のNISA制度では、一般NISAとつみたてNISAの2種類が用意されているため、投資目的や性格に合っているものを選ぶことが可能。 一般NISA つみたてNISA おすすめの人 ある程度の利益を狙いたい 5年〜10年スパンで投資をしたい 個別株投資にチャレンジしたい 配当金も欲しい 比較的近いライフイベントのお金を用意したい 10年以上の長期運用をしたい 少額からコツコツ始めたい リスクを抑えた投資信託で運用をしたい 数千円程度から始めたい 短期で大きく稼ぐつもりはあまりない 自分に合っている制度を選択できるのはメリットの一つといえますね。 少額から投資を始めやすい設計になっている 一般NISA、つみたてNISA、そして2024年から開始される「新NISA」いずれにしても「100円」から投資を始められるようになっています。(一部金融機関は1,000円に設定されている場合もあります) 一般NISA つみたてNISA 新NISA 最低投資額 100円〜 投資=大金が必要というイメージがあるかもしれませんが、たった100円から始められるとなると、心的なハードルも低くなりますね。 つみたてNISAでは金融庁が選定した銘柄のみが対象になっているため投資先選びが楽 最後はつみたてNISA(新NISAではつみたて投資枠)に限った話になりますが、投資可能商品があらかじめ金融庁によって選定済みなのも嬉しいポイントのひとつ。 選定基準は「長期分散投資に適していること」「運用コスト(信託報酬)が高すぎないこと」「償還期限がないこと」などです。 ひとことでいえば「NISA制度と相性の良い投資信託と一部ETFに厳選しているよ」ということ。 どの商品を選べばいいかわからない!という資産形成初心者にとって嬉しいポイントです。 以上がNISA制度の主なメリットです。もし、メリットの方があると感じた方は次の「運用上の注意点」を理解しておけば不安を最小限にした状態でNISA運用ができますよ。 NISAで失敗しないために心がけたい運用上の注意点 NISAは、投資で得た利益が非課税となるため、投資初心者でも始めやすい制度です。しかし、うまく運用しなければ、損失を出す可能性もあります。 ここでは、NISAで失敗しないために心がけたい運用上の注意点を3つご紹介します。 短期ではなく長期で運用する|一時的な損失ですぐに売らない・やめないのがポイント 投資資金は「余裕資金」から捻出する。生活費を切り詰めるのはおすすめしない 投資先の「分散」を意識する 短期ではなく長期で運用する|一時的な損失ですぐに売らない・やめないのがポイント NISAは、長期運用を前提とした制度です。短期的に値動きに一喜一憂せず、長期的に運用することで、リスクを抑えながら、資産を増やすことができます。 一時的な損失ですぐに売ってしまうと、せっかく積み立ててきた資産が目減りしてしまいます。 あくまで、NISA制度は「長期でじっくりと資産を増やす」という意識を持つことが重要です。 運用を始めた瞬間は、一時的な損益に一喜一憂してしまうこともあります。 ただ、将来「あのとき積立を続けておけばよかった」と後悔しないためにも、ある程度の期間(数年単位)で運用を続けてみることが重要です。 とはいえ、一般NISAで成長性が見込めない銘柄に投資してしまったと気づいた場合には損切りする勇気も必要です。 投資資金は「余裕資金」から捻出する。生活費を切り詰めるのはおすすめしない NISAで運用する資金は、生活費や将来の支出に必要な資金を除いた「余裕資金」から捻出しましょう。 生活費を切り詰めてまで投資をすると、生活が苦しくなり、投資を継続するのが難しくなります。 また、将来の支出に必要な資金を投資に回してしまうと、万が一のときに困ってしまう可能性があります。 投資先の「分散」を意識する 投資先を分散させることで、リスクを抑えることができます。例えば、株式や債券など、複数の投資先に分散投資することで、特定の投資先が下落しても、全体の損失を抑えることができます。 また、投資信託を利用することも、分散投資を簡単に行う方法です。投資信託は、複数の株式や債券などに投資を行うため、個別銘柄に投資するよりもリスクを抑えることができます。 NISAは、うまく運用すれば、資産形成に役立つ制度です。しかし、上記の注意点を押さえて、無理のない範囲で運用するようにしましょう。 2024年から始まる新NISAでは今までのデメリットが軽減される 今回は現行のNISA制度について解説しましたが、2024年からはパワーアップした新NISAが利用できるようになります。 今回紹介したデメリットを払拭できるような以下のメリットが追加されているため、より多くの個人投資家が利用しやすい制度になることが期待されます。 非課税期間が恒久化される(ずっと非課税運用が可能) 売却した分の非課税枠は復活する 非課税投資上限額も大幅アップ! つみたて(つみたてNISAの代わり)も成長投資(一般NISAの代わり)も併用可能に! 新NISAの概要、変更点に関しては以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事:新NISA制度はいつから始まる?年間上限投資額や非課税期間など変更点をわかりやすく解説 まとめ 今回は、NISAに関する否定的な意見に対する解説・考察を行いました。NISA制度は「資産形成において強い味方になる」ことは事実ですが、向き不向きがあるのもまた事実。 この記事を通して、自分はNISAをやったほうがよいのか、他の資産形成方法のほうがよいのかじっくり考えたうえで、行動にうつしてみましょう。 預金以外の「お金を増やす方法」を知ることは、今後の資産形成できっと役に立ちますからね。 この記事はいかがでしたか?感想を一言!