フグの産地が九州から北海道へ。離島の女性社長が息子に見せたい”次の海”
水温の上昇で、これまで獲れていた魚が獲れなくなる。株式会社ふく成の取締役・平尾有希氏は、祖父が半世紀以上前に語っていた予測が現実になった海と向き合っている。経営判断の軸となるパーパス、女性目線の商品開発、そして経営と子育てを両立させる一日の使い方を聞いた。全4回の最終回。
みんかぶマガジン連載「バリキャリ女性社長のワークライフ・ルール」
震災も赤潮も乗り越えた、決断を支えた「会社の存在意義」
地震、コロナ、赤潮。判断を迫られる場面が続いてきた中で、平尾氏が拠り所にしてきたものがある。パーパス、つまり会社の存在意義を経営の中心に据える考え方だ。
「一番大事にしているのはパーパスです。存在意義やミッションという道しるべの部分は、絶対にぶれないようにしています。私たちのパーパスは愛。愛で育み、愛で育てるという言葉を掲げています。ミッションは、子どもたちの未来に食をつなぐこと。今じゃないんですよね。将来、子どもや孫が困らないように、私たちは美味しいものを残す。持続可能な水産業を残していく。そこの軸がぶれない経営をずっとやっています」
この方針は、子どもを持ったことで輪郭がはっきりしたという。
「公私混同してはいけないとは思うのですが、将来的なタンパク質不足は世界で言われていることです。子育てをしているからこそ、世界中の子どものことも、自分の子どものことも考えるようになりました。会社の方針もそういう形に変わりましたし、子どもの健康を考えた食事を作るようにもなった。子どもがいることで仕事にプラスになったことは、とてもいっぱいあります。特に食は衣食住の中でも一番大事なところなので、考え方はごろっと変わりましたね」
男社会の水産業で、女性だから活かせた武器
商品開発の現場でも、女性という立場を強みに転換している。
「役立ったのは、女性や子育て中のスタッフを集めたことです。子どもの魚離れが進んでいるので、子どもに魚を食べさせるにはどんなメニューがいいのかを一緒に開発しました」
男性中心の業界では拾いにくい、家庭の食卓の実感がそのまま商品設計に入る。
「そういう柔軟性を持てるのは、女性のほうが多いのかなと思います。女性だからこそできる経営判断や進め方、女性ならではの目線というものがあるので、そこは強みだと思っています。今までのセオリーは、これから先は成り立たなくなるものもあります。だからこそ女性の強みを生かせるところがあるんです」
小娘に何ができる、と言われた20代から20年。かつて彼女の前に立ちはだかった壁は、いまや他社が持ち得ない武器に変わった。